Warning: Unknown: Unable to allocate memory for pool. in Unknown on line 0 Warning: session_start(): Cannot send session cache limiter - headers already sent in /var/www/htmlreviews/author/11138/11181/4.htm on line 4 あした晴れたら
20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:あした晴れたら 作者:なりた十緒子

第4回   4
久美は、肩すかしをくらったような気分だった。では、なぜ彼は図書室なんかにいるというのだろう。
かおるは久美の反応を楽しむような表情をした。

「借りたい本があってさ。探してんの」
「借りたい本?・・・市橋君、本読むの?」
「読書が好きなんだ」

意外だった。かおるのイメージは、学校でもどこでも遊んでる姿だった。

「いつも近所の市立図書館に行くんだけど、読みたい本が置いてなくてさあ。学校にはあるかなって思って探しに来たんだよ」
「そう・・・」

自分に用事というわけではないのなら、さっさと片付けて図書室から出ようと思った。
かおるが嫌いとかではなく、久美は人としゃべるのが苦手なのだ。

「学校の図書室もいいね、静かだし」

本棚を眺めてかおるは言った。
独り言であってほしかったが、今ここには久美と市橋くんの二人しかいない。無視するのも悪い気がした。

「人に囲まれてるほうが好きなんじゃない?」
「うん、それも好き。でも、一人になりたい時もあるし」

久美は市橋くんを見た。どんな人なのだろうと少し興味がわいた。
自分のイメージしていた姿と、少しずつ一致しなくなっているのがわかった。

(市橋くんと話すの嫌じゃない・・・かも・・・?)

「俺って遊んでるように見える?」

かおるは肩肘を机について、手のひらに顎をのせていた。久美を見て、にいっと笑ってる。久美は素直に答えた。

「うん・・・。でも今はそんな感じしないよ」
「趣味は読書、って地味でしょ。でもけっこう図書館通ってたりすんだよ」

明るく話すかおるに、久美がいつも感じていた❝派手さ❞はない。
へえ、と久美がことばを返すと、かおるはすかさず言った。

「あ、やっと笑ったな」

久美は瞬時に表情を冷たく変えた。
なんだか、からかわれている様な気がして、心の中の防衛反応が人との間に壁をつくる。自分でも解っていた。

「じゃあ、もう掃除終わったし帰るね。ごゆっくり・・・」
「あ、そう・・・」

かおるは少し驚きながら答えた。
久美がさっさと図書室を出ると、それを視界のはしで見送っていたかおるは一人呟いた。

「俺、なんか怒らせることしたかよ・・・?」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 2207