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作品名:ベージュのコート 作者:カズロン

第2回   出会い
昼休み、店番の女性従業員が食事をする間、店番は彼の担当でした。そのおばさんが和菓子を買いに来て話の流れの中で「男なら、よい娘だと思ったら積極的に声を掛けなくては駄目よ」などと言っている所に偶然彼女が和菓子を買いに入って来ました。

おばさんは「ほらちょうど良かったじゃない、デートに誘ったら」と言って大声で笑いました。恥ずかしさのあまり、K君は真っ赤になって立ち竦んでいました。すると彼女が「せっかくの、おばさんのすすめだからデートする?」、「今日は仕事が7時に終わるから、どこで待ち合わせる?」と言ったのです。意外な展開におばさんは「今時の若い人は簡単に出来ちゃうね」と捨て台詞をはいて出てゆきました。

おばさんが出て行くなり、彼女は「嫌なババアだ」と言いました。その美しい顔に似合わない毒のある言葉にK君はビックリしました。K君は彼女に「ありがとう」と言いました。彼は彼女が機転を利かせて自分の窮地を救ってくれたことに感謝したのでした。

続けて彼女が言いました「駅前のXXXでいい?」「え?」と彼、「だってあたし達デートするのでしょ」と彼女、それからの成り行きは、K君は舞い上がってしまって覚えていないそうです。

その晩、K君は駅前の喫茶店で彼女と会いました。彼女の名前はK子、K君より一つ年下の21歳で、N区に住んでいて、親は公務員で自宅から通っていること、4歳年上の腹違いの兄がいて、その兄さんが結婚して実家に住むので、去年までは一人暮らしをしていたこと、兄さん夫婦が外に出たので実家に戻ったこと、何よりもK君を喜ばせたのは、彼女が、彼の中学時代のマドンナが出た高校を卒業していることでした。彼女がマドンナと同じ位頭が良いと思うと何か嬉しくなってしまったそうです。

それからは毎日連絡を取り合い、休みの日には映画に行ったり、遊園地に行ったり、ドライブしたり、絵が好きだと言う彼女に連れられ美術館にも行ったことが有ったそうです。

ある夏の日、映画を観た帰り、彼女を送って行くために、A駅からK君の車が置いてある駐車場まで歩きました。とある古いアパートの前に来たとき、彼女が「実は私、去年の11月までこのアパートで暮らしていたの」と言いました。そして「今のお仕事は今年の2月から始めたの、それまではある商社に勤めていたの」そして「まさかこの町にまた来ることになるとは思っても見なかった」と言いました。K君が「何で辞めたの」と聞くと「ちょっと嫌なことが有って・・・」と口ごもりました。K君は彼女が話したくない事をあまりしつこく聞かない方が良いと思いそれ以上は聞きませんでした。

二人は、会う機会は多かったけれど、K君がおく手な為か、男女の関係は遅々として進みませんでした。秋になった頃、彼女を送って行くと彼女が「もう少しお話がしたいからドライブしない」と言いました。

彼女の家の少し先に自衛隊の施設が有り、そこの塀は若者のデートスポットに成っている所で何台かの車が止まっていました。K君はそこでお話だけして帰ってきたそうです。

この話は40年前にも聞いた話で友人たちは「なんという愚か者だ、彼女に失礼じゃないか」などと彼を嘲笑しました。しかし彼にもその事は解っていて、自分は「経験の浅さから臆してしまって、もう一歩が踏み出せなかった」のだと言いました。そんな中、秩父に紅葉を見に行く話が決まって、K君は、その時こそ彼女との関係をもう少し先に進めようと決心したそうです。


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