修学旅行2日目。
昨日は眠れないかと思いきや、体は正直でいつの間にか眠りについていた。
今日の行動は、各クラス、男女2班ずつでの行動となっている。 昨日の事があるなんて思ってもいなかったから、一緒に行動する班があたしを少々悩ませる事になる。
あたしの班の班長が、行動を共にする男子の班を呼び寄せる。 「ちょっと〜、3班!・・・3班の班長っ!・・・野村君っ!!」
・・・よりによって・・・ケンちゃんと同じか。
「・・・お〜っ、呼んだか〜?」 ケンちゃん率いる3班の男子たちが集まってきた。 「もう〜っ、呼んだかじゃないよ。時間決まってんだから、早く行動しなきゃ全部周れないよ!」
街並みを観光し、後々学校で紙新聞を作成するため、みんなでメモを取ったり写真撮影をしたりする。
「はいはい、わかりました〜・・・」 「なに、そのやる気のなさ!しっかりしてよ、班長でしょ!」 ケンちゃんは、あたしらの班長とあまり気が合わないみたい。 結構真面目なタイプで、冗談が通じないのがそのせいだろう。
「・・・おいっ、山田。」 ケンちゃんがコソコソッとやってきた。 「おまえんとこの班長どうにかしろよ。ピーチクパーチクうるせーよ。」 「・・・・・・」 いつものあたしなら、なにか言葉をかけてあげられるのに・・・ 「・・・?・・・おい、聞いてんのか?」 何も返事の返ってこないあたしに、ケンちゃんは覗き込んできた。
――//
「っ聞いてるよ・・・しょうがないじゃん・・・遅い方が悪いんだし・・・」 そう言いながら、ケンちゃんとの距離を無意識にとる。 「・・・なんだよ・・・あっ・・・機嫌悪いんだろ?」 ケンちゃんはニヤニヤしながら、また近づいてきた。 「・・・な・・に言ってんの?」 「昨日先生に見つかったんだろ?ったく、しょうがねーな〜。おまえもリョーマもとろいんだよ。もっとうまく逃げれなかったわけ?」 「・・・・・・」
松井君に・・・聞いたんだろうな。 というか・・・ほんとに・・・こいつが、あたしのこと・・・? ・・・・・・いやいや、絶対ありえないわ・・・ ・・・―――!!
ふと視線を先に向けると、あたしたちを見ていた子に気付いた。
・・・・・・昨日、ケンちゃんに告白していた子だ。
一瞬目が合ったがすぐに逸らし、またもやケンちゃんから距離を取った。 今度は、意識的に・・・
「そんなことよりっ・・・早く始めなきゃ・・・班の子まとめたら?」 そう言いながらあたしは、ひとみの方へ逃げていった。
だめだっ・・・普通にできないっ・・・っていうか・・・あの子のこともあるし、あんまり仲良くするのも・・・っ あんな現場・・・見なきゃよかった・・・こんな気を使わなくて済んだのに。
それから共に行動している間も、ケンちゃんを避けてしまった。 そんな訳ないと思いながらも、心のどこかで意識してしまっている自分がいたからだ。
そして、その日の夜。 夕飯と風呂を済ませ、布団に寝ころぶ。
はぁ〜・・・今日も疲れた・・・体もだけど・・・神経も疲れたよ〜・・・
「今日は松井君と会わないの?」 ひとみが髪をくしでときながら聞いてきた。 「あぁ・・・うん。」 今日は話していない。 姿は見かけたけど・・・なんとなく声をかけれなかった。 向こうからってこともなく・・・
「そっか・・・昨日のこともあるし、先生たちも目光らせてるだろうね。」 「・・・そうだね。」 現に、夕飯時に就寝後の注意事項がされた。 各部屋から出ないようにって。
「・・・ところでさ・・・ケンちゃんと何かあった?」 「――!!・・・え?・・・なんで?」 正直焦ってしまった。 「なんかさ・・・いつもの二人じゃなかったから。」 「・・・そう?・・・別になんもないけど・・・」 何もない・・・あたしが勝手に避けてただけだし・・・ 「そっか、ならいいんだけど。・・・っていうかさ、あたしの勝手な思い込みなんだけど・・・あ〜でも・・・こんなこと言うと、智子変に意識しちゃうかな〜?」
今のあたしは、この会話の流れで、ひとみの言いたい事がなんとなくわかった。 でも・・・・・・あえて促してしまった。
「・・・なに?・・・なんのこと?」
「うん・・・ケンちゃんはさ・・・・・・智子の事好きなんだと思ってた。」
―――っ・・・・・・
「あっ、あくまであたしの勘だよ。だって、ケンちゃん今彼女いるんだから、既に外れてんだけどさ。同じクラスになって智子との接し方見てたらそうなのかなって思えちゃって・・・だとしたら、すごいドロドロするじゃんっ、とか勝手に想像して・・・」 「・・・・・・ドロドロ?」 「うんっ、だって、親友同士が同じ子を好きだなんて、すんごい揉めそうじゃん。・・・って、あたしテレビの観すぎ?」 ひとみは笑いながらあたしの顔を見てきた。 「・・・・・・」 「あ・・・ごめん・・・怒った?」 無言で、無表情のあたしをひとみは気づかった。 「え・・・あ、ううん・・・・・・ほんと、テレビの観すぎだよ・・・」 とりあえずこの場を紛らわす為、笑顔を作った。 でも、きっと引きつっていただろう・・・
「・・・ちょっと、トイレ行ってくるね。」 体を起こし、この場を離れようとした。 「一緒に行こうか?」 「ううん、いいよ。お腹壊したっぽいし・・・」 「大丈夫?」 「うん・・・」
そういう理由でもつけて、一人になりたかった。 部屋から出て、合同のトイレの方へと向かう。 まだ就寝時間までには時間があるため、生徒の姿がチラホラ見えた。
ケンちゃんに告白した子が言ってた。 松井君だって言ってた。
見てたらわかるって・・・ ひとみもそうなの? ほんとうに・・・ケンちゃんはあたしのこと? ・・・っブンブンっ! 頭を思いっきり振り否定する。 その頭を振り過ぎてか、少し目眩がした。 手を頭に当てて、角を曲がろうとした時・・・
ドン・・・ 誰かにぶつかった。 前を見ていなかったため、気付いた時はそのぶつかった相手の胸元だった。
「あ・・・すみません・・・――っ」 とっさに謝り、その相手の顔を見上げ固まった。
「・・・・・・前見て歩けよ。」
ケンちゃんだ・・・ 少し、困ったような顔で・・・でも、優しい口調で、声を掛けてくれた。
「あ・・・ごめ・・ん・・・」 もう一度謝ってみる。 「・・・・・・」 「・・・・・・」
もう完全にいつものあたしらじゃなかった。 今までどうやって接していたのかを忘れてしまうくらい・・・
これ以上・・・一緒にいるの・・・無理っ・・・
すごく不自然にケンちゃんから距離を取った。 そして、その場から離れようとした時だ。
「悪いと思うならっ・・・」
・・・え?
「・・・お詫びにちょっとつきあえ。」
「・・・へ?・・・――っ」 聞き直したと思ったら、ケンちゃんはあたしの腕を掴んで歩きだした。
え・・・えっ・・・!? 「――っちょっ・・・ケンちゃんっ・・・」 周りの生徒がいようが、気にすることなくどんどん進む。 みんなもあたしとケンちゃんのツーショットだからか、さほど気にしてる様子もない。 元々仲がいいように見られてたし・・・
そして、階段を降りてきて人通りの少ない廊下にやってきた。 生徒の姿は見えないから、きっと他の観光客の部屋の通りだろう。
気付けば、掴まれていた腕は痛くなっていた。 それだけケンちゃんが力を入れてたんだろう。
あたしが、また逃げないようにって・・・
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