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作品名:100年目の希望 作者:パンデミックデリタス

第6回   大衆の乱×グレート松本
10分ほどバスに揺られると高円寺の街が見えてきた。この街は都内でも有数の活気ある下町で、目に力のある若者が集う町でもある。ミスターおくれは、運賃の支払を済ませ、ドアが開いた瞬間ジャンプしてバスから飛び降りた。

ミスターおくれは、ひとまず腹ごしらえのために純喫茶を探した。バスを降りてから南の方角へ5分くらい歩いていると、「ネルケン」という純喫茶風 の店が目に入ったので、とりあえずそこに入ることにした。店に入るとクラシックが流れていて、店内を見渡すと、いかにも高級そうな赤いビロードの椅子が並 んでいた。壁にはヨーロッパの街の風景や昔の西洋人の日常が画かれている絵画がところせましと飾ってあった。ミスターおくれは、小汚い純喫茶をイメージして入ったので、少しひるんでしまったが、とりあえずそこで食事をすることにした。いつものように、サンドイッチとアイスコーヒーを注文した。

注文が来るまで店内を物色していると、ふと入り口近くに目立つ文字で「大衆の乱」と書いてあるこの店には不相応なチラシが貼ってあるのが目につい た。何だろうと思い、ミスターおくれはそのチラシを近くまでいって確認した。どうやらグレート松本という人が高円寺で経営しているリサイクルショップやカ フェの総称だということがわかった。すると、チラシを見ているミスターおくれの後ろに、三十代くらいの女性店員さんが近づいてきて「昨日、新宿で若い子集めてデモやってたのニュースで見ませんでしたか?あのデモを指揮してたのがその大衆の乱なんですよ。非正規やニートを集めて反権力的な運動をしているらしいの。」と教えてくれた。「そうなんですか、僕も丁度そのニュース見てちょっと気になってたんですよ。」ミスターおくれはこれはまた貴重な話が聞けるかも しれないと思い、グレート松本に会うにはどこへ行ったらいいのか店員さんに聞いてみた。その男はこの店の常連客らしく、プライベートな付き合いもあるので 会えるかどうか電話して聞いてくれるという。

どうやら今グレート松本はリサイクルショップにいるということだった。そこに行けば話をさせてくれるという。ミスターおくれは、ワクワクする気持ちを抑えながらサンドイッチとアイスコーヒーをゆっくりと味わった。店を出る時、店員さんにリサイクルショップへの行き方を教えてもらい、丁寧にお礼を 言って店を出た。

ミスターおくれは、グレート松本がいる店までそこそこ距離があったので、当初の目的であった10円くれ攻撃をしながら向かうことにした。渋谷のセ ンター街よりは10円くれ攻撃に応じてくれる人が多いだろうと予測してたとおり、かなり好感触だった。「がんばってねー」などとちょっとしたエールまでくれる若者までいた。僕が集めた10円を何に使おうとしているのか知らないだろうに、と少し疑問を残しながらもミスターおくれは気分良く通りを抜けていった。

15人に10円くれ攻撃をし終えたころ、「大衆の乱5号店」と書かれた看板がかかったリサイクルショップが見えてきた。何かシブい雰囲気の店構え だなと思いながらミスターおくれが店に近づいていくと、一人の男がサッカーボールを蹴りながらその店から出てきた。そして、男が道の向こう側の壁にむかってボールを蹴ると、そのボールがミスターおくれの方へ転がってきた。ミスターおくれはボールを一度つま先で止めて、インサイドキックでその男に蹴り返し た。

「もしかして、あなたはグレート松本ですか?」

「そうですけど、さっき電話で俺と話がしたいっていってた人かい?」

「はい、はじめまして。ミスターおくれと申します。」


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