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作品名:ノモンハン事件(父の行った戦場) 作者:カズロン

第4回   94式速射砲
父は射撃に適性が在ったかのか対戦車速射砲の砲手に選ばれたそうです。父が速射砲の砲手に選ばれたのが何時のことか聞き漏らしたのですが、訓練期間も有りますからおそらく初年兵の時からではなかったかと思います。この砲の口径が37ミリで当時の最新兵器だったと父が言ったのを覚えています。この文章を書くに当たり日本軍の兵器についてインターネットを使い調べてみました。94式速射砲と言うのが昭和11年(9年説もある)に正式制定されたと有りますのでこの砲のことだと思います。

インターネットで調べるとひとつの事柄に無数の情報が集まり何が真実なのか解らない事が有ります。この速射砲についても良い評価から悪い評価まで数多く有りました。インターネットで知りえたことで興味深いことは、父は歩兵の中にいてその中での砲の係りだったのかと思ったのですが、一つの連隊(2000名位)の中に速射砲中隊というのが有って、その中隊にはこの砲が4門(定数)配備されていて1門に付き11名の兵が配置されていたと言う事です。だから父は召集されて速射砲中隊に配属されたと言うことなのだと思います。ただ、父の部隊は速射砲が3門だったと言っていました。だから父の部隊では砲が定数に達していなかったのかも知れません。

父からはこの砲が弾を1分間に20発位発射できて、弾に特徴があると聞かされていました。通常の砲弾は弾の先端に信管(弾を爆発させる装置)が付いていて物に当たると爆発するようになっているのだけれど、この弾には尾部に信管が付いていて先端の特殊鋼が戦車の装甲に十分めり込んでから爆発するようになっていたそうです。これを遅延信管と呼ぶそうです。94式速射砲にこのような砲弾が使用されていたと言う情報はネットでも見かけませんでしたが、この砲を使用していた本人が言うのだから間違いは無いと思います。

父たちは38年式歩兵銃ではなくモーゼル拳銃と言うドイツ製の大型拳銃を護身用に支給されていたと言っていました。この拳銃は木のサックに入っていて、そのサックを銃の握りの部分に取り付けると小銃のように使用することが出来たそうです。ネットによれば中国がこの拳銃をライセンス生産していたそうです。12年からはじまった日中戦争の折の捕獲品かもしれません。

前述の38年式歩兵銃について興味深い話があります。一般には、日本兵は明治時代に作られた旧式な鉄砲を持たされて戦争に行かされて哀れだと言われていますが、明治38年は西暦1905年です。しかし太平洋戦争開戦時のアメリカの歩兵銃は1903年製でした。ただアメリカは国力に任せて1943年から1945年までにM1自動小銃(カービン銃)に更新したそうですが、イギリスに至っては1888年製を終戦まで使用していたそうです。それは小銃と言う銃器が1900年頃には殆ど改良の余地が無いほど完成された物だったからだそうです。38年式歩兵銃は現在でも欧米の狩猟家の間では人気があって高値で取引されているそうです。このように一般的に信じられている事と真実の違いが父の行ったノモンハンでも数多く有るようです。


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