「・・・あ・・あははは・・・なんか・・しばらく話さない間に・・口うまくなったね・・・」 恥ずかしさを紛らわすため、冗談っぽく受け流そうとした。 「・・・それよりっ、どこ行く?・・・天気いいし・・・」
自分は、焦れば焦るほど口が勝手に動く人なんだと、ここ最近気がついた。 それとも・・・松井君相手だからだろうか? 年甲斐もなく、状況に慌てて、焦って・・・まるで余裕がない。
「・・・あっ、そうだ・・・今日こそ海なんて―――っ!!」 言葉がつまった・・・いや・・・体と思考が止まってしまった。 いつの間にか彼に対して背を向けていたあたしは・・・・・・後ろから抱きしめられていた。
―――ど・・・どう・・・すれば・・・―――!!
次第に速くなる鼓動に、自分の対応がうまくついていかない。 そしてほのかに、石鹸らしき香りがする・・・と同時に、髪を通して首筋に温かい感触が・・・
「―――!!ちょっ・・・」 やっと出た言葉にも、まるで意味はなかった。 その感触は、耳へと移ってきた。 そして、すんなりと体の向きを変えられ、彼と対面する形に・・・ 思わず両腕で距離を置こうとするが、それもすんなり阻止される。 掴まれた両腕を逆に引き寄せられ・・・彼が少し顔を下げてくる・・・
――――――っ・・・ そこまできたら、いくらあたしでも抵抗の仕草はなくなり・・・
・・・・・・//
最初は軽く触れる程度のキスを・・・
目を開けると彼と目が合う・・・そしてそのまま唇が重なってきて・・・また離れ・・・そしてまた重なる・・・
それが何度か繰り返される度、塞がれる力もだんだん強くなり・・・
・・・―――えっ・・・?
突然キスが止められた。 そして考える隙もなく、あたしの腕を引っ張って歩き出した。 既に力の抜けていたあたしは簡単に連れていかれる。
・・・・・・へ?なっ・・・なに!?
開けっ放しの部屋へと入る。
・・・―――ここは・・・!
その部屋がどこだか気付いた途端、ベットへと体ごと押し倒されていく。
「ちょっ、まっ―――」 再び声をかけるものの、同じこと。 またしても両腕の自由が奪われ、あたしの上に覆いかぶさったまま見下ろしてきた。
「〜〜〜〜〜〜っ・・・」 「・・・あっちですんの・・・なんか気が引ける。」
!!〜〜〜すっ・・・するって・・・〜〜〜//
「・・・自分の部屋なら気ぃ使わなくていいし・・・」
そう言いながら、顔を近付けてくる。
〜〜〜〜〜〜// ―――ちょ・・・・・・たんま―――っ!!
さっきまで散々キスをしていたくせに、あたしの心の準備はリセットされていた。 場所が変わったのもあるし、その場所がベットとなると・・・//
家に入った時から、そうなりそうな予感はしていた。 でも・・・実際目の前にすると、頭の中はパニック状態だ。
ほんとにするの? というか・・・あたしはこの人と関係を持ってしまっていいの? 犯罪になんないの?
彼の・・・松井君の過去を変えてしまう事にもなるのに―――!! ―――――― ――――――――――――
「・・・・・・こわい?」
―――!!・・・え・・・?
松井君の言葉に目を開けた。 自分でも気づかないくらい目をギュッと瞑っていたんだ。 近づいていたと思っていたけど、まだ距離は保たれていた。
「・・・・・・こわ・・くはない・・けど・・・」 それは素直な気持ちだ。 「・・・・・・けど?」 静かに聞き直してくる。 「・・・・・・あたしの・・・」 「・・・?」 「・・・どこが・・・・・・いいの?」 「は!?・・・今さら・・・聞くこと?」 「・・・・・・前から・・・気になってたもん・・・」 「・・・・・・そうだなぁ・・・」 考えながらでも、二人の体勢はそのままで・・・ちょっとニヤけながら言ってきた。 「・・・普段、大人びてるわりには・・・こういう時はめっきり弱いとことか?」 「―――//・・・そっ・・んな・・・得意でも・・・変じゃんっ・・・」 「あんたはあからさまに態度ですぎ。」 「〜〜〜っ・・・面白がってるだけ・・・じゃん・・・質問の答えになってない!」 「そう?・・・じゃあ、さっきも言ったけど・・・顔。」 「――!!・・・か・・・お!?」 ・・・この人・・・本気で言ってんの!? 「あんたさ・・・自分の事かわいくないとか思ってるみたいだけど・・・そうでもないんじゃない?」 「えっ!!・・・そんな・・こと・・・」 「・・・木村先輩だって・・・あんたのこと最初は顔だけで好きになってたんだし。」 ――!!・・・先輩の話を・・・今する!? でも・・・・・・そっか。
本来のあたしは、誰がどうみてもかわいくは見えなかった。 今のあたしが、少しでもまともに見えるようにって手を加えてるから・・・告白なんてものをされたのかも。 そして・・・今こうして彼もあたしのことを・・・・・・ん? まてよ・・・ってことは・・・ あたしが騙してるっぽくない? 整形とまでいかないにしても、以前のパッとしないあたしに見向きもしなかったのに、今こうして好意を抱いてるなんて・・・。
要は・・・外見・・・ってこと?
「まぁ俺は、そんな一目惚れするほど、顔に魅かれてないけど・・・」 「・・・なっ・・にそれっ!言ってることが矛盾してんじゃん!」 「・・・今納得したでしょ?自分の事かわいいかもって・・・」 「〜〜〜っ・・・う・・るさいっ!!」
外見重視と思った事を恥ずかしくなった。 自分の事・・・アゲ過ぎた。
「クスクス・・・・・・ほんとあんたっておもしろい。」 「〜〜〜〜〜〜っ・・・」 ・・・完全にバカにされてる〜っ。
「・・・こういうところが・・・いいのかも・・・」
・・・・・・へ? ・・・―――!!
片方の手が腕から離され・・・あたしの頬に触れる。
「・・・あんたといる・・・空気感・・・みたいなもんが・・・すごい、いいかも。」
「・・・くうき・・かん?」
「そ。・・・一緒にいて・・・飽きないっていうか・・・和むっていうか・・・」
・・・これって・・・・・・喜んで・・・いいんだよね? あたしは・・・松井君にとって、側にいてもいい存在・・・ってことなんだよね?
「・・・っつーかさ・・・」
一旦、見つめ合っていた目が逸らされる。
「・・・・・・もういい?」
そして、また視線が戻される。
「・・・俺・・・限界かも・・・」
――――――!! 緩んだ気が、一気に引き締まった。 ・・・と同時に・・・・・・あたしの唇は塞がれていた。
今度はすぐに離れることなく、長く・・・長く・・・
さっきのあたしとは違っていた。 松井君の言ってくれた言葉がそうさせてくれたんだろう。 自然とあたしの腕は、彼の背中へと回されていた。
そしてあたしたちは、中学3年の初夏に・・・結ばれた。
あたしにとって、初めてじゃないけど・・・身体にとっては初めてのことだった。
|
|