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あした晴れたら
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第4回
4
久美は、肩すかしをくらったような気分だった。では、なぜ彼は図書室なんかにいるというのだろう。 かおるは久美の反応を楽しむような表情をした。
「借りたい本があってさ。探してんの」 「借りたい本?・・・市橋君、本読むの?」 「読書が好きなんだ」
意外だった。かおるのイメージは、学校でもどこでも遊んでる姿だった。
「いつも近所の市立図書館に行くんだけど、読みたい本が置いてなくてさあ。学校にはあるかなって思って探しに来たんだよ」 「そう・・・」
自分に用事というわけではないのなら、さっさと片付けて図書室から出ようと思った。 かおるが嫌いとかではなく、久美は人としゃべるのが苦手なのだ。
「学校の図書室もいいね、静かだし」
本棚を眺めてかおるは言った。 独り言であってほしかったが、今ここには久美と市橋くんの二人しかいない。無視するのも悪い気がした。
「人に囲まれてるほうが好きなんじゃない?」 「うん、それも好き。でも、一人になりたい時もあるし」
久美は市橋くんを見た。どんな人なのだろうと少し興味がわいた。 自分のイメージしていた姿と、少しずつ一致しなくなっているのがわかった。
(市橋くんと話すの嫌じゃない・・・かも・・・?)
「俺って遊んでるように見える?」
かおるは肩肘を机について、手のひらに顎をのせていた。久美を見て、にいっと笑ってる。久美は素直に答えた。
「うん・・・。でも今はそんな感じしないよ」 「趣味は読書、って地味でしょ。でもけっこう図書館通ってたりすんだよ」
明るく話すかおるに、久美がいつも感じていた❝派手さ❞はない。 へえ、と久美がことばを返すと、かおるはすかさず言った。
「あ、やっと笑ったな」
久美は瞬時に表情を冷たく変えた。 なんだか、からかわれている様な気がして、心の中の防衛反応が人との間に壁をつくる。自分でも解っていた。
「じゃあ、もう掃除終わったし帰るね。ごゆっくり・・・」 「あ、そう・・・」
かおるは少し驚きながら答えた。 久美がさっさと図書室を出ると、それを視界のはしで見送っていたかおるは一人呟いた。
「俺、なんか怒らせることしたかよ・・・?」
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