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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第88回   88


バタン・・・

「きゃはははは〜っ・・・ん?・・・あれ?智子、もう戻って来たの?」
布団の上で、美樹とひとみとなっちゃんが、お菓子をつまみながら談笑していた。

「・・・うん・・・先生に、見つかって・・・」
「え〜〜っ!マジで〜!」
「あたしもだよっ!まだ会う前から見つかってぇ。最悪だよ〜」
なっちゃんも彼氏と待ち合わせしていたみたい。
「そっか・・・」
「ねぇ、智子もお菓子食べない?」
ひとみがスナック菓子の袋をちらつかせる。
いつもなら、すぐに飛びつくであろうけど・・・

「・・・あ〜・・・ごめん、いいや。なんか一気に疲れちゃって・・・ちょっと横になるね。」
「そっか・・・そっちの布団空いてるよ。まだ戻ってない子いるし。」
ひとみが端っこの布団を指さした。
「うん。ありがと。」
「・・・大丈夫?」
美樹があたしの様子をうかがう。
「・・・うん。ちょっと眠いだけだから。」
そう言いながら、空いている布団にもぐった。

そして、みんなはまたさっきの続きを話し始めた。



本当に眠い・・・寝たいんだけど・・・眠れない・・・
頭に浮かんでくるのは、さっきの松井君との会話ばかり・・・
・・・・・・――――――
――――――――――――
――――――――――――
――――――――――――・・・・・・



「・・・・・・なに・・・言ってんの?」
「・・・・・・」
「そんなわけ・・ないじゃん・・・」

ケンちゃんが・・・あたしの事を・・・なんて・・・うん・・・ありえないよ・・・

「・・・さっきのやつもそうだけど・・・見てればわかるんだよ。」
「――っ・・・だって・・・ケンちゃんは、あたしらのこと気にかけてたんだよ。つきあう前から・・・気にかけててくれて・・・」

文化祭の時に、ケンちゃんと真剣に真面目に話したのを思い出す。
ああやって、親身になってくれてたのも初めてだった。

「たぶん・・・俺の気持ち知って、遠慮してたんだと思う・・・」
「・・・でも・・・本人から聞いたわけでもないのに――っ」
「そんなのっ・・・聞けるわけないっしょ・・・聞いたところで、あいつが自白するとは思えないし・・・」
「・・・・・・」

違うよ・・・違うに決まってんじゃん・・・
だって・・・そんな素振り感じたことないし・・・ケンちゃんは誰にだって同じように接してるし。
まだ美樹の方がわかるよ・・・そうだよっ、きょんちゃんたちの事でえらい意気投合してて、2年の時だってよく話してたじゃん・・・

「確信したのは、俺らがつきあいだしてからだけど・・・でも思い返してみれば、そうだったんだって、わかるよ。」
松井君は近くの階段に腰を下ろし話を続けた。
「いつからなんてわかんないけど・・・俺より先だと思う・・・あんたに気があったのは。」

――っ・・・

「あいつは元々あんな調子だから、誰とでも仲良く平等に接してるようだけど・・・あんたとは少し違ってた。」

・・・どこ・・が?

「あんたにだけは・・・・・・調子のいいこと言ってなかった。」

・・・調子の・・いいこと?

「簡単にいえば・・・好きな奴にはついつい冷たくしちゃうって・・やつ・・」

冷たくって・・・あたし、されてた?

確かに・・・あたしに対して女の子らしい態度、取られた覚えもないけど・・・
・・・・・・そうだ・・・2年の時なんて・・・美樹ときょんちゃんに比べて扱いがひどかったかもしれない・・・でもっ・・・それはあたしの態度も良くないのがあってのことだろうし・・・

「・・・試合ん時、あの子連れて来たのは、正直ケンにはキツかったと思う・・・でも、あんたがケンを引っ張っていった後・・・あいつ自分の気持ち抑えきれないんじゃないかと思った・・・・・・だから、間に入ったんだよ、俺は・・・」

・・・・・・っ

「・・・まぁ・・・あんたの言う通り、本人から聞いたわけじゃないから絶対だ、なんて言いきれないけど・・・あの子との事は、うまくいっていようがいまいが、ほっといたら?」



「・・・・・・んで・・?」
「・・・え?」
「――っ・・・なんで・・・そんな・・・淡々と・・・冷静に・・・言えるの?」
「・・・・・・」
「・・・なんでっ・・・そんなこと・・・あたしに・・・言うの?」

だんだんとあたしの中で、違う方に問題がすり変わってしまった。

ケンちゃんのことを思い、言ってるのは十分わかる。
でも・・・それだけ?
それが・・・大事なわけ?

「・・・冷静に・・・言ってるつもり・・ないけど。」

―――!!
そう言ってる松井君はどう見ても・・・冷静にしか見えない!

「松井君が気にしてんのはっ・・・ケンちゃんの気持ちでしょ!?」
「は?・・・何言って――っ」
「ケンちゃんの気持ちがっ・・・痛いほどわかるからでしょ!?」
「・・・なんだよ・・・それ。」

・・・だめだっ・・・止まらない・・・っ

「ケンちゃんの好きな人が誰かなんて・・・そんなことじゃなくて・・・ケンちゃんの・・・諦めたくても、諦めきれないって・・・その気持ちがっ―――・・・」



「・・・・・・美加のこと言ってんの?」



―――っ!!



顔が見れない・・・でも、見なくてもわかる・・・
松井君は・・・・・・怒ってる。



「・・・おいっ、お前らこんなことでなにやってる!!」

―――!!
先生だ。
見回りしてること、完全に忘れてた。

「ほらっ、早く自分らの部屋に戻れっ!!」
突っ立っているあたしの腕を引っ張り、松井君との距離を取らされた。
「・・・松井っ、座ってないで早く立たんか!!」
動こうとしない松井君に先生はさらに声を上げた。
「・・・・・・」
松井君は無言で立ち上がり、部屋の方へと歩いて行った。
あたしは、先生に部屋まで送られた。



・・・・・・――――――
――――――
――――――
――――――・・・・・・

結局、あんな中途半端な会話で終わってしまった。

でも・・・返って、先生が来てくれて良かったかも。
あたしはもっと・・・言ってはいけないこと、口にしてたかも・・・
心の奥底でずっと引っかかってて、何度も打ち消そうとしたこと。



―――あの二人は、間違いなく両想いだった
そして、結ばれるはずだった―――

松井君の・・・彼の心の中には・・・まだ美加さんへの気持ちが残ってるんだ。


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