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あした晴れたら
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第5回
5
図書室を出たあとは早足だったが、学校を出て帰宅途中、徐々に遅くなっていた。なんだか後味の悪い別れ方をしてしまった。 そばには幅20m程の川が流れており、橋を渡る途中で久美は足を止めた。 浅い川だが水はゆるやかに流れており、たまに枯れ木の枝が流れている。先日、大雨が降ったせいだろう。橋の上から下を覗き込むと、空き缶や段ボールの切れ端などが川のところどころにひっかかっているのが見えた。
「久美ちゃん?」
聞きなれた声がして振り向くと、弟の正紀(マサノリ)が立っていた。
「まさくん、今帰り?」
久美は安心したような声を出して聞いた。 弟とは2歳違いで同じ中学生だが、久美とは違い市立中学に通っている。そのため、学校の通学等で顔を合わせることはあまりない。だが、弟は小さい頃から姉のことを”久美ちゃん”と呼び、仲は良かった。
「そう。今日、部活ないし。久美ちゃん何してたの?」 「別に。川にごみが流れてるなーって、ぼーっと見てただけ」 「ふーん・・・ばあちゃんに会いたくないからだと思った」
久美は、はあ、とため息をついた。
「そんなこと言ってないでしょ」 「じゃあ、今のため息はなに〜」
それはもちろん、おばあちゃんに会いたくないから、という事も理由の一つだが、かおるとの事を話す必要もない。
「何でもないって、さっさと帰ろっ!」
強引に話を終わらせ、歩きだす。 戸山の家は住宅街の中にあるが、周りの家とは敷地の広さ・家の大きさが違い、目立っている。一度家を建て替えてはいるものの、木造のモダンな家で、古くからそこにある名家だ。 父は親の反対を無視し母とかけおち同然で結婚したが、三年前に離婚し今の家に戻ってきた。祖父は他界し、家には祖母が住んでいたのだが、初めて会った時から彼女の態度はあからさまだった。
「女の子はいらなかったのに・・・」
祖母に一瞥され、そう呟かれた事を久美は今でも思い出す。軽蔑するような目と彼女のその空気に、久美は体が凍った。
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