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あした晴れたら
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最終回
12
「久美ちゃーん」
コンビニの入口で呼ばれ、振り向くと弟の正紀が立っていた。
「まさくん?なに、アンタ今帰り?」 「そう〜、部活帰りに友達ん家寄ったらこんな時間になってさあ」
弟にはきっと祖母からのお小言なんてない・・・そう思うと、久美はふ〜ん、と投げやりな返事しか出来なかった。
「久美ちゃんは何してんの?」 「私は英語のノート買いに来たの。もう遅いんだし、まさくんはさっさと帰りな」
半分八つ当たり気味に言う。
「久美ちゃん、ばーちゃんに何か言われた?」
久美の様子に何か感づいたのか、ただの何気ない言葉なのか、正紀が聞いてきた。 もちろん「何か」言われたが、それを弟に話すのもなんだか癪にさわる。
「・・・・・・・・・まあ、ちょっとね」 「まじで?ほんっと久美ちゃんには煩いね、ばーちゃん」 「仕方ないわよ、嫌われてるし」
久美に味方する正紀に何だかホッとした。
「・・・理由なんてわかんないけど。私もあの人は嫌いだし」
もう人を好きになれるのかわからない。 人を心から信じられるのかわからない。 そんな事を考えて、久美は寂しくなった。
「ま、俺が高校出たら二人であの家出ようよ!生活費とか俺が働いたら何とかなるかも!」
久美は目を丸くしてキョトンとした。
(何言ってるんだろ、この子)
全く考えてもいなかったことを言われた久美は、その衝撃でしばらく思考回路が停止した。
「あ、時間遅くなるし、俺先帰るよ〜。じゃね」
のんきな声でそう言うと、正紀は帰っていった。 まだ精神的に「小学生」なのか。 まさかあんな事をさらりと言われるとは思っていなかった。 ポツンと立っていた久美はよろよろとコンビニの入口横のガラスにもたれかかった。 さっきまで自分には味方など誰一人いないという孤独感があったというのに、正紀の言葉がくすぐったかった。 自分を気にかけてくれる人がこんな近くにいた。その事に気付いたというだけで、久美の心は温かくなった。
(自分自身から逃げていた・・・。私は私のままでもいいのに)
同時に久美は市橋馨のことを思い出していた。
「おはよう〜」 教室では皆いつものように友達同士声をかけあっている。 今日は空が真っ青で、少しポカポカしていた。教室内もあたたかい。
「かおるくん、おはよー」
教室で自分の席にすでに座っていた久美は、市橋くんの存在を知ると立ち上がった。 市橋くんに向かって歩く自分の体が、緊張で固まっているような気がする。 久美はぎゅっと拳をにぎった。
「いっ、市橋くんおはよ!」
市橋くんの顔をまっすぐ見て言えた。 昨日、近づくなと言っておいて、どんな反応をされるか、時間が止まった気分で返事を待つ。
「・・・おはよう」
その一言で久美は頬がゆるんだ。 大丈夫、ちょっとずつ進んでいこう。 ちょっとずつ強くなっていこう。
「昨日はごめんね」
久美は素直に、馨に伝えた。
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