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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第90回   90

なんかの本に、”人生の中で、モテ期は3回やってくる”って事が書いてあった。

それを見たときのあたしは、アホみたいに期待してた・・・


あたしのモテ期の1回目は、高一の時。
名前も知らなくて話もしたことない男の子に、好意を持たれてると耳に入り、気になるようになり、自分も好きかも・・・なんて流れみたいなもんになり、告白されて初めての交際をした。
結果から言うと、続いたのは3ヶ月。
特に恋人らしいことは何一つなく、自分の気持ちに自信が持てなくなって別れを告げ、相手もすんなり承諾してくれた。

2回目は短大に入って、2コ上の先輩からの告白だ。
大人の仲間入りと勘違いした、あのお付き合い。
あの彼とは・・・半年は続いたかな?
結局、最初のつきあいと同じで、自信が失くなり別れを告げ相手もすんなり承諾。

でも・・・それがモテ期というんだろうか?
同じ時期に何人からか好意を持たれるのが、本来のモテ期なんじゃないだろうか?

だとしたら、あたしの本当のモテ期は・・・



「おまえさ・・・なんか俺の事避けてる?」
「・・・えっ・・・なに・・が?」
対面している体勢から逃れるため、横を向いた。
「・・・・・・俺、なんかした?」
ケンちゃんはなおも聞いてくる。
「・・・別にっ・・・避けてもないし・・・ケンちゃんからなんかされた覚えもないよ。」
なんとかこの場は普通に返したかった。
「ふ〜ん・・・じゃあ・・・・・・リョーマとまたなんかあったの?」

―――っ!!

なんでっ・・・松井君が出てくんの?

「・・・・・・ないよ、別に。」
ケンちゃんからの視線はまだ感じられる。

〜〜〜っこの空気・・・耐えらんないっ・・・

「・・・人の事よりっ、自分はどうなのっ?」
「は?・・・なにがだよ。」

―――しまったっ・・・真美ちゃんとのこと、ほっといた方がいいって言われてたのに・・・

でも言い出した以上、あたしの口は止まらなった。

「真美ちゃんと・・うまくいってんの?」
「・・・そんなのっ・・・当たり前だろ?」
「ちゃんと・・・向き合ってんの?」
「・・・・・・向き合ってるよ・・・」
「自分の気が向いた時だけ、なんて事になってない?」
「・・・・・・ねーよ・・・」
「じゃあ・・・ちゃんと好きになったって・・・ことだよね?」
「――っ・・・」
ケンちゃんの視線は逸らされた。

こんなこと聞くなんて、あたしも最低だ。
人から聞いた話とはいえ、触れてほしくないだろう話題に触れるなんて。
それでも、止まらないあたし・・・

「お土産だって、ちゃんと買った?・・・楽しみにしてんじゃない?・・・たまにデートするだけが、彼女じゃないんだよ?そういうことわかって――っ」

バンッ!!
「―――っ!!」

ケンちゃんが、手を壁に叩きつけていた。

・・・・・・
しまった・・・・言い過ぎたかも・・・―――っ

「・・・――ごめんっ・・・・・・あたしが・・口出すことじゃ・・ないよね。」
なんとなく、嫌な流れになりそうに感じ、気を落ち着かせようと思った。
けど・・・・・・それはすでに遅かった・・・



「・・・おまえが・・・言うなよ・・・」



――――――!!



俯いていたケンちゃんはゆっくりと顔を上げた。
そして、目が合う・・・
逸らしたいのに・・・それが、できないっ・・・



「・・・山田の言う通り。」

・・・・・・え?

「・・・先が見えてたのに・・・突っ走った。」

・・・・・・っ

「でも・・・そうするしか・・なかったんだよ・・・」

・・・・・・やばいっ

「そうすることで・・・諦められるって・・・・・・でも・・・」

・・・この先は・・・聞いちゃ・・いけない・・・っ

「これ以上・・・自分の気持ち・・・誤魔化せねーよ・・・」

ケンちゃんが一歩近づき、二人の間の距離が縮まる。

そのことで、やっと視線を逸らすことができた。

―――っ・・・

「・・・・・・俺は・・・前から・・・ずっと前から・・・――っ」

――――――
――――――
――――――っ



「・・・・・・あれ?・・・なにやってんの?」



「「―――!!」」
あたしとケンちゃんはそろって、声の主に目をやった。

田口君だ。
向こうの階段から足を引きづって歩いて来る。
「・・・どうしたの?」
そして、その後ろにもう一人・・・・・・きょんちゃんだ。

「階段降りてたら、なんか音がしたからさ、何かと思って見に来たんだけど・・・おまえらだった?」

この田口君の様子からして、話し声は聞かれていない感じだ。

「・・・お・・おーっ、そうそう!なんか変な虫がいてさ・・・ちょうど壁に止まったから、叩いたんだよっ・・・でも・・・逃げられたかな〜・・・」

そう言いながら、辺りを見回す。
ケンちゃんはいつものような調子で、この場を誤魔化そうとしているんだ。

「そっか〜・・・っていうか・・・こんなとこで何してんの?」
「えっ・・・」
当然の疑問だろう。
あたしとケンちゃんがこんなところにいる意味がわからない。
普通に考えて・・・

「・・・松井君は?今日は会わないの?」
―――!!
きょんちゃんはなんの悪気もなく、これまた普通に出てくる疑問を口にした。

「・・・そうなんだよっ・・・こいつら、またなんか揉めたみたいで。」

――っ・・・ケンちゃん・・・?
何言い出すの・・・?

「またかよ・・・ほんと世話の焼ける二人だな〜・・・」
田口君は何の疑いもせず、話を続ける。
「んで?今回の原因は何?」
その質問はあたしに向けられた。
「・・・え?・・・いや・・・その・・・」

なんて言ったらいいの?
ケンちゃんが原因なんて・・・言える訳ないし・・・

「・・・あ〜・・・たいした事じゃないんだよ。聞くだけムダムダ!それに・・・山田も俺に相談して、スッキリしたみたいだし。なっ!?」

さっきまでの重い空気を感じさせない表情だ。
そのことに、あたしは話を合わせざるを得なかった。

「・・・・・・うん。」

「・・・なら、いいけどさ・・・それより、早く部屋戻った方がいいぞ。時間も時間だしさ、さっき他の奴らに聞いたんだけど、先公らホテル中見回り始めてるらしいから、ここにも来るんじゃね?」
田口君はそう言いながら、辺りを見回した。
「そっか・・・じゃあ戻るか。行くぞ!」
ケンちゃんは田口君の腕を引っ張って歩きだした。
「おいっ・・・ちょっ、もっとゆっくり歩けよ!」
引きづりながらも引っ張られ先へ進む。

あたしときょんちゃんも少し後ろから続いた。

「・・・智子?」
きょんちゃんが覗き込んできた。
「・・・え?」
「・・・どした?・・・やっぱ松井君とのこと、なんか気になるの?」
「――っ・・・ううん、なんでもないよ・・・早く行こ。」
「・・・あ・・・うん。」
きょんちゃんは気になりながらも、それ以上踏み込んでこなかった。

決して悟られてはいけない問題だ。
みんなが気まずくなってしまうに決まってる。
・・・これ以上、事を大きくしちゃだめだ・・・

修学旅行最終日。
やっぱりあたしとケンちゃんが会話を交わすことはなかった。
そして松井君とも・・・

帰りのバスの中は、みんな旅疲れのせいもあって、静まり返っていた。


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