「まず、私は、辻愛子っていいます。部長やってます」 おっとりしていそうな見た目だが、ハキハキと物を言う。適当にひとつにまとめた髪を、うっとおしそうに背中にやった。 「それで、今あなたたちを連れてきたのが新井さん、後ろに座ってる男子が黒峰くん」 「よろしく」 黒峰先輩が、軽く会釈をした。 「んじゃ、連れてきた子ね、女の子が里見由季ちゃん、茶髪の子が牧瀬亮太くん、大きいが内山悟くんです〜」 新井先輩がテンポよく名前を言う。 辻先輩が続いて話はじめた。 「まあ、ご覧のとおり、部員が少なくて・・・五人揃わないと廃部になちゃうから、黒峰くんは今年入部してもらったのよ」 ははは、と乾いた声で笑う。 ・・・なんだか入部しなくてはならない雰囲気になりそうだ、と由季は思った。 「あー、とりあえず俺らは入るから、安心して〜」 座布団の上で足をくずし、だらけていた牧瀬くんが言った。 「・・・なんか有難いような・・・嬉しくないような・・・」 辻先輩がしらけた口調で言う。 「とりあえず、これで廃部はないね。といっても、オレは部活に出れたり出れなかったりだけど・・・」 「そうねえ」 なんで出られない日があるんだろう、と黒峰先輩を見た。 由季の視線に気がついて、黒峰先輩はそれに答える。 「オレは生徒会役員なんだ。やっぱ生徒会の事が優先になってしまうから」 「そうなんですか・・・」 そういえば、黒峰先輩を見たことがあると由季は気付いた。 全校集会の際に生徒会の挨拶をした時だ。副会長として、黒峰先輩は立っていた。女子たちが少しざわついていて、「かっこいいね」等と囁いていたのを聞いた。 そんな人が茶道部に・・・。 由季はふと自分の周りを見ると、茶道部なのにやたら個性的な人たちが集まっている。 この中に混ざりたくない・・・というのが由季の率直な感想だった。 なんか、目立つ人たちが多いからヤだ・・・。 「あの・・・辻先輩、わたし別の部活も見てみたいので、これで失礼します・・・」 頑張って部員を集めようとしている先輩たちには申し訳ないが、長居するわけにもいかない。 立ち上がり、鞄を持って出ようとする由季の手を、新井先輩が掴んだ。
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