その10年余り後、K君が家を建てて間もなく、K君の家の近くに有名な串カツ屋の支店が出来た。ある日、K君が工場に行っている留守にHさんが男の人と二人でK君の店を訪れた。K君の奥さんが応対した。家に戻りK君は奥さんに詳しく様子を聞いた。K君の奥さんが言った「大丈夫よ、おまけしたから、貴方に恥をかかせるような事はしていないから」と。「その男の人って、彼氏なのかね」とK君。「同僚だと言っていたけれど・・・」と奥さん。「何でもその男の人がB駅に住んでいて隣のA駅に美味しい串カツ屋が出来たと言うので、Hさんと食べに来たと言っていたよ」と奥さんが言った。「二人だけで串カツ食べるくらいだから、彼氏じゃないの」とK君。「そうかもね」と奥さん。
そう言えばHさんが私に最初に言った言葉は「S君の従姉妹って、貴方?」って、ちょっと上から目線で言われたわ。「彼女、体育会系だから・・・君のこと年下に見たのだろう」とK君。「そうか、若く、年下に見て貰えて、喜ばなくちゃね、あんたより年上だという事は秘密ね」と奥さん。「Hさんも結婚かー」とK君も昔のデートの時の事を思い出しながら感慨に耽った。しかしHさんから、その知らせは無かった。
その後30年、毎年、年賀状の遣り取りは続いた。これからもどちらかが終わるまで続く事になるだろう。K君の記憶の中には28歳の着物姿の彼女が住んでいる。今年の年賀状には「故郷は温かく、ありがたく、思った以上に快適な日々を過ごしています」と書いてあった。
終わり
【この物語はフィクションで有って登場人物等は実在の人物となんら関わりが無い事を申し添えます。】
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