あたしの初体験は18の夏だった。
短大に入って、交流のあった大学との親睦会で知り合った、2コ上の先輩。 すごい大恋愛・・・というわけでもなく流れというか、短大生にもなって恋のひとつやふたつもしていないのが、すごい子供に感じて・・・。 そのせいもあって、初めての事で戸惑いや不安があっても、それを感じないようにしてた。
だからだろうか? 印象が薄い。 痛かった・・・てのだけは、そういうもんだと認識しているからか、なんとなく覚えてる気がする。
そしてその痛みは、最初のはずだけ・・・・・・
今日も部活へと学校へ向かう。 でも、いつもの調子で自転車がこげない。 どういう体勢でこいだらいいのか、思考錯誤していた。 でも、そのことを決して苦に思うわけでもなく・・・ 逆に、ニヤけてしまう自分がいる。
いけないいけないっ・・・誰かに見られたら完全に変態じゃん! ・・・でも、完全否定はできないか・・・
昨日家に帰ってからしばらく、数時間前の余韻に浸りっぱなしだった。 何よりうれしかったのは・・・身体が示したことだ。
・・・一度しか味わう事のないはずの痛みがあったから・・・
松井君が、あたしの初めての相手になったってことが、すごいうれしかった。 こんなこと思うなんて、あの時の彼氏には失礼だけど・・・
でも、気持ちがこもってるのとそうでないのとでは、こんなにも違うんだ。 今さらだけど、やっぱり気持ちって・・・大事なんだ。 そして、こんなに幸せでいいんだろうか? これ以上の幸せってなに? 贅沢な悩みが出てきていた。
そのくらいあたしは、のぼせあがっていた。
「おはよ〜。」 部室に入り、雑談している集団に挨拶を交わす。 「おはよう。あれ?今日遅くない?」 まどかを始め、ほとんどみんな着替えを終え、コ―トに行けそうだ。 「あ〜・・・ちょっと寝坊・・・あれ?・・・きょんちゃんは?」 今気付いたが、まだ姿がない。
「そういえば、まだだね・・・きょんちゃんも寝坊かな・・・珍しい・・・」 まどかは特に気にするわけでもなく、雑談に戻りみんなとコ―トへ向かった。 あたしも着替えを済ませ、きょんちゃんが来ないかと待っていたが、時間も時間だったので、あまり気にせず部室を後にした。
部活が始まって30分くらい経った頃――― 顧問の先生も、珍しく遅れて来た。 気のせいか、少し険しそうな表情にも見えないでもない。
そして、練習が終わりみんなが集まる。 結局きょんちゃんは休みだったみたい。 いつもなら、部長が挨拶して終わりのはずが、今日は違った。 珍しく先生からの話があるみたい。
「え〜・・っと・・・今に始まったことではないんだけど・・・部活の後、まっすぐ家に帰らない人いるよな。」
ドキッとした。 自分にも当てはまることだし・・・
「まぁ、いろいろと友達と話したりして過ごしたいのはわかるけど・・・基本学校から家まではまっすぐ寄り道しないで帰るように・・・」
何故に今さらそんな話を・・・ きっとみんな同じこと思ってるだろう。
「こんな当たり前の事わざわざ言うのには、訳があって・・・中田なんだけど、昨日の部活帰りに事故に遭ってな・・・」
―――!!・・・え!?
みんなが一斉にざわつく。
「ほんとですか?」 「先生っ、きょんちゃんは?」 一部の人がとっさに質問する。
「静かにっ!・・・まぁ、足をくじいたくらいで大事には至らなかった。」 それを聞き少しホッとする。 「でも、本来なら事故に遭わなかった場所に、中田がいたってことが問題なんだ。まっすぐ家に帰ってれば事故にも遭わなかったし、怪我もしなかった。みんなも休みだけに限らず、普段から部活が終わったら即家路に着くように。わかったな!」
「「・・・はい・・・」」
解散になり、あたしは校舎へと戻る先生の所へ向かった。 「先生っ!」 「ん?なんだ?」 「あの・・・事故って・・・どこで?」 「あぁ・・・中央公園近くの道路だよ。」 「公園・・・ってことは・・・事故に遭ったのは・・・きょんちゃんだけですか?」 「・・・・・・いや・・・まぁ、山田は仲がいいからわかっているだろうけど・・・田口もだ。」
・・・やっぱり・・・
「どうせ、明日になればわかるだろうけど・・・中田より田口の方が怪我がひどくてな。」 「!!・・・そう・・なんですか!?」 「話によれば、中田をかばっての事らしいんだけど・・・骨折したみたいでな・・・」 「骨折!?」 ・・・ってことは・・・ 「全治3ヶ月らしいから・・・今度の試合には出れないな。」 「―――!!」 サッカーが力を入れてるのは、誰にとってもわかりきってる事で・・・
「・・・時期が時期だし・・・仲良くするなとは言わないが・・・山田も立場考えて行動しろよ。」
はっきりとは言われなかったけど、わかる・・・迷惑をかけるなと・・・大事な試合前に・・・自分らが邪魔だということを・・・ あたしは即効きょんちゃんの家に行った。 きっと、きょんちゃんは今頃・・・!
「あら、智子ちゃん・・・わざわざ来てくれたの?」 「・・・こんにちは・・・あのっ、きょんちゃんは?」 「・・・あがって・・・2階で横になってると思うわ。」 きょんちゃんのお母さんは、快く入れてくれた。
コンコン・・・ ・・・・・・ 「・・・きょんちゃん・・・あたし・・・入るよ・・・」 返事が返ってこないけど、静かにドアを開けた。 「・・・・・・大丈夫?」 足の心配と、きょんちゃんの気持ちを察して・・・それしか言えなかった。 布団の中に埋もれていたけど、ゆっくりと姿を現す。 想像していた通り、いつもは整えられた髪型も今は天然パーマのせいもあってか、ひどく乱れている。 それに比例するかのように、表情もひどいものだ。 「・・・きょんちゃん・・・」 ベットへと近づく。 そして、泣きはらした後の目元にも気付く。 「・・・・・しよ・・・・・・っ・・・どう・・・しよ・・・っ・・・」 その目元からは、みるみるうちに大粒の涙が・・・
――――――っ・・・! きょんちゃんの側にしゃがみこんだ。
「・・・あた・・しの・・せいで・・っ・・試合・・っ・・でれなく・・なっちゃっ・・った・・・どうしようっ・・・!」 「――っ・・・きょんちゃんっ・・・」 「あんなに・・っ・・練習っ・・してた・・のに・・・っ・・・最後かもっ・・・しれない・・のに・・・っ・・・」 「――違うよっ!・・・きょんちゃんの・・せいじゃない・・・」 「・・・・・・っひっく・・・」 あたしの言葉に、きょんちゃんは思いっきり首を横にふった。 「・・・違うってば!・・・」 それでもなお、横にふる。 「・・・あたしがっ・・・ひっく・・・ボーっと・・・してたからっ・・・だからっ・・・!」 ・・・・・・ 何も言えなかった。 これ以上、きょんちゃんに声を掛けても、今はただの慰めにしか・・・いやそれにも値しないだろう。 ただ、側にいてあげるくらいしかできなかった。
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