―――――― ―――――― ――――――
バタバタバタッ・・・ どれくらい経ったんだろう・・・やけに廊下が騒がしい。 ナースの人たちが走っているんだろうか? ・・・・・・ ・・・走ってる?
なにかあって・・・?
・・・―――っ!!
あたしと美樹はとっさに立ち上がり、待合室へと向かう。
すでに美樹のご両親が廊下に出ていた。 そして、担当医であろう人と話をしている。
すぐに話を済ませ、先生はICUへと入って行った。
「お母さんっ・・・!」 美樹は急いでお母さんの所へ向かう。 「・・・なに?・・・・・・なんなの?」 「・・・・・・」
美樹のお母さんは、また泣いていた。 そのせいで、なかなか言葉にならない様子だ。
すると、美樹のお父さんが、美樹を抱き寄せた。 そして・・・・・・
「・・・・・・たんだ・・・・・・美加は・・・っ」
その声も泣き声に変わり、まともに聞き取れない。
「・・・え?・・・なに?」
「・・・・・・たすかった・・・んだよっ・・・意識がっ・・・戻ったって・・・っ」
―――っ!! ・・・・・・ほん・・とに・・・? ほんとにっ・・・!?
「・・・・・・ほんと?・・・ほんとだね・・・?・・・っ・・・」 美樹は力が抜けるように、呟いた。 そして、そのせいで涙腺も弱まったんだろう。 次から次へと涙がこぼれていった。
しばらくして、先ほどの担当医が出てきた。 経過は診なくてはいけないけど、危険な状態は切り抜けたみたいだ。 先生からの簡単な説明の後、家族だけの面会が許された。
あたしは待合室で待っていようと思ったが・・・
「・・・智子ちゃん・・・君も会ってあげてくれ。」 美樹のお父さんが声を掛けてきた。
「え・・・でもっ・・・」 さすがにそれは、と思い断ろうとしたけど・・・ 「・・・智子。あたしからもお願いっ。おねーちゃんも喜ぶよ。」 美樹がやっと笑顔になって言ってくれた。 「・・・・・・ありがと・・・」
こうして、家族の承諾を得てという形で、あたしも特別に面会させてもらえた。
美加さんは、いろいろいっぱい、医療器具がつけられていた。 無理もない・・・先ほどまで、生死を彷徨ってたんだから。
見守るみんなに気づいて口を開く。
「・・・おと・・さん・・・おか・・さん・・・みき・・・」 その声を聞き、また実感が湧く。 美加さんは生きてるんだって・・・
「・・・っ・・・美加っ・・・よく・・・頑張ったわね・・・っ・・・」 美樹のお母さんは、美加さんの手をしっかりと握った。
「あた・・し・・・なんか・・・よく・・おぼえて・・なくて・・・」 「当たり前だっ・・・意識なくしてたんだから・・・ほんと・・・助かってよかったっ・・・」 美樹のお父さんも声を詰まらせる。
「おねーちゃんっ!・・・もうっ・・・心配したんだからねっ・・・」 美樹は半分怒り口調で訴えた。 それが、気持ちをすごい表していた。
「・・・ごめ・・ん・・・・・・――っ」 美加さんの視線の先に、あたしを捕らえた。 「・・・とも・・こちゃん・・・?」 一歩後ろの方で控えていたあたしは、美加さんに近づいた。 「・・・智子も、おねーちゃんが心配で、駆けつけてくれたんだよっ。」 美樹があたしの腕に絡まってきた。 「・・・そっか・・・・・・ありがと・・・ね・・・」 そう言って、笑ってくれた。
あたしは首を横に振り、無言で応えた。
「・・・あれっ・・・?・・・そういえば、リョーマ君戻ってきてない。」
――っ・・・今頃になって、いるはずの姿が見えない事に気付く。
「・・・りょう・・まも・・・きてる・・の?」
美加さんは弱々しく聞き直した。 「あ・・うん・・・のど渇いたからって、下の自販機のとこ行ったっきりだった。あたし、呼んでくるねっ。」 美樹が行こうとしたけれど、あたしはそれを止めた。
「美樹っ・・・・・・あたしが呼んでくるから・・・美樹はここにいてあげて。」
「え・・・あぁ・・・うん、わかった。」 美樹は、戸惑いながらも承諾してくれた。
ベットから離れ、この家族を眺める。 ・・・笑ってる・・・みんな・・・笑ってる・・・ ほんと・・・良かった・・・
そして1階の、自販機コーナーへと向かう。 ここも人気がなく静かだ。
設けてあるベンチに、ひとりポツンと座っている姿を捕らえる。
「・・・・・・松井君。」
「―――っ・・・なん・・で?」
いるはずのないあたしに驚いている。
近づいて、ふと手に持っている紙コップが目に入る。 中身はほとんど減っていない。 買ってはみたものの、とても口にすることができなかったのか・・・飲む事を忘れていたのか・・・どっちにしろ、彼の心情が見えてくる。
「あたしも気になって来たの。」 「・・・そっか・・・」 「そんなことより・・・早く上に行って・・・」 「――っ・・・え?」 「美加さん・・・意識戻ったよ。」 「―――っ!!・・・・・・マジ・・・で?」 思わず握り締めたせいで、コップの中身がこぼれた。
「――っ・・・あぁっ・・・もう、何してんの?」 あたしはそう言いながら、ポケットからハンカチを取り出し松井君の濡れた手を拭いた。 「あ・・・ごめん・・・」 「・・・・・・下は、あたしが拭いておくから・・・・・・早く行って?」 そう言い、松井君から飲み物を取り上げた。 「・・・――っ・・・サンキュ・・・」 松井君はそう言うと、最初は歩いていたが、だんだん早足になり、そのうち・・・走って行った。
・・・さて・・・とっ。
とりあえず、こぼれた飲み物と、残っている物を片付けた。 そして、再び2階へ上がり、待合室を覗いた。
いないかと思ったけど、期待通りにいた美樹のご両親に声を掛ける。
「あのっ・・・」 「・・・あぁっ・・・ほんと今日はありがとうね。」 美樹のお母さんにもやっと笑顔が戻っていた。
「いえ・・・こちらこそ、急に来てすみませんでした・・・あたし、失礼しますね。」 「えっ?・・・もう?」 「あ・・はい。母にもあまり長居しないように言われてるんで・・・」 「・・・そういえば、ここまでどうやって来たんだい?・・・っもしかして、お母さん待って見えるのか?」 美樹のお父さんが、聞いてきた。 「いえっ・・・送るだけ送ってもらって・・・帰りはタクシーで帰るよう言われてるんで・・・」 「そうか・・・ほんとすまなかったね。」 「そんなっ・・・ほんと気にしないでください。」
「・・・智子ちゃんっ・・・」 美樹のお母さんがカバンを探りながら近づいてくる。 そして財布から1万円札を取り出した。 「これっ・・・タクシー代、受けとって。」 差し出されたお金を思わず手で押し戻した。
「困りますっ・・・あたしが勝手に来たくて来たのに・・・受け取れませんっ。」 「そう言わずにお願いっ!」 断るあたしの手を握り、お金を持たせる。
「・・・でもっ・・・」 「・・・・・・お金で済むことじゃないけど・・・ほんと今日のことは感謝してるんだ・・・せめてもの気持ちとして、これくらい受け取ってくれ・・・」 美樹のお父さんも、促してきた。
「・・・・・・」 これ以上断ることもできず・・・結局タクシー代を頂いてしまった。
そして、そのまま下へ降り、出口へと向かう。 きっとこの時間帯でも、病院だからタクシーは外で待ってるだろう。
・・・・・・ ・・・・・・遠くから足音が聞こえてくる。 誰かが走っているんだろうか? ・・・・・・やがて、それは近付いてきた。
「・・・・・・――山田っ!!」
―――っ!!
辺りが静かなせいか、余計に呼び止める声が響いた。
立ち止まって振り返るあたしに・・・松井君は近付いてきた。
|
|