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作品名:100年目の希望 作者:パンデミックデリタス

第5回   目覚め
ミスターおくれは、ダイナマイト仙波と別れた後、下北にある自宅へ戻った。そして、冷蔵庫から500ミリリットルの缶ビールを一本取り出して少しずつ飲んだ。ミスターおくれは少し酔った。そして、しばらくぼーっとした後テレビをのスイッチを入れた。すると、あるニュースが流れてきた。若者が200人くらい集まって非正規雇用 が理不尽であり、不当な労働搾取であるからこの不平等をどうにかしろと叫びながら新宿でデモを行っている様子が映っていた。デモの映像をしばらく写した 後、現地のレポーターの一人がデモを行っている内の一人にマイクを向けて、「あなたは、企業側にどんな不当を受けたのですか?」と質問した。するとマイクを向けられた二十代半ばくらいの青年は「派遣社員をやっていたんですが世界的な不況の影響で勤め先の企業の業績が悪化しという理由で、いきなり解雇されたんです。住んでいた社宅も追い出されてしまったんです。」といった。レポーターの人は「そうですか、それは大変ですね。どうすればそんなことがなくなるんですかね。」と同情した。

現地からのレポートはそれで終了し、映像が現地からスタジオに移され、ニュースキャスターが評論家に「これを見ていかがですか。」と質問した。 「うーん、企業側はこれだけの大不況の中で勝ち残っていかなければならないのでコスト削減は止むを得ないですよね。ただ、少し前まではかなり景気が回復していて、企業は内部留保を潤沢に確保しているところも多く、役員報酬や正社員のボーナスはいっさい削減されていないみたいな話もありますから、リストラされた非正規の人達が怒る気持ちもわかりますね。しかも、リストラされるのは非正規雇用者ばかりですから。あとは、新卒の雇用がかなり少なくなりましたから、事実上これもリストラといっていいでしょう。」と当たり障りのない発言をした。ニュースキャスターは更につっこんで評論家に言及した。「では、いったいどうすればいいですかね。就職氷河期時代で正規から外されて非正規雇用に甘んじている若者や、就職先がなくて非正規に流れていく新卒社会人の人達があまりにもかわいそうじゃないですかね。」「うーん、難しいですね、就職氷河期時代はとにかく仕事がなくて、やりたくない職業を嫌々やったり、無職でいるより は非正規でも自由に働ける方がいいだろうってこともあって小泉さんが雇用制度改革したんですけど、結果から言えば企業の思うつぼだったようにも思えますしね。少なくとも製造業に関してはやはり規制緩和するべきではなかったと言えますけどね。とにかく今はセーフティネットをしっかり整備することが大切です。」

ミスターおくれは酔っているせいなのか、キャスターと評論家のやり取りが真摯ではなかったからなのか、この二人が建前で話しているように思えた。

ミスターおくれはいつの間にか寝入ってしまっていて、起きるともう朝だった。テレビが付けっ放しになっていて、鳥越俊太郎が番組の中で何かしゃべっていた。朝から鳥越さんはちょっとと思ったミスターおくれはチャンネルを変えてめざましテレビを見た。今日の占いをやっていた。ミスターおくれは1位 で、ラッキーポイントは「栗まんじゅう」だった。

今日は、ミスターおくれの勤め先の和菓子屋が休みだったので、たまには場所を変えて高円寺で10円くれ攻撃してみようと思い立ち、少しウキウキしながらバスで高円寺へと向かった。


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