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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第84回   84
「・・・あ・・あははは・・・なんか・・しばらく話さない間に・・口うまくなったね・・・」
恥ずかしさを紛らわすため、冗談っぽく受け流そうとした。
「・・・それよりっ、どこ行く?・・・天気いいし・・・」

自分は、焦れば焦るほど口が勝手に動く人なんだと、ここ最近気がついた。
それとも・・・松井君相手だからだろうか?
年甲斐もなく、状況に慌てて、焦って・・・まるで余裕がない。

「・・・あっ、そうだ・・・今日こそ海なんて―――っ!!」
言葉がつまった・・・いや・・・体と思考が止まってしまった。
いつの間にか彼に対して背を向けていたあたしは・・・・・・後ろから抱きしめられていた。


―――ど・・・どう・・・すれば・・・―――!!


次第に速くなる鼓動に、自分の対応がうまくついていかない。
そしてほのかに、石鹸らしき香りがする・・・と同時に、髪を通して首筋に温かい感触が・・・

「―――!!ちょっ・・・」
やっと出た言葉にも、まるで意味はなかった。
その感触は、耳へと移ってきた。
そして、すんなりと体の向きを変えられ、彼と対面する形に・・・
思わず両腕で距離を置こうとするが、それもすんなり阻止される。
掴まれた両腕を逆に引き寄せられ・・・彼が少し顔を下げてくる・・・


――――――っ・・・
そこまできたら、いくらあたしでも抵抗の仕草はなくなり・・・


・・・・・・//



最初は軽く触れる程度のキスを・・・

目を開けると彼と目が合う・・・そしてそのまま唇が重なってきて・・・また離れ・・・そしてまた重なる・・・

それが何度か繰り返される度、塞がれる力もだんだん強くなり・・・



・・・―――えっ・・・?



突然キスが止められた。
そして考える隙もなく、あたしの腕を引っ張って歩き出した。
既に力の抜けていたあたしは簡単に連れていかれる。



・・・・・・へ?なっ・・・なに!?



開けっ放しの部屋へと入る。

・・・―――ここは・・・!

その部屋がどこだか気付いた途端、ベットへと体ごと押し倒されていく。

「ちょっ、まっ―――」
再び声をかけるものの、同じこと。
またしても両腕の自由が奪われ、あたしの上に覆いかぶさったまま見下ろしてきた。

「〜〜〜〜〜〜っ・・・」
「・・・あっちですんの・・・なんか気が引ける。」

!!〜〜〜すっ・・・するって・・・〜〜〜//

「・・・自分の部屋なら気ぃ使わなくていいし・・・」

そう言いながら、顔を近付けてくる。


〜〜〜〜〜〜//
―――ちょ・・・・・・たんま―――っ!!

さっきまで散々キスをしていたくせに、あたしの心の準備はリセットされていた。
場所が変わったのもあるし、その場所がベットとなると・・・//

家に入った時から、そうなりそうな予感はしていた。
でも・・・実際目の前にすると、頭の中はパニック状態だ。


ほんとにするの?
というか・・・あたしはこの人と関係を持ってしまっていいの?
犯罪になんないの?



彼の・・・松井君の過去を変えてしまう事にもなるのに―――!!
――――――
――――――――――――


「・・・・・・こわい?」


―――!!・・・え・・・?

松井君の言葉に目を開けた。
自分でも気づかないくらい目をギュッと瞑っていたんだ。
近づいていたと思っていたけど、まだ距離は保たれていた。

「・・・・・・こわ・・くはない・・けど・・・」
それは素直な気持ちだ。
「・・・・・・けど?」
静かに聞き直してくる。
「・・・・・・あたしの・・・」
「・・・?」
「・・・どこが・・・・・・いいの?」
「は!?・・・今さら・・・聞くこと?」
「・・・・・・前から・・・気になってたもん・・・」
「・・・・・・そうだなぁ・・・」
考えながらでも、二人の体勢はそのままで・・・ちょっとニヤけながら言ってきた。
「・・・普段、大人びてるわりには・・・こういう時はめっきり弱いとことか?」
「―――//・・・そっ・・んな・・・得意でも・・・変じゃんっ・・・」
「あんたはあからさまに態度ですぎ。」
「〜〜〜っ・・・面白がってるだけ・・・じゃん・・・質問の答えになってない!」
「そう?・・・じゃあ、さっきも言ったけど・・・顔。」
「――!!・・・か・・・お!?」
・・・この人・・・本気で言ってんの!?
「あんたさ・・・自分の事かわいくないとか思ってるみたいだけど・・・そうでもないんじゃない?」
「えっ!!・・・そんな・・こと・・・」
「・・・木村先輩だって・・・あんたのこと最初は顔だけで好きになってたんだし。」
――!!・・・先輩の話を・・・今する!?
でも・・・・・・そっか。

本来のあたしは、誰がどうみてもかわいくは見えなかった。
今のあたしが、少しでもまともに見えるようにって手を加えてるから・・・告白なんてものをされたのかも。
そして・・・今こうして彼もあたしのことを・・・・・・ん?
まてよ・・・ってことは・・・
あたしが騙してるっぽくない?
整形とまでいかないにしても、以前のパッとしないあたしに見向きもしなかったのに、今こうして好意を抱いてるなんて・・・。

要は・・・外見・・・ってこと?

「まぁ俺は、そんな一目惚れするほど、顔に魅かれてないけど・・・」
「・・・なっ・・にそれっ!言ってることが矛盾してんじゃん!」
「・・・今納得したでしょ?自分の事かわいいかもって・・・」
「〜〜〜っ・・・う・・るさいっ!!」

外見重視と思った事を恥ずかしくなった。
自分の事・・・アゲ過ぎた。

「クスクス・・・・・・ほんとあんたっておもしろい。」
「〜〜〜〜〜〜っ・・・」
・・・完全にバカにされてる〜っ。



「・・・こういうところが・・・いいのかも・・・」



・・・・・・へ?
・・・―――!!

片方の手が腕から離され・・・あたしの頬に触れる。


「・・・あんたといる・・・空気感・・・みたいなもんが・・・すごい、いいかも。」

「・・・くうき・・かん?」

「そ。・・・一緒にいて・・・飽きないっていうか・・・和むっていうか・・・」

・・・これって・・・・・・喜んで・・・いいんだよね?
あたしは・・・松井君にとって、側にいてもいい存在・・・ってことなんだよね?


「・・・っつーかさ・・・」

一旦、見つめ合っていた目が逸らされる。

「・・・・・・もういい?」

そして、また視線が戻される。



「・・・俺・・・限界かも・・・」



――――――!!
緩んだ気が、一気に引き締まった。
・・・と同時に・・・・・・あたしの唇は塞がれていた。

今度はすぐに離れることなく、長く・・・長く・・・

さっきのあたしとは違っていた。
松井君の言ってくれた言葉がそうさせてくれたんだろう。
自然とあたしの腕は、彼の背中へと回されていた。



そしてあたしたちは、中学3年の初夏に・・・結ばれた。


あたしにとって、初めてじゃないけど・・・身体にとっては初めてのことだった。


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