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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第98回   98

家に帰り、きょんちゃんからの茶封筒の中身に目を通した。
パッと見た感じ、のびのびと育てる方針の保育を目指しているみたい。

すぐに答えが出るわけでもなく、すぐにそれを机の引き出しにしまった。
そして、机に置きっぱなしのハガキに手をやる。

同窓会・・・どうしよう。
最初見た時は、欠席しようという思いが強かったけど・・・。
これもまた、あの夢のせいか?
変な期待が出てくる。

・・・っていうか、夢に対して、現実を重ねようとするなんて、どうかしてる。
・・・はぁ〜・・・ほんと頭おかしいかも・・・

結局、またハガキを机にそのまま置いた。



翌週の休日―――

一人でデパートへ向かう。
お気に入りの化粧水が、ここにしか置いてないためだ・・・ま、一人でなんて慣れてる。

・・・のはずが・・・ついこの間まで、友達といつも楽しく過ごしていた気がして、今日はすごく淋しく感じた。

目的のものを購入し、デパ地下へと向かう。
ここのデパートに来ると、いつも買うクロワッサンのお店に行くためだ。
休日ということもあって、少し行列ができている。
珍しい光景でもないので、素直に最終列に並んだ。

家族連れも多く見られ、小さな子の姿も何人かいた。
そして、あたしの順番が来て支払いを済まし、商品を受け取る。
おつりをもらったのを、列から離れて財布に入れようとした。
がその時、ドンっと誰かがぶつかってきた。
その衝撃はさほどひどくなかったが、手元の小銭が、下へ落ちてしまった。

チャリチャリ〜ン・・・
その音と同時に、ぶつかった相手に目をやった。
3歳くらいの女の子が、あたしの足元に立ったままだった。

この子がぶつかったんだ・・・
そんなことを思っていたら、すぐさまその子の母親らしき人が走ってきた。

「――すみませんっ・・・こらっ、のぞみっ!勝手に離れちゃだめでしょ!?」
そのお母さんは子供を叱ると、下に落ちているお金を拾い始めた。
「あっ・・・いいですよ・・・」
あたしも一緒に拾い始める。
すぐに全部のお金を拾い終え、あたしへと手渡してきた。
「すみません、ありがとうございます・・・」
お礼を言いながら、そのお母さんに目をやる。



・・・・・・―――っ!!



「いえっ、こちらが悪いんですからっ・・・ほらっ、のぞみ、ちゃんとごめんなさいして?」
「だって〜・・・あそこにプリキュアが〜・・・」
その子は、先にあるキャラクターのデコレーションケーキを指差す。
「いいからっ・・・先にごめんなさいしてっ!」
「・・・・・・ごめんなさい・・・」
その子は、ほんとうに申し訳なさそうに謝ってきた。
「はい、よく言えました!・・・あのっ・・・ほんとすみませんでした。」
再び母親が謝る。
そして、その子の手を引いてこの場を離れようとした。



「・・・―――美樹?」



「――――――っ・・・」



美樹だった。
すぐにわかった。
変わってないから・・・中学の時から変わりなく・・・大人になった美樹がそこにいた。

「・・・・・・とも・・こ?」
自分の名前を呼ばれたことで、美樹もあたしの顔を確認した。

「・・・うん・・・そう。」
覚えててくれたんだ・・・それが正直うれしかった。

「・・・ほんとに、智子?」
美樹は、まだ信じられない様子だ。

「・・・ねぇ、ママ〜・・・」
先ほどの女の子が、美樹のスカートをクイクイっと引っ張る。
「あ・・・なに?」
「プリキュア〜っ!」
「あ〜、はいはい、わかったから。ちょっと待ってて。」

「・・・子供いるんだ。」
あたしは、美樹にしがみついている女の子に目をやる。

「あ〜、うん・・・もう最近ちょこまかと動いて・・・」
「クスクス・・・」

あたしは、女の子の目線に合わせしゃがみ込んだ。
「こんにちは。」
「〜〜っ//・・・こんにちは・・・」
恥ずかしそうに挨拶を交わしてくれた。
「お名前は?」
「・・・きむら・・・のぞみですっ。」
そっか・・・結婚して名前変わったんだよね。
「のぞみちゃんは、いくつですか?」
その質問に対し、指を4本立てて答えてくれた。
「・・・4さいっ。」
「クスクス・・・そっか〜、すごいしっかりしてるね〜。」
そう言いながら、のぞみちゃんの頭を撫でた。

「よかったね〜、のぞみ。ほめられてるんだよ〜。」
「えへへ・・・」
のぞみちゃんは、照れくさそうに笑う。

「・・・よくここに来るの?」
あたしは立ち上がり、美樹へと話を戻す。
「ううん、今日はたまたま。ダンナのつきあいでね、最上階で、ゴルフ道具のセールしてるからって・・・ほんといい迷惑だよね。」
「そうなんだ。」
「あたしたちは、見ててもつまんないから、他見てて・・・あっ・・・ねぇ、忙しい?」
「え?」
「・・・せっかくこうして会えたんだし・・・立ち話もなんだし、お茶でもどう?」
「――っ・・・うん。」

美樹の方から、そういう風に誘ってくれるなんて、意外だった。
でも、うれしかった。
あたしとなんて・・・会いたくないんじゃないかと思ってたし。

のぞみちゃんに、デザートを食べようと言うと、速攻で納得した。
プリキュアとやらは、もういいみたい。



2階にある喫茶店へと入る。
のぞみちゃんは、ミニパフェを注文してご機嫌そうだ。
美樹がのぞみちゃんに対し、いろいろ世話を掛ける姿を見て、あぁ〜・・・美樹はお母さんなんだ・・・なんて、当たり前のことを思ってしまった。

「それにしても・・・ほんとすごい久しぶりだよね〜・・・十・・・何年振りだ?」
美樹が指折り数える。

「・・・17年前だね。」
あたしがスッと答えた。

「17年前!?・・・そんなになるんだ〜・・・はぁ〜・・・自分が歳とるはずだよね〜。」
「クスクス・・・それはあたしだって同じこと。」
「あ・・・そっか、そうだよね・・・・・・智子は?」
「え?」
「・・・結婚・・・してるの?」
「ううん・・・残念ながらまだ。」
「そっか。」
「美樹はいつ結婚したの?」
「あたし?えっと〜・・・この子が4歳だから・・・5年経つか。」

それから、ダンナ様が1つ年上とか、飲み会で出会ったとか、結婚について、のぞみちゃんについて、話をした。
すると途中で、のぞみちゃんが会話に入ってきた。

「きょうね〜、あみちゃんち、おとまりするの〜。」
うれしそうに言ってくる。
「そうだね〜、初めて泊まるんだよね。」
美樹が微笑む。
「あみちゃんって・・・お友達?」
のぞみちゃんの歳で、友達の家に泊まるなんてありえないだろうけど、とりあえず聞いてみた。

「ううん、あたしの姉の子。のぞみにとっては、いとこになるの。」

――っ・・・姉・・・っ

「姉んとこ、3人兄妹でさ、しょっちゅう遊びに行ってるんだけど、泊まるのは初めてで、うれしいのと、ちょっと緊張があるみたい。」

・・・・・・っ

「のぞみ、たのしみ〜っ!」
「そっか〜、ママはちょっと心配。」
親子の会話が繰り広げられる中、だんだんあたしの鼓動は速くなってきた。

「・・・美樹に・・・お姉さんって・・・いたんだ・・・」

「うん6つ上でね。離れてるわりに大人げない人だよ。」

――っ!!
6つ・・・上・・・

「だれのこと〜?」
のぞみちゃんが再び会話に入る。
「ん?あみちゃんのお母さんのこと。」
「えっと〜・・・みかちゃん?」

――――っ・・・み・・か・・・?

「そうそう。・・・もう、姉ってば〜、おばさんと呼ばれたくないからって、名前で呼ばせようとしてんのよ。ほんっと、いいかげん歳わきまえてほしいわ。」

これは・・・・・・偶然?
美加さんのことなんて・・・あれは夢の中だったんでしょ?
あたしは・・・知らないはずなのに。
・・・・・・っ

そして、また良からぬ事を思ってしまった―――

「・・・お姉さんの・・・ダンナさんって・・・・・・いくつ?」

さらに鼓動が速くなる。
・・・・・・っ

「姉のダンナ!?・・・たしか・・・2つ上だったかな?大学の時からの付き合いだって言ってたよ。」

・・・・・・2つ上。
なんか気が抜けた気がした。
予想していた相手ではなさそうだったから・・・

でも・・・なんだろう・・・この違和感。


あたしがこんなことを考えてるなんて知るよしもなし、美樹は携帯電話から着信音が鳴ったのを取った。

「もしもし・・・うん・・・うん、そう・・・2階だよ・・・うん・・・わかった・・・じゃあね。」

店内ということもあり、小声で話し、相手との話を、早めに切り上げた。

「今ダンナ見終えたみたいで、こっちに向かってるって。」
「・・・そっか。」

・・・だめだっ・・・なんか頭がおかしいっ・・・変な事考え過ぎて、グルグルしてる。

「パパくるの?」
「うん、もうすぐ来るよ。」
「わ〜い。」

・・・うれしそう。
そんなのぞみちゃんを見ていたら、少し気が紛れた。

・・・あ・・・そうだ・・・

「3月に・・・中学の同窓会・・・あるんだけど・・・」
「・・・中学・・か・・・あたしにとっての・・・中学は・・・暁じゃないからなぁ・・・」

―――っ・・・・・・そう・・だよね。
何聞いてんだ、あたし・・・

「智子は行くの?」
「え?・・・まだ、わかんない・・・」
「そっか。・・・でもさ・・・変な話・・・あたし暁中とは縁がありそうでさ・・・」
「・・・?」
「ダンナと親しくなったきっかけは、同じ暁中出身だったんだ。あたしは1年もいなかった中学だったけど。」

・・・・・・え?

「もしかしたら・・・智子知ってるかな〜・・・」

・・・・・・確か・・・1つ上で・・・同じ中学で・・・・・・っ!
まさかっ・・・名前・・・のぞみちゃんに聞いた時・・・名前っ・・・



「・・・木村 太郎っていうんだけど、知ってる?」



――――――っ!!



「あ〜っ、パパ〜っ!」
のぞみちゃんが、店内に入ってきた男性に向かって行った。

あたしはその人の顔を見た。



・・・―――!!
間違いない・・・――先輩だ・・・木村・・先輩・・・!


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