なんかの本に、”人生の中で、モテ期は3回やってくる”って事が書いてあった。
それを見たときのあたしは、アホみたいに期待してた・・・
あたしのモテ期の1回目は、高一の時。 名前も知らなくて話もしたことない男の子に、好意を持たれてると耳に入り、気になるようになり、自分も好きかも・・・なんて流れみたいなもんになり、告白されて初めての交際をした。 結果から言うと、続いたのは3ヶ月。 特に恋人らしいことは何一つなく、自分の気持ちに自信が持てなくなって別れを告げ、相手もすんなり承諾してくれた。
2回目は短大に入って、2コ上の先輩からの告白だ。 大人の仲間入りと勘違いした、あのお付き合い。 あの彼とは・・・半年は続いたかな? 結局、最初のつきあいと同じで、自信が失くなり別れを告げ相手もすんなり承諾。
でも・・・それがモテ期というんだろうか? 同じ時期に何人からか好意を持たれるのが、本来のモテ期なんじゃないだろうか?
だとしたら、あたしの本当のモテ期は・・・
「おまえさ・・・なんか俺の事避けてる?」 「・・・えっ・・・なに・・が?」 対面している体勢から逃れるため、横を向いた。 「・・・・・・俺、なんかした?」 ケンちゃんはなおも聞いてくる。 「・・・別にっ・・・避けてもないし・・・ケンちゃんからなんかされた覚えもないよ。」 なんとかこの場は普通に返したかった。 「ふ〜ん・・・じゃあ・・・・・・リョーマとまたなんかあったの?」
―――っ!!
なんでっ・・・松井君が出てくんの?
「・・・・・・ないよ、別に。」 ケンちゃんからの視線はまだ感じられる。
〜〜〜っこの空気・・・耐えらんないっ・・・
「・・・人の事よりっ、自分はどうなのっ?」 「は?・・・なにがだよ。」
―――しまったっ・・・真美ちゃんとのこと、ほっといた方がいいって言われてたのに・・・
でも言い出した以上、あたしの口は止まらなった。
「真美ちゃんと・・うまくいってんの?」 「・・・そんなのっ・・・当たり前だろ?」 「ちゃんと・・・向き合ってんの?」 「・・・・・・向き合ってるよ・・・」 「自分の気が向いた時だけ、なんて事になってない?」 「・・・・・・ねーよ・・・」 「じゃあ・・・ちゃんと好きになったって・・・ことだよね?」 「――っ・・・」 ケンちゃんの視線は逸らされた。
こんなこと聞くなんて、あたしも最低だ。 人から聞いた話とはいえ、触れてほしくないだろう話題に触れるなんて。 それでも、止まらないあたし・・・
「お土産だって、ちゃんと買った?・・・楽しみにしてんじゃない?・・・たまにデートするだけが、彼女じゃないんだよ?そういうことわかって――っ」
バンッ!! 「―――っ!!」
ケンちゃんが、手を壁に叩きつけていた。
・・・・・・ しまった・・・・言い過ぎたかも・・・―――っ
「・・・――ごめんっ・・・・・・あたしが・・口出すことじゃ・・ないよね。」 なんとなく、嫌な流れになりそうに感じ、気を落ち着かせようと思った。 けど・・・・・・それはすでに遅かった・・・
「・・・おまえが・・・言うなよ・・・」
――――――!!
俯いていたケンちゃんはゆっくりと顔を上げた。 そして、目が合う・・・ 逸らしたいのに・・・それが、できないっ・・・
「・・・山田の言う通り。」
・・・・・・え?
「・・・先が見えてたのに・・・突っ走った。」
・・・・・・っ
「でも・・・そうするしか・・なかったんだよ・・・」
・・・・・・やばいっ
「そうすることで・・・諦められるって・・・・・・でも・・・」
・・・この先は・・・聞いちゃ・・いけない・・・っ
「これ以上・・・自分の気持ち・・・誤魔化せねーよ・・・」
ケンちゃんが一歩近づき、二人の間の距離が縮まる。
そのことで、やっと視線を逸らすことができた。
―――っ・・・
「・・・・・・俺は・・・前から・・・ずっと前から・・・――っ」
―――――― ―――――― ――――――っ
「・・・・・・あれ?・・・なにやってんの?」
「「―――!!」」 あたしとケンちゃんはそろって、声の主に目をやった。
田口君だ。 向こうの階段から足を引きづって歩いて来る。 「・・・どうしたの?」 そして、その後ろにもう一人・・・・・・きょんちゃんだ。
「階段降りてたら、なんか音がしたからさ、何かと思って見に来たんだけど・・・おまえらだった?」
この田口君の様子からして、話し声は聞かれていない感じだ。
「・・・お・・おーっ、そうそう!なんか変な虫がいてさ・・・ちょうど壁に止まったから、叩いたんだよっ・・・でも・・・逃げられたかな〜・・・」
そう言いながら、辺りを見回す。 ケンちゃんはいつものような調子で、この場を誤魔化そうとしているんだ。
「そっか〜・・・っていうか・・・こんなとこで何してんの?」 「えっ・・・」 当然の疑問だろう。 あたしとケンちゃんがこんなところにいる意味がわからない。 普通に考えて・・・
「・・・松井君は?今日は会わないの?」 ―――!! きょんちゃんはなんの悪気もなく、これまた普通に出てくる疑問を口にした。
「・・・そうなんだよっ・・・こいつら、またなんか揉めたみたいで。」
――っ・・・ケンちゃん・・・? 何言い出すの・・・?
「またかよ・・・ほんと世話の焼ける二人だな〜・・・」 田口君は何の疑いもせず、話を続ける。 「んで?今回の原因は何?」 その質問はあたしに向けられた。 「・・・え?・・・いや・・・その・・・」
なんて言ったらいいの? ケンちゃんが原因なんて・・・言える訳ないし・・・
「・・・あ〜・・・たいした事じゃないんだよ。聞くだけムダムダ!それに・・・山田も俺に相談して、スッキリしたみたいだし。なっ!?」
さっきまでの重い空気を感じさせない表情だ。 そのことに、あたしは話を合わせざるを得なかった。
「・・・・・・うん。」
「・・・なら、いいけどさ・・・それより、早く部屋戻った方がいいぞ。時間も時間だしさ、さっき他の奴らに聞いたんだけど、先公らホテル中見回り始めてるらしいから、ここにも来るんじゃね?」 田口君はそう言いながら、辺りを見回した。 「そっか・・・じゃあ戻るか。行くぞ!」 ケンちゃんは田口君の腕を引っ張って歩きだした。 「おいっ・・・ちょっ、もっとゆっくり歩けよ!」 引きづりながらも引っ張られ先へ進む。
あたしときょんちゃんも少し後ろから続いた。
「・・・智子?」 きょんちゃんが覗き込んできた。 「・・・え?」 「・・・どした?・・・やっぱ松井君とのこと、なんか気になるの?」 「――っ・・・ううん、なんでもないよ・・・早く行こ。」 「・・・あ・・・うん。」 きょんちゃんは気になりながらも、それ以上踏み込んでこなかった。
決して悟られてはいけない問題だ。 みんなが気まずくなってしまうに決まってる。 ・・・これ以上、事を大きくしちゃだめだ・・・
修学旅行最終日。 やっぱりあたしとケンちゃんが会話を交わすことはなかった。 そして松井君とも・・・
帰りのバスの中は、みんな旅疲れのせいもあって、静まり返っていた。
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