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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第96回   96
「・・・ただいま。」

家に着いたのは、8時半頃だった。

バタバタバタっ・・・
すぐに母が駆けつけた。

「おかえりっ・・・・・・どうだった?」
母も、当然のように気にしていた。

「・・・・・・意識戻って・・・もう大丈夫だって。」

あたしの言葉を聞き、肩を撫でおろした。
「そう・・・よかったわね。」
「・・・うん、よかった。」
「・・・さ、お腹すいたでしょ。ご飯にする?それとも先お風呂入る?」
「うん・・・お風呂から先に入るわ。」
「そ・・・じゃあ、入って来なさい。」
母はそう言うと、台所へと戻った。


つくづく、母のありがたさがわかってしまう。
どんなに手のかかる子でも、我が子はかわいいって聞いたことあるけど・・・お母さんもそう思ってくれてるってことが、ひしひしと伝わってくる。

もし・・・あたしがこの先、子供を授かる時が来たら、母と同じようにできるんだろうか?
我が子の為にって・・・家族の為にって・・・
必死になれるのだろうか?

・・・とても、想像できない。
そんなことを考えながら、お風呂に入った。



風呂からあがり、食卓に着く。
まだ父は帰宅しておらず、母も一緒に食べ始める。
食べずに待っていたんだ。

たわいもない会話をしていたが・・・母に聞いてみたい事があった。

「・・・ねぇ・・・お母さんはさ・・・」
話し始めるあたしに、母は箸を進めながら耳を傾けた。
「・・・・・・人生・・・やり直したい?」
「へ?・・・なにそれ?」
「・・・・・・今まで生きてきて・・・後悔することってあったでしょ?」
「・・・そうねぇ〜・・・数え切れないほどあるんじゃない?」
「そのことを・・・やり直したいって・・・思う?」
「・・・そうねぇ〜・・・」
母は、食べるのを止め考える。
「・・・・・・やり直したくは・・・ないかな?」
「――っ・・・・・・どうして?」
「どうしてって・・・そりゃあ、やり直せるもんだったら、やり直したいけど・・・・・・でも、今の現実を失いたくないから。」
「――――――っ!!」
「過去の嫌なことや、後悔してしまうことがあったからこそ・・・こうやって、今の生活があるんだって・・・そう思うわ。」
「・・・・・・」
「こうして、智子がここにいて、こういう会話をしていることだって、過去の積み重ねだし・・・父さんとの事だって、ここだけの話、何度後悔したか・・・」
母はそう言いながら、笑っている。
「・・・でも・・・今となっては、すべて良かったっ思える・・・思うようにしてるかな?まぁ、まだまだ先が長いんだから、また後悔することいっぱいあるだろうけど・・・でも、前見ていかなきゃね!」

その時、玄関のドアが開く音がした。
「・・・あっ・・・お父さん帰ってきたみたいね。さっき、母さんが言ったこと内緒よ。」
そう言いながら、父を出迎えに行った。

母の言葉が胸に響いた。
というか、衝撃を受けたって感じかな。

父も食卓につき、家族3人そろっての団欒が始まった。
こうして、夕飯一緒にするの・・・久しぶりかも。



部屋へ入り、ベットに飛び込む。
が、少し部屋が暑く感じ、窓を開けた。

夜風が入り込む・・・
そしてまた、ベットに寝ころんだ。



もう思い悩むことはなかった。
あたしの気持ちは、きれいさっぱりとしていた。

・・・明日からも・・・がんばろ。

素直にそう思えた。
そして、よほど疲れていたんだろう。
自然と目が閉じていって、すぐに、熟睡してしまった―――

・・・――――――
――――――
――――――・・・






・・・・・・
「・・・――っ!・・・智子―っ!!」
・・・ん?・・・う〜ん・・・
「ご飯出来たわよ〜っ!!」
・・・ごは・・んって・・・まだ・・・眠いよ〜・・・

あたしは寝返りをした。

・・・が、もうすぐ夏だというのに、肌寒い事を感じる。
・・・・・・そっか・・・窓開けっ放しで寝たんだっけ?
それにしても寒すぎ・・・

無意識に、布団を覆いかぶさる。

・・・・・・――っ!!

布団の厚さに違和感を感じる・・・

・・・・・・――ガバッ!!

一気に目が覚め、体を起こす。

・・・・・・
・・・・・・

思考を働かせるが、いまいちピンと来ない。

が・・・自分の寝ていた恰好に、驚く−――



・・・あたし・・・だ・・・
・・・大人の・・・あたし・・・



そう認識すると、鏡の前に立つ。



・・・・・・間違いない。
姿、形と・・・30歳のあたしだ。


ガチャ・・・
「智子?・・・なに起きてたの?聞こえなかったの?夕飯できたわよ、早く降りてらっしゃい!」

母だ・・・当たり前だけど・・・今の母だ。

「・・・・・・わかった。」
まるで感情のこもってない、空返事になってしまった。

様子が変だと思ったのか、母は首を傾げながら、部屋を出て行った。


・・・・・・
あれは・・・なんだったの?
・・・夢?

時計に目をやると、時刻は7時を回っていた。
あたしが会社から帰ってきて、ベットに着いたのは・・・6時過ぎだっただろうか?
だとしたら、1時間くらいしか寝てないということ・・・

すごい長い時間・・・寝てた気がするのに・・・

そして、いつもの夢を見た後とは違う感じ・・・
残ってる・・・記憶が・・・物事が・・・リアルにあたしの頭の中に、残ってる―――


台所へ向かい、ガス台に立っている母の姿を捕らえる。
おかずをお皿に盛っているみたいだ。
父はまだ帰宅していない。

まだ頭がボーっとしていたが、炊飯器の横に置いてある茶碗を手に取った。
そして、当たり前のようにご飯をよそう。

「・・・・・・どうしたの?」
母があたしを見ている。
「・・・え?・・・何が?」
「・・・ごはんよそうって・・・珍しい事するのね。」
・・・・・・え?
珍しいって・・・ここ最近はやってたじゃん・・・・・・―――っ!!

違う・・・・・・やってたのは・・・夢の中のあたしだ―――

「・・・さっき母さんが言ったこと、少しは聞く気になったみたいね。」
笑いながら母は食卓に着いた。



なに・・・これ・・・なんで?
・・・・・・―――っ

よそった茶碗をテーブルに置くと、ある事を思いついた。

「ねっ・・・アルバム・・・」
「・・・へ?」
「中学のっ・・・アルバムどこにある!?」

確かめたかった・・・あれが夢だったのか?
・・・そうでないのか・・・っ

「アルバムって・・・今?」
「そうっ・・・今すぐっ!」
「・・・・・・しょうがないわね〜・・・」
母は箸を置き、和室の部屋へと向かった。

そして押入れの中から、いくつかの段ボールを取り出す。
それぞれの箱に、‘‘幼稚園‘‘、‘‘小学校‘‘と書かれてある。

「・・・あ・・・あったわ・・・この中ね。」
‘‘中学校‘‘と書かれた段ボールを取り出した。
ガムテープで止めてあるのをはがし、中身を探る。

―――っ!

アルバムを見つけ、急いで開く。

・・・3組・・・3組っ・・・

自分の3年の時のクラス写真を探す。

・・・あっ・・・あった・・・・・・―――!!・・・



そこに写っていたのは・・・間違いなく、あの頃のあたしだった。



ゲジ眉で・・・パッツン切りの髪型で・・・

そして、すぐ近くに載っていたひとみに目をやる。

次に・・・ケンちゃんを見つける。

・・・・・・変わってない・・・夢で見た・・・夢で会った・・・ひとみとケンちゃんだった・・・


「・・・懐かしくなったの?」
黙って見ているあたしに母が声をかけた。
「・・・・・・」
「・・・見終わったら、元に戻しておいてね。」
母はそう言うと、台所へと戻って行った。


次のページをゆっくりと捲った。
4組・・・きょんちゃんと・・・・・・松井君のクラスだ。

やっぱりそうだ・・・ちょっと前に会った、きょんちゃんと・・・松井君だっ・・・

・・・――っ・・・やだっ・・・変な感情も湧いてくる。

なんなのこれ・・・
わけ・・・わかんないっ・・・


ページを戻し、前のクラスに目をやる。

・・・田口君だ・・・やっぱり一緒。
・・・・・・でも、
・・・・・・美樹の写真は、
・・・どこにも写ってなかった。


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