Warning: Unknown: Unable to allocate memory for pool. in Unknown on line 0 Warning: session_start(): Cannot send session cache limiter - headers already sent in /var/www/htmlreviews/author/11138/11181/10.htm on line 4 あした晴れたら
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作品名:あした晴れたら 作者:なりた十緒子

第10回   10
部屋に入ると、かばんをベットの上に無造作に投げおき、家着に着替えはじめた。
父親はかおるが小さい頃病死し、それ以来母親が子育て・家事をこなしながら、美容院を切り盛りしてきた。
男親がいないことに寂しさを感じることもあったが、それよりも自分のために忙しく働く母親の姿をみて、”しっかりしなければ”と無意識ながら思っていた。
母親に心配かけないようにと、機嫌をうかがうことに慣れていった。
他人の負の感情に負けそうになることもあったが、そのたびに、母親の自分への愛情に気付かされ感謝してきた。
戸山久美の「悲しい」気持ちが、かおるには何となく解るような気がした。
着替え終わり、ベットの上に力なく腰をあずける。

「余計なお世話かなー」

誰に聞いてもらうわけでもなく、一人つぶやく。
だが何故か気になるのだ。


翌日、久美は教室のはしで、西田知代を中心に女子4人に囲まれていた。
楽しく会話がはずんでいるわけではない。

「あのさー、ちょっと優しくされたからってカンチガイしないよーにね?」

知代が威圧的に言ってきた。

「何のことよ」
「昨日、かおる君と一緒に帰ってたでしょ。あたし見たんだよね」

そのことか、と久美は内心ため息をついた。
たまたま一緒になっただけのことなのに、たった一度彼と下校したからといって何故こうまでされるのか。

(だから人って、めんどくさい)

「たまたま帰りが一緒になっただけだし、期待もなにもしてないよ」

自分は悪いことをしていないのに、周りを囲まれ追い詰められているという状況が、久美にはストレスだった。昔、いじめを受けていた時のことを思い出す。

「人にはバランスってのがあんの。戸山さんとかおる君なんて釣り合わないし」

何を見て、そんなことが決まるのか。
久美は黙ったまま俯いていた。

「まあ、いいよ。次から調子のんないでよ。”遠慮”もしなくちゃ」

最後に知代がにっこり笑いながらそう言うと、女子たちは自分の席近くにダラダラと戻っていった。


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