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作品名:100年目の希望 作者:パンデミックデリタス

第14回   鬼十則とマルクス
「財界っていうのはつまり端的に言って経団連のことを指すんだが、彼らの目的はただ一つだ。『お金を儲けること』だ。つまり、資本主義をとことん肯定し、お金第一主義の価値観を国民に植え付けることなんだ。例えば、大して性能の変わらない携帯電話を次々にデザインを変えて発売し、古いものはどんどん捨てさせて、新しいものをどんどん買わせるように国民に仕向けるんだ。体感ではわからないほど微細な性能の違いを誇張して宣伝するんだ。昔の日本人は『モノには魂が宿る』という価値観があって、モノを大切に使う習慣があったんだけど、その価値観は企業にとってお金儲けの邪魔になるからマスコミを使って排除したんだ。テレビや雑誌はそれを助長する装置なんだ。テレビや雑誌が恋愛を煽り立てるのはどうしてだと思う?消費を煽るためさ。クリスマス、バレンタインデー、ホワイトデー、誕生日などのイベントで企業側は荒稼ぎってわけさ。あと、恋愛至上主義の女は、ファッションや化粧などに惜しみなくお金を使ってくれるから、またまた企業側はぼろ儲けってわけさ。お金を儲けるためだったら財界はどんなことだってするんだ。マスコミという洗脳装置を利用してね。あと、今まで名前出してなかったけど、消費を煽る戦略を考えている頭脳集団が存在するんだが知ってるか?」

ミスターおくれは少し考えたが何も浮かばなかったので、知らない、と言った。

「電通さ。メディアにこの名前が出てくることは滅多にないから知らないのも無理ないんだ。この電通という会社がまたやっかいなんだ。規模としては世界最大の広告代理店なんだ。マスコミが電通の名前を出すことをタブーとしている組織の一つさ。実際、電通に勤めてる下っ端は鬼十則という厳しい行動規範をもとに毎日奴隷のように働いているんだが、上層部は違う。鬼十則とは真逆の行動規範で組織の方向性を決定してるんだ。業界では裏十則と呼ばれてるんだが、まさに醜悪な日本のシステムの実態を浮き彫りにしたような内容なんだ。」

「へー、自宅に帰ったらネットで調べて詳しく見てみますね。」
ミスターおくれはポケットにしのばせていたペンと手帳を取り出して、"裏十則"と書いた。

「とりあえず、財界はあらゆる手を使って資本主義を肯定する世論操作を行ってるってことなんだ。資本主義の欠陥を財界が認めてしまうと大変なことになるからね。昔みたいに、マルクス主義論争に火がついてしまうからね。そうなると、財界はマルクスが論証した資本主義の欠陥に対して国民が納得するような反証を示さなくてはならなくなるんだ。まぁ、ここまでいくと財界というよりも、政府に対する反証責任が問われることになるだろうけどな。あと、勘違いしてほしくなんだけど、こういう話をすると俺のことを社会主義者だと言ってくる人が出てくるんだが、俺は別に資本主義をやめろと言ってるわけじゃないんだ。資本主義の欠陥と向き合って、労働者から搾取をしない制度を作ることに尽力するべきだと言ってるだなんだ。そこは、君にも理解して話を聞いてもらいたいんだ。」


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