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作品名:100年目の希望 作者:パンデミックデリタス

第9回   悪党の正体
そして、グレート松本はまた話を始めた。

「日本がおかれている立場を踏まえた上で、ここからの話を聞いてくれ。日本という国は資本主義と民主主義という二つの大きなシステムで動いている んだ。子供のころ学校で習っただろ?で、多くの日本人がそのシステムが国民を幸せにするもので、平和を維持していく上でも最も効率的かつ現実的なシステム だとして教育されてるんだ。確かに歴史的に見ればそう信じてしまうのは当然なんだ。ドイツの独裁政治が悲劇を生んだこと、旧ソ連の経済が破綻して国家が崩 壊したこと、北朝鮮の現状などを見れば誰だってそう思ってしまう。でもだからと言って、資本主義と民主主義が人を幸せにすることの根拠にはならないんだ。 それに、今の日本の資本主義というのはアメリカの正義を押し付けられているに過ぎないわけだし。そもそも完全なシステムなんてこの世に存在しないんだ。プ ラトンが主張していた哲人政治だって結局は幻想にすぎなかったんだから。つまりさ、俺が言いたいのは、資本主義と民主主義にも欠陥があるんだということを きちんと国民に教えておくべきだと思うんだ。資本主義は人を商品に変えてしまう傾向があることであったり、民主主義は少数派(強過ぎる人、弱過ぎる人)を 虐げてしまう傾向があるってことをね。これは個人にだって言えることで、この世に完璧な人間なんていないんだ。例えば、無知であることは悪いことじゃない んだ。自分の無知と向き合うことから逃げ出して学ぼうとしないことが罪なんだ。でさ、ここまでの話はまだ我慢できるんだけど、俺が絶対に許せないのは日本 がおかれている立場や、そのシステムの欠陥を私利私欲のために悪用している非道な人間がいることなんだ。しかもそいつらは不正が明るみに出た時の責任の所 在をうやむやにするために、複数の権力組織が阿吽の呼吸で結託してるんだ。この「阿吽の呼吸」というのが本当にやっかいなんだ。結託している証拠がいっさい残らないんだからな。」

ミスターおくれは、ふとダイナマイト仙波のことを思い出した。

「もう気がついたかい?さうさ、その複数の権力組織こそがこの国に住む人の理想や希望を根こそぎ奪っている者の正体さ。そいつらは、理不尽なアメ リカによる日本への内政干渉や、資本主義と民主主義のシステムの欠陥を傘に、甘い蜜を吸おうとする正真正銘の悪党なのさ。どうだ?スッキリしたか?」

ミスターおくれは、まだ十分に納得できず、グレート松本を問い詰めた。
「グレート松本がいう複数の権力組織が本当に存在するのであれば、なぜマスコミはそれを報道しないんですか。それに、その権力組織はどうやって僕たちの希望を奪っているというんですか。」

グレート松本は気の毒そうな顔をしてミスターおくれのことを見て言った。
「マスコミはその権力組織の一つなんだよ。つまり、テレビと新聞だよ。」


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