20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:あの頃へ 作者:こまち

第9回   いじめ
「お〜、悪いな。入れ。」

目的室の扉をノックすると、尾上先生が出迎えた。

呼ばれたのは、あたし、きょんちゃん、北田弘子、高橋美穂、橘まどか、森下夏美。

1年の時、よくつるんでた仲間だ。
クラスの中では、明るいというか、よく騒いでるような集まりだった。
あたしときょんちゃんは率先してという感じではなく、呼ばれたら集合。
何をするのにも後ろにくっついてると言った方がわかりやすい。

特にあたしはそうだった。
そうすることで自分を守っていたのだ。
この北田弘子に嫌われないように・・・

チラッと弘子の方を見た。
これから聞かれることになんの不安もなく、弘子は平然としていた。

「まぁ、座れや。」

適当に席につき、先生もあたしたちに対面して座った。

「・・・実はな、おまえたちにちょっと聞きたいことがあってな・・・。」

言いにくそうに話し始めた。
それもそのはず、クラスでおこっている、いじめについて聞きたいからだ。

「・・・その・・・山下についてなんだが・・・」

・・・山下・・・美樹。

ここ2週間ぐらい休んでいる。
このグループによるいじめによって・・・

新学期の頃は、あたしと出席番号が前後ということで、すぐに仲良くなった。
もちろんあたしと仲良くなったということは、きょんちゃんともすぐにうちとけた。

事の始まりは些細なこと。

あたしたちの集団と常に一緒にいるわけではないが、雑談などにはたまに混じっていた。
だからそれぞれの好きな人もなんとなくわかっていた。
休み時間に山下美樹はある男の子と廊下で話をしていた。
同じ小学校出身ということもあって、冗談交じりに笑いながら。
しょっちゅうという訳ではなかった。
でもたまたま偶然見かけた高橋美穂にとっては、裏切りになってしまったのだ。
彼女はその男の子に片思いをしていたから。
友達の好きな子知っておきながら、その子の前で楽しくおしゃべりなんて、この年頃の女の子にとっては、最強の裏切りに値していた。
それを知った弘子は召集をかけた。
そして今から山下美樹をシカトすること、と告げた。
いきなりの事で、あたしときょんちゃんは戸惑った。
でも有無を言わせない圧力をわかっていた。
これに従わなくちゃ、次は自分の番だ・・・と。
その日からいじめが始まり、当の本人には訳がわからなかった。
シカトは次第にクラス全体に広がり、関係ない子たちまでもが山下美樹を避けた。
あたしらの時のいじめのスタイルは、現代のようなお金を巻き上げるとか暴力といったひどい内容ではなかった。
ただただシカト。
たまに名前は言わずに悪口をわざと本人目の前で言うことだった。
それでも同じいじめには変わりない。
されてる方は精神的にやられてしまう。
一ヶ月たった頃、山下美樹は休むようになった。
強い者に媚びていたあたしも、2年の時に短期間だがいじめられた経験がある。
理由なんて今となっては覚えてはいないけど、いやな思いは17年経った今でも心に残っている。
やった方は忘れるかもしれないけど、やられた方はいつまでも忘れられないものだ。

「病気で休んでる訳ではないんだ。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

無言のあたしらに先生は続けた。

「・・・学校に来たくないらしい。先生はクラスでもめ事あったのかと思って、とりあえずおまえらに聞いてみようと呼んだんだが・・・」

・・・あの頃は緊張してて先生の聞き出そうとしてたことが、最初は何なのかわからなかったけど、今改めて聞くと、とりあえずではなく、明らかにあたしたちがいじめてたことを認めさせたかったんだとわかってしまう。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

「何か知らないか?些細なことでもいいから。・・・中田、どうだ?」

先生はきょんちゃんに聞いてきた。

「・・・・・・」

下を俯いたまま何も言えない。
よりによって彼女に聞くとは・・・。

きょんちゃんは山下美樹に相談されていた。
いじめが始まってすぐのことみたいで、その時は「わからない」と答えていたみたいだけど。
でもそのうち相談相手にもシカトされて相当ショックだっただろう。

きょんちゃんはすごく後悔していた。
昨日の日記には、山下美樹に謝りたいと、そして自分の弱さを責めていた事が書かれていた。

「・・・じゃあ、北田は?」

先生は弘子に聞き直した。

「・・・さぁ?」
相変らず平然と答える。

「さぁ?って・・・おまえら仲良くなかったか?」
「そんなに仲良くないですよ。ねぇ?」

弘子はそう言ってみんなに同意を求めた。

「うん、仲良くないね〜。」

すぐに答えたのは、高橋美穂だった。
そしてあたしときょんちゃん以外の二人もうなずいた。

「っていうか、何であたしらに聞くんですか?関係ないのに。」

同意が得られたので、途端に強きな態度が出始めた。

「そうそう。他の子たちに聞いてくださいよ。」
「・・・関係ないって・・・学校に来たくないって言ってるんだぞ、山下は。クラスメイトなら心配じゃないのか?」

少し先生も態度が変わり始めた。

「だって〜、こっちだって訳わかんないもん、心配のしようがないじゃん。」
「そうだよね〜。」
「・・・ご飯も食べれないって言ってるんだぞ。部屋からも出たくないって。それ聞いても何とも思わないのか?」
「・・・思わないよね〜。」

弘子は半笑いで言った。

この発言に先生もきょんちゃんも固まってしまった。
この人たちは絶対にいじめてたことを白状するわけもなく、悪びれることもないだろう。
そう確信した先生は、立ち上がった。

「・・・そうか・・・わかった。もう教室戻っていいぞ。」

そして先にここから離れた。
バタンッ。

扉が閉まると同時に弘子は口を開いた。
「何?あれ。知るかっての!休みたきゃ休んどけばいいじゃんね。」
「ほんとほんと。っていうかさ、あの子チクったんじゃない?あたしらのこと。」
「かもね。むかつく!」

ここまでの流れは変わってない。
同じ状況に二度いることになってる。

だとしたら、この次は・・・・

「・・・それより・・・」

・・・ほら、きた。

弘子は視線をあたしときょんちゃんに向けた。
「なんで、きょんちゃんも智子も黙ってたの?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・もしかして・・・裏切る気?」
「−−−っ!!」

きょんちゃんはとっさに顔をあげた。
4人ともあたしたちを方を見ている。
というより、睨んでいた。

「まさか〜。そんなことしないよね?」
高橋美穂が「うん」と言わせるようにわざと優しく言ってきた。

「・・・・・・」

無言のまま、きょんちゃんはコクンとうなずいた。
やはりこの人たちの前になると、従わざるを得ない。

きょんちゃんの返事に納得して、今度はあたしに集中した。

「智子は?どうなの?裏切らないよね?」

「・・・・・・」


コクンとうなずいた・・・17年前のあたしなら。


「智子ってば!」

なかなか思い通りの意思表示をしないあたしにさらに追及した。


「・・・裏切るって何?」
あたしは静かに言った。

「はぁ?何言ってんの?」
弘子はムッとした顔で言い返してきた。

「ちょっと智子・・・どうしたの?なんか今日変だよ。」
「そうそう、さっきの田口君との事もそうだし・・・」
橘まどかと森下夏美はここでもめ事ならないよう間に入った。


「・・・変なのは、あんたたちじゃん。」
「−−−っ!!」

みんな固まった。
まさかこのあたしから、そんな言葉がでるとは思ってもみなかっただろう。

でももう、黙ってはいられなかった。
この事を後ですごく後悔したから。
山下美樹はしばらくしてこの学校の生徒じゃなくなった。
遠くの学校へ転校したんだ。

でも・・・今なら間に合うかも。
ちゃんとあやまっていじめを認めれば、転校せずに済むかもしれない。
あの時とは違う状況になるかも。

「・・・あたしは違う・・・」

さっきまで悩んでた。

「さっき先生が美樹の状態言った事聞いて、何ともないなんて思わない。」

17年前と同じあたしとしていくべきか、17年後のあたしとしていくべきか・・・

「・・・あたしは・・・美樹に謝りたい。」

でも・・・もう迷わない。
何が原因で昔にいるのかわからないけど、これはチャンスなのかもしれない。
嫌な自分を変えれるんだ。

バンッ!!

机を叩いて弘子は立ち上がった。

「ちょっと、さっきから聞いてれば何言ってんの?」

こんなに怒った弘子を見るのは初めてだ。・・・でも・・・っ

「・・・わかんないの?シカトした事を謝るって言ってんの!」
「はあ?あんた頭おかしいんじゃない?」
「・・・否定はしないけど、・・・今の弘子よりはマシだと思う。」
「−−−っ!!」

あの時はなんで言えなっかたんだろう?
躊躇することなく、言い返せる。
かといって、全く怖くない訳ではない。
30歳のあたしでも、情けないことに13歳の弘子に負けそうになる。
でもここで押されちゃだめだ。
変えなくちゃ、変わらなくちゃ!

「・・・そう?勝手にすれば。そのかわり・・・あんたとは絶交よ。」
「ちょっと待ってよ。」

きょんちゃんがあわてて止める。

「弘子、なにもそこまで・・・」
「何よ。あんたまで裏切るの?」
「ちがっ、裏切るとかそんなんじゃなくて・・・」
「じゃあ何なの?」
「智子は・・・あたしが・・・あたしのために−−っ」

−−やばいっ!
日記に書いてたこと言うつもりかも・・・あたしが反発してるのは日記を見たからと思ってるかも・・・

「絶好でいいよ。あたしはもうこんなバカげたことしたくないから。」

きょんちゃんが続きを言うのをさえぎった。

「智子っ・・・」

きょんちゃんは少し涙ぐんでた。
あたしは目で合図した。
なにも言わなくていいと。

「・・・あっそ、こんな人ほっといて行こ。」

弘子は席をたった。
続けて高橋美穂も。
とまどいながら橘まどかと森下夏美も。

「きょんちゃん!!行くよ!!」

そして、この場から離れようとしないきょんちゃんを弘子は無理やり引っ張って行った。

バタンッ!!

扉が思い切り閉められて、一人になった。

・・・・・・
これでいい・・・これでいいんだ・・・
新たな中学生活の始まりだ。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 19737