「・・・ただいま。」
家に着いたのは、8時半頃だった。
バタバタバタっ・・・ すぐに母が駆けつけた。
「おかえりっ・・・・・・どうだった?」 母も、当然のように気にしていた。
「・・・・・・意識戻って・・・もう大丈夫だって。」
あたしの言葉を聞き、肩を撫でおろした。 「そう・・・よかったわね。」 「・・・うん、よかった。」 「・・・さ、お腹すいたでしょ。ご飯にする?それとも先お風呂入る?」 「うん・・・お風呂から先に入るわ。」 「そ・・・じゃあ、入って来なさい。」 母はそう言うと、台所へと戻った。
つくづく、母のありがたさがわかってしまう。 どんなに手のかかる子でも、我が子はかわいいって聞いたことあるけど・・・お母さんもそう思ってくれてるってことが、ひしひしと伝わってくる。
もし・・・あたしがこの先、子供を授かる時が来たら、母と同じようにできるんだろうか? 我が子の為にって・・・家族の為にって・・・ 必死になれるのだろうか?
・・・とても、想像できない。 そんなことを考えながら、お風呂に入った。
風呂からあがり、食卓に着く。 まだ父は帰宅しておらず、母も一緒に食べ始める。 食べずに待っていたんだ。
たわいもない会話をしていたが・・・母に聞いてみたい事があった。
「・・・ねぇ・・・お母さんはさ・・・」 話し始めるあたしに、母は箸を進めながら耳を傾けた。 「・・・・・・人生・・・やり直したい?」 「へ?・・・なにそれ?」 「・・・・・・今まで生きてきて・・・後悔することってあったでしょ?」 「・・・そうねぇ〜・・・数え切れないほどあるんじゃない?」 「そのことを・・・やり直したいって・・・思う?」 「・・・そうねぇ〜・・・」 母は、食べるのを止め考える。 「・・・・・・やり直したくは・・・ないかな?」 「――っ・・・・・・どうして?」 「どうしてって・・・そりゃあ、やり直せるもんだったら、やり直したいけど・・・・・・でも、今の現実を失いたくないから。」 「――――――っ!!」 「過去の嫌なことや、後悔してしまうことがあったからこそ・・・こうやって、今の生活があるんだって・・・そう思うわ。」 「・・・・・・」 「こうして、智子がここにいて、こういう会話をしていることだって、過去の積み重ねだし・・・父さんとの事だって、ここだけの話、何度後悔したか・・・」 母はそう言いながら、笑っている。 「・・・でも・・・今となっては、すべて良かったっ思える・・・思うようにしてるかな?まぁ、まだまだ先が長いんだから、また後悔することいっぱいあるだろうけど・・・でも、前見ていかなきゃね!」
その時、玄関のドアが開く音がした。 「・・・あっ・・・お父さん帰ってきたみたいね。さっき、母さんが言ったこと内緒よ。」 そう言いながら、父を出迎えに行った。
母の言葉が胸に響いた。 というか、衝撃を受けたって感じかな。
父も食卓につき、家族3人そろっての団欒が始まった。 こうして、夕飯一緒にするの・・・久しぶりかも。
部屋へ入り、ベットに飛び込む。 が、少し部屋が暑く感じ、窓を開けた。
夜風が入り込む・・・ そしてまた、ベットに寝ころんだ。
もう思い悩むことはなかった。 あたしの気持ちは、きれいさっぱりとしていた。
・・・明日からも・・・がんばろ。
素直にそう思えた。 そして、よほど疲れていたんだろう。 自然と目が閉じていって、すぐに、熟睡してしまった―――
・・・―――――― ―――――― ――――――・・・
・・・・・・ 「・・・――っ!・・・智子―っ!!」 ・・・ん?・・・う〜ん・・・ 「ご飯出来たわよ〜っ!!」 ・・・ごは・・んって・・・まだ・・・眠いよ〜・・・
あたしは寝返りをした。
・・・が、もうすぐ夏だというのに、肌寒い事を感じる。 ・・・・・・そっか・・・窓開けっ放しで寝たんだっけ? それにしても寒すぎ・・・
無意識に、布団を覆いかぶさる。
・・・・・・――っ!!
布団の厚さに違和感を感じる・・・
・・・・・・――ガバッ!!
一気に目が覚め、体を起こす。
・・・・・・ ・・・・・・
思考を働かせるが、いまいちピンと来ない。
が・・・自分の寝ていた恰好に、驚く−――
・・・あたし・・・だ・・・ ・・・大人の・・・あたし・・・
そう認識すると、鏡の前に立つ。
・・・・・・間違いない。 姿、形と・・・30歳のあたしだ。
ガチャ・・・ 「智子?・・・なに起きてたの?聞こえなかったの?夕飯できたわよ、早く降りてらっしゃい!」
母だ・・・当たり前だけど・・・今の母だ。
「・・・・・・わかった。」 まるで感情のこもってない、空返事になってしまった。
様子が変だと思ったのか、母は首を傾げながら、部屋を出て行った。
・・・・・・ あれは・・・なんだったの? ・・・夢?
時計に目をやると、時刻は7時を回っていた。 あたしが会社から帰ってきて、ベットに着いたのは・・・6時過ぎだっただろうか? だとしたら、1時間くらいしか寝てないということ・・・
すごい長い時間・・・寝てた気がするのに・・・
そして、いつもの夢を見た後とは違う感じ・・・ 残ってる・・・記憶が・・・物事が・・・リアルにあたしの頭の中に、残ってる―――
台所へ向かい、ガス台に立っている母の姿を捕らえる。 おかずをお皿に盛っているみたいだ。 父はまだ帰宅していない。
まだ頭がボーっとしていたが、炊飯器の横に置いてある茶碗を手に取った。 そして、当たり前のようにご飯をよそう。
「・・・・・・どうしたの?」 母があたしを見ている。 「・・・え?・・・何が?」 「・・・ごはんよそうって・・・珍しい事するのね。」 ・・・・・・え? 珍しいって・・・ここ最近はやってたじゃん・・・・・・―――っ!!
違う・・・・・・やってたのは・・・夢の中のあたしだ―――
「・・・さっき母さんが言ったこと、少しは聞く気になったみたいね。」 笑いながら母は食卓に着いた。
なに・・・これ・・・なんで? ・・・・・・―――っ
よそった茶碗をテーブルに置くと、ある事を思いついた。
「ねっ・・・アルバム・・・」 「・・・へ?」 「中学のっ・・・アルバムどこにある!?」
確かめたかった・・・あれが夢だったのか? ・・・そうでないのか・・・っ
「アルバムって・・・今?」 「そうっ・・・今すぐっ!」 「・・・・・・しょうがないわね〜・・・」 母は箸を置き、和室の部屋へと向かった。
そして押入れの中から、いくつかの段ボールを取り出す。 それぞれの箱に、‘‘幼稚園‘‘、‘‘小学校‘‘と書かれてある。
「・・・あ・・・あったわ・・・この中ね。」 ‘‘中学校‘‘と書かれた段ボールを取り出した。 ガムテープで止めてあるのをはがし、中身を探る。
―――っ!
アルバムを見つけ、急いで開く。
・・・3組・・・3組っ・・・
自分の3年の時のクラス写真を探す。
・・・あっ・・・あった・・・・・・―――!!・・・
そこに写っていたのは・・・間違いなく、あの頃のあたしだった。
ゲジ眉で・・・パッツン切りの髪型で・・・
そして、すぐ近くに載っていたひとみに目をやる。
次に・・・ケンちゃんを見つける。
・・・・・・変わってない・・・夢で見た・・・夢で会った・・・ひとみとケンちゃんだった・・・
「・・・懐かしくなったの?」 黙って見ているあたしに母が声をかけた。 「・・・・・・」 「・・・見終わったら、元に戻しておいてね。」 母はそう言うと、台所へと戻って行った。
次のページをゆっくりと捲った。 4組・・・きょんちゃんと・・・・・・松井君のクラスだ。
やっぱりそうだ・・・ちょっと前に会った、きょんちゃんと・・・松井君だっ・・・
・・・――っ・・・やだっ・・・変な感情も湧いてくる。
なんなのこれ・・・ わけ・・・わかんないっ・・・
ページを戻し、前のクラスに目をやる。
・・・田口君だ・・・やっぱり一緒。 ・・・・・・でも、 ・・・・・・美樹の写真は、 ・・・どこにも写ってなかった。
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