家に帰り、きょんちゃんからの茶封筒の中身に目を通した。 パッと見た感じ、のびのびと育てる方針の保育を目指しているみたい。
すぐに答えが出るわけでもなく、すぐにそれを机の引き出しにしまった。 そして、机に置きっぱなしのハガキに手をやる。
同窓会・・・どうしよう。 最初見た時は、欠席しようという思いが強かったけど・・・。 これもまた、あの夢のせいか? 変な期待が出てくる。
・・・っていうか、夢に対して、現実を重ねようとするなんて、どうかしてる。 ・・・はぁ〜・・・ほんと頭おかしいかも・・・
結局、またハガキを机にそのまま置いた。
翌週の休日―――
一人でデパートへ向かう。 お気に入りの化粧水が、ここにしか置いてないためだ・・・ま、一人でなんて慣れてる。
・・・のはずが・・・ついこの間まで、友達といつも楽しく過ごしていた気がして、今日はすごく淋しく感じた。
目的のものを購入し、デパ地下へと向かう。 ここのデパートに来ると、いつも買うクロワッサンのお店に行くためだ。 休日ということもあって、少し行列ができている。 珍しい光景でもないので、素直に最終列に並んだ。
家族連れも多く見られ、小さな子の姿も何人かいた。 そして、あたしの順番が来て支払いを済まし、商品を受け取る。 おつりをもらったのを、列から離れて財布に入れようとした。 がその時、ドンっと誰かがぶつかってきた。 その衝撃はさほどひどくなかったが、手元の小銭が、下へ落ちてしまった。
チャリチャリ〜ン・・・ その音と同時に、ぶつかった相手に目をやった。 3歳くらいの女の子が、あたしの足元に立ったままだった。
この子がぶつかったんだ・・・ そんなことを思っていたら、すぐさまその子の母親らしき人が走ってきた。
「――すみませんっ・・・こらっ、のぞみっ!勝手に離れちゃだめでしょ!?」 そのお母さんは子供を叱ると、下に落ちているお金を拾い始めた。 「あっ・・・いいですよ・・・」 あたしも一緒に拾い始める。 すぐに全部のお金を拾い終え、あたしへと手渡してきた。 「すみません、ありがとうございます・・・」 お礼を言いながら、そのお母さんに目をやる。
・・・・・・―――っ!!
「いえっ、こちらが悪いんですからっ・・・ほらっ、のぞみ、ちゃんとごめんなさいして?」 「だって〜・・・あそこにプリキュアが〜・・・」 その子は、先にあるキャラクターのデコレーションケーキを指差す。 「いいからっ・・・先にごめんなさいしてっ!」 「・・・・・・ごめんなさい・・・」 その子は、ほんとうに申し訳なさそうに謝ってきた。 「はい、よく言えました!・・・あのっ・・・ほんとすみませんでした。」 再び母親が謝る。 そして、その子の手を引いてこの場を離れようとした。
「・・・―――美樹?」
「――――――っ・・・」
美樹だった。 すぐにわかった。 変わってないから・・・中学の時から変わりなく・・・大人になった美樹がそこにいた。
「・・・・・・とも・・こ?」 自分の名前を呼ばれたことで、美樹もあたしの顔を確認した。
「・・・うん・・・そう。」 覚えててくれたんだ・・・それが正直うれしかった。
「・・・ほんとに、智子?」 美樹は、まだ信じられない様子だ。
「・・・ねぇ、ママ〜・・・」 先ほどの女の子が、美樹のスカートをクイクイっと引っ張る。 「あ・・・なに?」 「プリキュア〜っ!」 「あ〜、はいはい、わかったから。ちょっと待ってて。」
「・・・子供いるんだ。」 あたしは、美樹にしがみついている女の子に目をやる。
「あ〜、うん・・・もう最近ちょこまかと動いて・・・」 「クスクス・・・」
あたしは、女の子の目線に合わせしゃがみ込んだ。 「こんにちは。」 「〜〜っ//・・・こんにちは・・・」 恥ずかしそうに挨拶を交わしてくれた。 「お名前は?」 「・・・きむら・・・のぞみですっ。」 そっか・・・結婚して名前変わったんだよね。 「のぞみちゃんは、いくつですか?」 その質問に対し、指を4本立てて答えてくれた。 「・・・4さいっ。」 「クスクス・・・そっか〜、すごいしっかりしてるね〜。」 そう言いながら、のぞみちゃんの頭を撫でた。
「よかったね〜、のぞみ。ほめられてるんだよ〜。」 「えへへ・・・」 のぞみちゃんは、照れくさそうに笑う。
「・・・よくここに来るの?」 あたしは立ち上がり、美樹へと話を戻す。 「ううん、今日はたまたま。ダンナのつきあいでね、最上階で、ゴルフ道具のセールしてるからって・・・ほんといい迷惑だよね。」 「そうなんだ。」 「あたしたちは、見ててもつまんないから、他見てて・・・あっ・・・ねぇ、忙しい?」 「え?」 「・・・せっかくこうして会えたんだし・・・立ち話もなんだし、お茶でもどう?」 「――っ・・・うん。」
美樹の方から、そういう風に誘ってくれるなんて、意外だった。 でも、うれしかった。 あたしとなんて・・・会いたくないんじゃないかと思ってたし。
のぞみちゃんに、デザートを食べようと言うと、速攻で納得した。 プリキュアとやらは、もういいみたい。
2階にある喫茶店へと入る。 のぞみちゃんは、ミニパフェを注文してご機嫌そうだ。 美樹がのぞみちゃんに対し、いろいろ世話を掛ける姿を見て、あぁ〜・・・美樹はお母さんなんだ・・・なんて、当たり前のことを思ってしまった。
「それにしても・・・ほんとすごい久しぶりだよね〜・・・十・・・何年振りだ?」 美樹が指折り数える。
「・・・17年前だね。」 あたしがスッと答えた。
「17年前!?・・・そんなになるんだ〜・・・はぁ〜・・・自分が歳とるはずだよね〜。」 「クスクス・・・それはあたしだって同じこと。」 「あ・・・そっか、そうだよね・・・・・・智子は?」 「え?」 「・・・結婚・・・してるの?」 「ううん・・・残念ながらまだ。」 「そっか。」 「美樹はいつ結婚したの?」 「あたし?えっと〜・・・この子が4歳だから・・・5年経つか。」
それから、ダンナ様が1つ年上とか、飲み会で出会ったとか、結婚について、のぞみちゃんについて、話をした。 すると途中で、のぞみちゃんが会話に入ってきた。
「きょうね〜、あみちゃんち、おとまりするの〜。」 うれしそうに言ってくる。 「そうだね〜、初めて泊まるんだよね。」 美樹が微笑む。 「あみちゃんって・・・お友達?」 のぞみちゃんの歳で、友達の家に泊まるなんてありえないだろうけど、とりあえず聞いてみた。
「ううん、あたしの姉の子。のぞみにとっては、いとこになるの。」
――っ・・・姉・・・っ
「姉んとこ、3人兄妹でさ、しょっちゅう遊びに行ってるんだけど、泊まるのは初めてで、うれしいのと、ちょっと緊張があるみたい。」
・・・・・・っ
「のぞみ、たのしみ〜っ!」 「そっか〜、ママはちょっと心配。」 親子の会話が繰り広げられる中、だんだんあたしの鼓動は速くなってきた。
「・・・美樹に・・・お姉さんって・・・いたんだ・・・」
「うん6つ上でね。離れてるわりに大人げない人だよ。」
――っ!! 6つ・・・上・・・
「だれのこと〜?」 のぞみちゃんが再び会話に入る。 「ん?あみちゃんのお母さんのこと。」 「えっと〜・・・みかちゃん?」
――――っ・・・み・・か・・・?
「そうそう。・・・もう、姉ってば〜、おばさんと呼ばれたくないからって、名前で呼ばせようとしてんのよ。ほんっと、いいかげん歳わきまえてほしいわ。」
これは・・・・・・偶然? 美加さんのことなんて・・・あれは夢の中だったんでしょ? あたしは・・・知らないはずなのに。 ・・・・・・っ
そして、また良からぬ事を思ってしまった―――
「・・・お姉さんの・・・ダンナさんって・・・・・・いくつ?」
さらに鼓動が速くなる。 ・・・・・・っ
「姉のダンナ!?・・・たしか・・・2つ上だったかな?大学の時からの付き合いだって言ってたよ。」
・・・・・・2つ上。 なんか気が抜けた気がした。 予想していた相手ではなさそうだったから・・・
でも・・・なんだろう・・・この違和感。
あたしがこんなことを考えてるなんて知るよしもなし、美樹は携帯電話から着信音が鳴ったのを取った。
「もしもし・・・うん・・・うん、そう・・・2階だよ・・・うん・・・わかった・・・じゃあね。」
店内ということもあり、小声で話し、相手との話を、早めに切り上げた。
「今ダンナ見終えたみたいで、こっちに向かってるって。」 「・・・そっか。」
・・・だめだっ・・・なんか頭がおかしいっ・・・変な事考え過ぎて、グルグルしてる。
「パパくるの?」 「うん、もうすぐ来るよ。」 「わ〜い。」
・・・うれしそう。 そんなのぞみちゃんを見ていたら、少し気が紛れた。
・・・あ・・・そうだ・・・
「3月に・・・中学の同窓会・・・あるんだけど・・・」 「・・・中学・・か・・・あたしにとっての・・・中学は・・・暁じゃないからなぁ・・・」
―――っ・・・・・・そう・・だよね。 何聞いてんだ、あたし・・・
「智子は行くの?」 「え?・・・まだ、わかんない・・・」 「そっか。・・・でもさ・・・変な話・・・あたし暁中とは縁がありそうでさ・・・」 「・・・?」 「ダンナと親しくなったきっかけは、同じ暁中出身だったんだ。あたしは1年もいなかった中学だったけど。」
・・・・・・え?
「もしかしたら・・・智子知ってるかな〜・・・」
・・・・・・確か・・・1つ上で・・・同じ中学で・・・・・・っ! まさかっ・・・名前・・・のぞみちゃんに聞いた時・・・名前っ・・・
「・・・木村 太郎っていうんだけど、知ってる?」
――――――っ!!
「あ〜っ、パパ〜っ!」 のぞみちゃんが、店内に入ってきた男性に向かって行った。
あたしはその人の顔を見た。
・・・―――!! 間違いない・・・――先輩だ・・・木村・・先輩・・・!
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