20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:100年目の希望 作者:パンデミックデリタス

第2回   考えるミスターおくれ
ミスターおくれは「10円くれ攻撃」を一時中断し、純喫茶に入った。それからアイスコーヒーを注文し、有意義なお金の使い方を考えた。100年にわたる 10円くれ攻撃で貯まった貯金の金額は730万円だった。平均して、一日20人に10円もらった計算になる。730万円でこの理不尽な社会を改善するため に何ができるんだろうか。ミスターおくれは考えている内に頭がぐちゃぐちゃになった。ヒゲも少し伸びた。

そもそもナンパしてエッチすることしか考えてないようなギャル男に10円の価値もないと言っていた女の子たちが理想とする社会とはどういったもの だろうか。また、ギャル男たちがある意味社会の犠牲者であると言っていたが、どういうことだろうか。若者に希望がなくなってきていることの象徴なのだろう か。そうだとすればなぜ希望がもてないのだろうか。ギャル男たちは一見欲望を満たして満足そうに見えるが、仲間と解散した後にとぼとぼ歩いて帰る男の表情 はどこか虚無感が漂っているように見えた。やはり希望がないのかもしれない。彼らは一時的な欲求を満たすことに終始し、これから先も真善美に背を向けて生 きていくのだろうか。いや、そうではないかもしれない。どこかで、挫折をして虚無感の根源を発見し、真善美と向き合って生きていく人もいるだろう。

そう考えると、あのギャル男たちはやはり社会的な問題から派生した象徴的な存在にすぎないということだろう。ギャル男たちに限らず、多くの人が何ともいえない虚無感を抱え、その正体を探しているのかもしれない。

ミスターおくれは思考に耽っていたために、アイスコーヒーにまだ手をつけていない状態だった。氷はほとんど溶けてなくなっていてグラスの周りに付 いた水滴がたらたらと落ちていった。ミスターおくれはその水滴が希望のない若者の涙に見えて、少し切なくなった。ふと我にかえると店内からミスチルの 「GIFT」が聞こえてきた。

感傷に浸っている場合ではない。ミスターおくれはアイスコーヒーを一気に飲み干し、一旦思考を停止して店を出た。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 3571