「国家の定義って知ってるか?国家っていうのはある一定の領域に住む人民による政治共同体のことを言うんだが、その前提として、その一定の領域に住む人民 を他の勢力による圧力から守らなければ成立しないんだ。それでだ、日本ていうのは自分で自分の国を守ることができず、アメリカに守ってもらっているんだ。 それってどういうことかわかるかい?国家として存在するためのアキレス腱をアメリカに握られてるってことなんだよ。他の勢力の意向で存否が決まるような国 家を果たして国家と呼べるだろうか。また、表面上では対等な関係を装っているが、アメリカの思惑に反する政策は絶対に許されないんだよ。例えば、貿易だ よ。学校の給食が何でパンになったか知ってるか?日本で小麦の消費を促進させて、小麦を輸入させるためだよ。これはアメリカが得意とする包括的構造改革ってやつさ。つまり日本の食文化そのものを巧妙に変化させているんだよ。でも、大抵の日本人はパンおいしいからいいじゃんとか言うんだけど、それは無知から くる発言なんだ。無理矢理農作物を輸入させられて、直接被害を受けたのは日本の農家なんだよ。自殺者だってたくさん出たんだ。アメリカの言い分はこうさ。 「アメリカは貿易赤字と財政赤字を抱えてて、基軸通貨のドルが暴落したら世界的な経済危機に陥ってしまう。日本は自動車や電化製品をたくさんアメリカに輸 出して儲けてるんだから、もっと輸入しろ」ってよ。で今どうなってるよ?サブプライムローンみたいな詐欺まがいの商品売りまくって、世界的な経済危機を引 き起こして世界中に迷惑かけまくってるのはどこの誰だよ。こんなので、新自由主義のリーダー気取ってるんだから怒りを通りこして笑えてくるよ。あと、詳しい説明は省かせてもらうが、アメリカの日本に対する包括的構造改革というやつは、金融、法曹、メディアなどほとんどの業界についても同じことが言えるんだ。」
ミスターおくれは、グレート松本の話に強く共感したが、どうしても腑に落ちない点があったので、質問をぶつけてみた。
「もし、仮にグレート松本さんの言ったことが事実だとしても、僕はアメリカの日本に対する強引な圧力が閉塞感の発生源とは思えないんですよね。そ の事実だけで十分過ぎるくらい理不尽であるとは思うんですけど、何ていうか今の日本を覆っている閉塞感ていうのは、もっとドロドロしてて、いくら掴もうとして実態がなくて掴めないような、そんなイメージなんですよ。それに、すでに多くの日本人がアメリカに対して媚びへつらってるのは「平和のためにしかたな く」というようなイメージを持っていると思うんですよ。つまり、批判の対象が明らかなのだから、閉塞感を感じて希望がなくなるってところまでには至らないんじゃないですかね。アメリカに対する鬱憤は貯まっていくと思いますけど。そのあたり、グレート松本さんはどう思いますか?」
「おいおい、ちょっと待ってくれよ、俺がいつアメリカの圧力が日本人の希望を奪ってるなんて言ったんだよ。俺は、今日本が置かれている立場をわかりやすく説明してやっただけだ。本題はここからだ。」
ミスターおくれは、早とちりした自分を少し恥ずかしく思ったが、それ以上にグレート松本の話が期待はずれでなかったことに安堵した。
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