「ふう・・・」
家に帰り自分の部屋へと入ると、ため息とともに久美はベッドの上に身をなげた。
祖母の言葉など思い出したくない。市宮かおるのことも、今日はもう考えたくなかった。
「私なんて・・・」
目を閉じると、涙がベッドに滲んだ。
「ばいばーい！」
元気のいい女生徒の声が廊下に響き、久美は一瞬で目を覚ました。
「やばい、寝ちゃった」
人気のない図書室で、よだれがたれてないか慌てて確認する。
時計を見ると五時半。今日の空は雨雲に覆われており、小雨が降っていた。校内の生徒も大雨にならないうちにと、徐々に帰っていっている様子だった。
久美は図書室でかおるを待っていた。
昨日の嫌な態度で別れたままなのが気になり、彼が図書室に来たら今度は普通に話そうと思っていた。
六限目が体育の授業だったこともあって、掃除が終わり待っているう間に寝てしまったようだ。
「来るわけないか」
久美は潔く立ち上がり、鞄をもって廊下に出た。
「あ・・・傘」
忘れた。
教室前の傘立てに、自分の傘を置いたままなのを思い出した。教室まで戻るのは面倒だが仕方ない。
久美は教室に向かった。
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