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作品名:K君の結婚 作者:カズロン

第1回   Sコウイチ君の死
Kちゃん「電話」と仕事中のK君は母親に呼ばれた。「もしもし」とK君、「Oだけど」「O君?」「忍野の」「ああ」とK君。「宗教の勧誘かな」とK君は一瞬思った。「実はSコウイチが死んだんだよ」とO君、そして「彼の手紙を調べていたら君と年賀状のやり取りをしているのが分かったので、電話したんだ」と言った。「今夜6時から通夜で、明日11時から葬儀なんだけれど」とO君。

Sコウイチ君達とは3年生の時、山梨県の忍野村と言うところで行われた社会学科の実習授業で出会った。大学側がどんな方針でグループ分けをしたのかは分からないが、K君は唯一人、ブラスバンドのグループの中に入れられてしまった。一週間ほどの実習中、Sコウイチ君はK君が孤立しないように何かと声を掛けてくれた。良い人だった。一週間寝食を共にし、かなり親しくなった。東京に戻ったらまた集まって飲もうと約束したのだが、その約束は果たせないまま、惰性で年賀状のやり取りが続いていた。

「社会人になって色々忙しいだろうから、無理しなくても良いけど、来られたら、来てくれるかな?」とO君。こんな時、「あまり付き合いは無いから」と言って断われる人間は何人いるだろうか・・・「葬儀には出られないけど、お通夜には伺わせて貰います」とK君は言った。25歳の若さで逝った彼とは、ほんの一瞬の出会いだったが、その若さが痛ましかった。

Sコウイチ君の家は広い庭のある50坪ほどの平屋の立派な家だった。O君が「よく来てくれた」と言って迎えてくれた。焼香が始まるまでO君と話した。「何で死んだの?」とK君は聞いた。「顎の骨に癌が出来て何回か手術をしたけど駄目だった」とO君。「それじゃあトランペットは吹けなくなってしまったんだ、可哀想だったね」とK君は言った。「そう」とO君は答えた。Sコウイチ君は大学のブラスバンドでトランペットを担当していた。考えてみると自分はトランペットを吹く人と縁があるなとK君は思った。

焼香が済んで、「食事(通夜ぶるまい)を食べていってくれ」と言われ、O君に奥の部屋に案内された。途中の小部屋から泣き声が聞こえた。3,4人の若い女性達が泣いている女性を慰めていた。その泣いている女性を見てK君は吃驚した。「あの人、心理学科のMさんじゃない?」とK君が言うと、O君は「そう、コウイチは彼女と婚約していたんだよ、彼女知っているの?」と言った。「同じ授業取っていたから」とK君は答えた。「あの二人はSヶ丘の同級生だったんだ」とO君。


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