「奈津美・・・勧誘係お疲れさま、と言いたいとこだけど・・・」 茶道部の部室の入口で、入るなり新井先輩に声がかけられた。 「なに??」 「あきらかに!茶道部なんて興味なさそーなサボり目的の男子がいるんだけど!?」 由季は斜め後ろに立っている男子二人を見た。 一人は少し小柄な体系の男子で、だるそうに欠伸をしていた。猫目で茶髪にしているからか、ガラが悪そうに見える。 もう一人は長身で体格の良い男子で、無愛想な感じだ。 どちらも近寄りがたい雰囲気だが、二人は友達らしかった。 由季が新井先輩に連れられて校舎内に入ろうとしている時、茶道部の部室を彼らが聞いてきたのだ。 「も〜、勝手に決め付けちゃダメだって愛ちゃん!」 新井先輩はそう言って、目の前に立つ彼女を追いやると、「さ、入って入って」と由季たちを呼び込んだ。 上履きをぬいであがると和室が二部屋と茶器等を片づけている水場があり、思っていたよりも広い部室となっていた。 先ほど“愛ちゃん”と呼ばれた先輩のほうを見ると、部員がもう一人、壁際にもたれかかって座っていた。 意外にも男子生徒で、端正な顔立ちをしている。ただ座っているだけなのに、新井先輩とはまた違った存在感のある人だ。 由季は、着物が似合いそうだ、などと関係ないことを考えていた。 そんな事より! 早くここから出て何か他の部活を見学したい。 しかし部室の中まで入っておいて、どういう口実で抜け出せばいいか・・・、全く良い案が浮かばない。 由季は小さくため息をついた。 「とりあえず、どうぞ、座って」 そう言って座布団を配ると、彼女もその場に座り自己紹介をはじめた。
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