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作品名:ベージュのコート 作者:カズロン

第6回   彼女からのメールA
私が目をそらせたのでは有りません。貴方が目をそらせたのです。私はまだ心の整理が付かないのだと思い暫く放って置こうと思いました。貴方は忘れています。1月の終わりに銀行で会いましたよね。銀行の入り口で鉢合わせして、貴方は手を上げて「やあ」と言いました。私は「元気?」と言いました。そしたら、貴方が「今日は混んでいるよ」と言いました。それだけの会話でしたが、もう大丈夫だと思いました。きっと貴方は電話して来ると確信しました。

そして貴方はその日のうちに電話をくれました。でも居留守を使って出ませんでした。だって私をこんなに苦しめて少しはお灸をすえたかったから・・・貴方は次の日も同じ時間に電話をくれました。でもその電話は会おうと言う電話では有りませんでした。貴方は言いました「近くにいるのだから、昨日の銀行のときみたいに挨拶ぐらいはしょうよ」と。私は、なにか歯車がかみ合わなくなっているのを感じました。

覚えているでしょうか、2月になって貴方の家でテントの張替えをやって貴方がその業者の手伝いをして2階からテントを引き上げようとしているとき、私はおそば屋さんの前から大きな声で「大変ね」と叫びました。貴方は片手を上げて曖昧に微笑みました。その日一日電話を待っていましたが、電話は有りませんでした。

3月に派遣先が変わるという事が決まりました。何とかしなくては、私は焦りました。でも貴方は急に居なくなってしまいました。旅行に行ったのかな?いつ帰って来るのだろう。でも私の最後の日にも貴方は戻りませんでした。

貴方と「いつも二人で」という映画を観ましたね。ヘップバーンが浮気しますよね、でもご主人がそれを許しますよね。「私が心の広いステキなご主人だ」と言うと「僕は嫌だ女が浮気するなんて」と貴方は言いました。それで言い争いになりましたね。でも最後に貴方が「あの二人のようにどんな障害も二人で乗り越えて行けるような関係を築こう」と言って仲直りをしましたね、あれは嘘だったのですか?

「気位の高い彼女自身が耐えられるだろうか」ですって、耐えられないと思ったら貴方が支えてくれれば良かったでしょう。奇麗事は言わないで下さい。

沖縄出身の同僚の00さん覚えていますか?彼女が私の悩む姿を見て「私が言ってあげる」と言いました。「そんな事は止めて、私のプライドが許さないから」と言いました。「大丈夫よ貴方に頼まれたなんて言わないから」と彼女が言いました。「本当に止めてよ」と私は言いました。でも彼女に一縷の望みを託しました。

5月ごろ、彼女が貴方のところに行きましたよね、貴方に電話帳を無くして私と連絡が取れないから私の電話番号を教えて欲しいと言いましたよね。そうしたら貴方は何と言ったか、覚えていますか。貴方は「電話帳を書き換えたので、彼女の電話番号は分らない」と言ったそうですね。それって、私を消し去ったと言う事ですよね。それを聞いて私がどれほどの衝撃を受けたか解りますか・・・・。

何がいけなかったのか、勿論私が不倫したことが原因です。でもそれは貴方と出会う前の話です。考えても、考えても答えは見つかりませんでした。そして何も解らないまま諦めることにしました。


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