なんだか急に甘いものが飲みたくなった。 昼休みも半分過ぎ、由季は時間を持て余していた。 いつも一人でお弁当を食べているため、どうしても早く食べ終わってしまう。 由季は自販機の前に立ち、迷わず苺ミルクのボタンを押した。 「里見さん」 自分の名前を呼ばれて上体を起こす。 ハキハキとした透る女子の声。見たことのある顔だ。 確か、クラスメイトの・・・。 「小野田さん・・・、なに?」 「ねえ、あのさ」 そう言いながら、由季の腕を掴んで、そばにあるベンチに連れていく。 「今朝、黒峰先輩と話してたって本当?友達から聞いたんだけど」 「ああ・・・、うん」 「マジ!?あたし黒峰先輩のファンなんだぁっ!何でしゃべってたの、知り合いなの?」 小野田さんの勢いに半歩後ずさる。 「先輩、茶道部入ってて部活勧誘のときたまたま」 「茶道部〜!?黒峰先輩って古風〜!里見さん、茶道部なの?」 「わたしは・・・」 ものすごく不本意だが、自分が今茶道部員であることを思い出し、口ごもった。 せっかちなのか、話を聞いていないのか、小野田さんはまた口を話はじめた。 「あたしテニス部なんだけどさあ、茶道部と掛け持ちとかやっていいのかなあ」 ほとんど独り言のように言う。 「テニス部・・・!」 由季は思わず反応した。 「いいね、テニス部・・・ちょっと、興味あって・・・」 「そうなの?」 「うん・・・」 そして友達も作れたら、と由季は思っていた。 「楽しいよ〜!先輩はちょっと厳しいとこあるけど、面白いし!」 「そうなんだ」 いいなあ、と由季は興味津々で話を聞いていた。なにより友達ができそうだから。 由季がこの高校に入ってから、なかなか馴染めず未だに友達が出来ていなかった。 だからこそ、部活はチャンスだと思っていた。 なのに・・・茶道部の同学年といえば、由季のことを「お嬢」と呼ぶあの牧瀬くんよ内山くんだけだ。 二人を思い出して、由季の唇はとんがった。 「里見さん・・・?」 考えこむように視線を地面に傾けた由季に、小野田さんは声をかけた。 なんでもない、と言おうとして今は聞きたくない声に遮られた。 「お嬢〜」 見ると髪はボサボサ、顔に擦り傷、制服をクタクタにした例の二人が歩いていた。
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