Warning: Unknown: Unable to allocate memory for pool. in Unknown on line 0 Warning: session_start(): Cannot send session cache limiter - headers already sent in /var/www/htmlreviews/author/11138/11181/8.htm on line 4 あした晴れたら
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作品名:あした晴れたら 作者:なりた十緒子

第8回   8
「そのほうが楽だから・・・」

久美はポツリと言った。

「一人でいるのが好きなのかと思った」
「そうだと思う」
「『一人が楽』なのと『一人が好き』は意味が違うでしょ」
「同じようなもんよ」

久美は少しイラついた口調で返したが、かおるは負けずに言ってきた。

「みんなといて楽しいって思うほうがいいじゃん。せーっかくの高校生活なんだしさー」
「だって・・・!」

くつ箱の前まで来て、自分のスニーカーを力なく下に落とす。

「人はみんな、誰かを傷つけるしっ!私はいつも・・・傷つけられてばかりだし・・・」
「てやぁっ!」

かおるは久美の頭に冗談っぽくチョップをいれた。

「とりあえずさ。肩の力抜けば」

久美は固まって、かおるの顔を見た。

「・・・・・・・・・」
「あれ、もう雨あんま降ってないんじゃねーの」

学校の玄関を出ると、ポツポツと落ちる弱い雨が、久美の頬をぬらした。

「一応、女子だろが。傘さしたほうがいいよ、俺は別にもういいし」

久美は首を横にふる。

「いいよ、私も。少しくらいの雨、気持ちいいし」
「おー、そうだな。雨、好き?」
「全然」
「あ、そう」

二人は再び歩き出した。10分もすれば別れ道だ。その間お互い何も話さないで歩いた。

「んじゃ、俺、駅あっちだから」
「うん。じゃあね」
「あのさー・・・」

かおるは自分の頭をかいていて、髪がボサボサになっている。

「うまく言えないけど。たぶん、誰でも誰かに傷つけられてるし、知らないうちに傷つけてることあると思う。たぶん俺も・・・。んで、そういうのとか別に戸山のせいでもないから」

久美はあわてて下を向いた。嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちが混ざって、まともにかおるの顔が見れない。
かおるの優しさが伝わってきた。

”チャーラララ♪ラ・ラララ〜♪”

突然、”水戸黄門”のテーマ曲の着信音が流れた。

思わず引きつり笑いをしてしまった。何で今、このタイミングで、水戸黄門がかおるの携帯から流れるのか。

「おー、母さんからメールだ。っつか、今笑ったな?」
「だって・・・何でその曲なのよ・・・市宮くんのイメージに合わないしっ」

笑いながら久美は言った。

「合う合わないは関係ないって。水戸黄門見たことないんか!?おもしろいって!」
「そりゃ、何回かはあるけど・・・」

さっきまでの感動が台無しになったが、2、3分続いた言い合いは楽しかった。
雨はいつの間にか止んでいた。


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