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作品名:ほろ苦く、甘く。 作者:なりた十緒子

第3回   3
「まず、私は、辻愛子っていいます。部長やってます」
おっとりしていそうな見た目だが、ハキハキと物を言う。適当にひとつにまとめた髪を、うっとおしそうに背中にやった。
「それで、今あなたたちを連れてきたのが新井さん、後ろに座ってる男子が黒峰くん」
「よろしく」
黒峰先輩が、軽く会釈をした。
「んじゃ、連れてきた子ね、女の子が里見由季ちゃん、茶髪の子が牧瀬亮太くん、大きいが内山悟くんです〜」
新井先輩がテンポよく名前を言う。
辻先輩が続いて話はじめた。
「まあ、ご覧のとおり、部員が少なくて・・・五人揃わないと廃部になちゃうから、黒峰くんは今年入部してもらったのよ」
ははは、と乾いた声で笑う。
・・・なんだか入部しなくてはならない雰囲気になりそうだ、と由季は思った。
「あー、とりあえず俺らは入るから、安心して〜」
座布団の上で足をくずし、だらけていた牧瀬くんが言った。
「・・・なんか有難いような・・・嬉しくないような・・・」
辻先輩がしらけた口調で言う。
「とりあえず、これで廃部はないね。といっても、オレは部活に出れたり出れなかったりだけど・・・」
「そうねえ」
なんで出られない日があるんだろう、と黒峰先輩を見た。
由季の視線に気がついて、黒峰先輩はそれに答える。
「オレは生徒会役員なんだ。やっぱ生徒会の事が優先になってしまうから」
「そうなんですか・・・」
そういえば、黒峰先輩を見たことがあると由季は気付いた。
全校集会の際に生徒会の挨拶をした時だ。副会長として、黒峰先輩は立っていた。女子たちが少しざわついていて、「かっこいいね」等と囁いていたのを聞いた。
そんな人が茶道部に・・・。
由季はふと自分の周りを見ると、茶道部なのにやたら個性的な人たちが集まっている。
この中に混ざりたくない・・・というのが由季の率直な感想だった。
なんか、目立つ人たちが多いからヤだ・・・。
「あの・・・辻先輩、わたし別の部活も見てみたいので、これで失礼します・・・」
頑張って部員を集めようとしている先輩たちには申し訳ないが、長居するわけにもいかない。
立ち上がり、鞄を持って出ようとする由季の手を、新井先輩が掴んだ。


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