バタン・・・
「きゃはははは〜っ・・・ん?・・・あれ?智子、もう戻って来たの?」 布団の上で、美樹とひとみとなっちゃんが、お菓子をつまみながら談笑していた。
「・・・うん・・・先生に、見つかって・・・」 「え〜〜っ!マジで〜!」 「あたしもだよっ!まだ会う前から見つかってぇ。最悪だよ〜」 なっちゃんも彼氏と待ち合わせしていたみたい。 「そっか・・・」 「ねぇ、智子もお菓子食べない?」 ひとみがスナック菓子の袋をちらつかせる。 いつもなら、すぐに飛びつくであろうけど・・・
「・・・あ〜・・・ごめん、いいや。なんか一気に疲れちゃって・・・ちょっと横になるね。」 「そっか・・・そっちの布団空いてるよ。まだ戻ってない子いるし。」 ひとみが端っこの布団を指さした。 「うん。ありがと。」 「・・・大丈夫?」 美樹があたしの様子をうかがう。 「・・・うん。ちょっと眠いだけだから。」 そう言いながら、空いている布団にもぐった。
そして、みんなはまたさっきの続きを話し始めた。
本当に眠い・・・寝たいんだけど・・・眠れない・・・ 頭に浮かんでくるのは、さっきの松井君との会話ばかり・・・ ・・・・・・―――――― ―――――――――――― ―――――――――――― ――――――――――――・・・・・・
「・・・・・・なに・・・言ってんの?」 「・・・・・・」 「そんなわけ・・ないじゃん・・・」
ケンちゃんが・・・あたしの事を・・・なんて・・・うん・・・ありえないよ・・・
「・・・さっきのやつもそうだけど・・・見てればわかるんだよ。」 「――っ・・・だって・・・ケンちゃんは、あたしらのこと気にかけてたんだよ。つきあう前から・・・気にかけててくれて・・・」
文化祭の時に、ケンちゃんと真剣に真面目に話したのを思い出す。 ああやって、親身になってくれてたのも初めてだった。
「たぶん・・・俺の気持ち知って、遠慮してたんだと思う・・・」 「・・・でも・・・本人から聞いたわけでもないのに――っ」 「そんなのっ・・・聞けるわけないっしょ・・・聞いたところで、あいつが自白するとは思えないし・・・」 「・・・・・・」
違うよ・・・違うに決まってんじゃん・・・ だって・・・そんな素振り感じたことないし・・・ケンちゃんは誰にだって同じように接してるし。 まだ美樹の方がわかるよ・・・そうだよっ、きょんちゃんたちの事でえらい意気投合してて、2年の時だってよく話してたじゃん・・・
「確信したのは、俺らがつきあいだしてからだけど・・・でも思い返してみれば、そうだったんだって、わかるよ。」 松井君は近くの階段に腰を下ろし話を続けた。 「いつからなんてわかんないけど・・・俺より先だと思う・・・あんたに気があったのは。」
――っ・・・
「あいつは元々あんな調子だから、誰とでも仲良く平等に接してるようだけど・・・あんたとは少し違ってた。」
・・・どこ・・が?
「あんたにだけは・・・・・・調子のいいこと言ってなかった。」
・・・調子の・・いいこと?
「簡単にいえば・・・好きな奴にはついつい冷たくしちゃうって・・やつ・・」
冷たくって・・・あたし、されてた?
確かに・・・あたしに対して女の子らしい態度、取られた覚えもないけど・・・ ・・・・・・そうだ・・・2年の時なんて・・・美樹ときょんちゃんに比べて扱いがひどかったかもしれない・・・でもっ・・・それはあたしの態度も良くないのがあってのことだろうし・・・
「・・・試合ん時、あの子連れて来たのは、正直ケンにはキツかったと思う・・・でも、あんたがケンを引っ張っていった後・・・あいつ自分の気持ち抑えきれないんじゃないかと思った・・・・・・だから、間に入ったんだよ、俺は・・・」
・・・・・・っ
「・・・まぁ・・・あんたの言う通り、本人から聞いたわけじゃないから絶対だ、なんて言いきれないけど・・・あの子との事は、うまくいっていようがいまいが、ほっといたら?」
「・・・・・・んで・・?」 「・・・え?」 「――っ・・・なんで・・・そんな・・・淡々と・・・冷静に・・・言えるの?」 「・・・・・・」 「・・・なんでっ・・・そんなこと・・・あたしに・・・言うの?」
だんだんとあたしの中で、違う方に問題がすり変わってしまった。
ケンちゃんのことを思い、言ってるのは十分わかる。 でも・・・それだけ? それが・・・大事なわけ?
「・・・冷静に・・・言ってるつもり・・ないけど。」
―――!! そう言ってる松井君はどう見ても・・・冷静にしか見えない!
「松井君が気にしてんのはっ・・・ケンちゃんの気持ちでしょ!?」 「は?・・・何言って――っ」 「ケンちゃんの気持ちがっ・・・痛いほどわかるからでしょ!?」 「・・・なんだよ・・・それ。」
・・・だめだっ・・・止まらない・・・っ
「ケンちゃんの好きな人が誰かなんて・・・そんなことじゃなくて・・・ケンちゃんの・・・諦めたくても、諦めきれないって・・・その気持ちがっ―――・・・」
「・・・・・・美加のこと言ってんの?」
―――っ!!
顔が見れない・・・でも、見なくてもわかる・・・ 松井君は・・・・・・怒ってる。
「・・・おいっ、お前らこんなことでなにやってる!!」
―――!! 先生だ。 見回りしてること、完全に忘れてた。
「ほらっ、早く自分らの部屋に戻れっ!!」 突っ立っているあたしの腕を引っ張り、松井君との距離を取らされた。 「・・・松井っ、座ってないで早く立たんか!!」 動こうとしない松井君に先生はさらに声を上げた。 「・・・・・・」 松井君は無言で立ち上がり、部屋の方へと歩いて行った。 あたしは、先生に部屋まで送られた。
・・・・・・―――――― ―――――― ―――――― ――――――・・・・・・
結局、あんな中途半端な会話で終わってしまった。
でも・・・返って、先生が来てくれて良かったかも。 あたしはもっと・・・言ってはいけないこと、口にしてたかも・・・ 心の奥底でずっと引っかかってて、何度も打ち消そうとしたこと。
―――あの二人は、間違いなく両想いだった そして、結ばれるはずだった―――
松井君の・・・彼の心の中には・・・まだ美加さんへの気持ちが残ってるんだ。
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