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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第82回   82
「「お疲れ様でしたーっ!!」」

今日の部活も終了。
3年になったら、後片付けは後輩に任せて、挨拶と同時に部室へ戻るだけ。

「智子っ、今日会うの?」
きょんちゃんが、駆け寄る。
「――っ・・・うん・・・きょんちゃんも?」
「うんっ!」
二人揃って、笑みがこぼれてしまう。

顔を洗い、汗をふきとり、デオドラントスプレーを軽く振る。
いつもと違う服装に、2年の子が声を掛けてきた。

「あ〜っ!智子先輩と京子先輩、洋服着てる!!今日デートですか〜?いいな〜」
「ねえねえ、・・・ついて行こうか?」
「きゃははは、あんたならやりかねな〜い。」
そんな会話も今はくすぐったい感じだ。


部室を後にし、駐輪場へと向かう。
きょんちゃんたちは校門で待ち合わせらしいから、途中で別れた。

・・・・・・まだ・・・来てない・・・か。

辺りをキョロキョロと見渡すと、他の生徒が目に入る。
とりあえず自分の自転車のカギをさしておいた。
待つこと数分・・・その間、手鏡を取り出し、前髪をチェック・・・

「よっ!お待たせ!!」
・・・ん?
鏡をカバンにしまい込み、目当ての声の主と違う事に顔を上げる。

ケンちゃんが手を挙げてこっちに向かってくる。
後ろに松井君の姿もとらえた。

「・・・あっ・・・おまえ、露骨に嫌な顔しやがったな?」
「えっ・・・なに・・が?」
ケンちゃんに言われ、顔を押さえてしまった。
「わかってるって、邪魔する気ねーし。っつーか、俺だってデートだも〜ん。」
自慢げに言ってくる。
・・・え?・・・デートって・・・
「・・・真美ちゃんと?」
「当たり前だろ?他に誰がいんの?」
ケンちゃんはそう言いながら、自転車にカギをさした。

・・・ちゃんと、つきあってるんだ・・・
当たり前だろうけど、真美ちゃん以外の子とは遊んでないみたい。
・・・あれ?・・・ケンちゃんって、徒歩じゃ・・・

「誰の自転車?」
疑問に思いながら聞いた。
「え?俺のだよ。」
「自転車で来たの?」
「今日はな。これないと行動範囲限られんだろ?先生に見つかるとやばいんだけどな。」

ケンちゃんと話している間に、松井君も自分の自転車を引いてきた。

「んじゃ、邪魔もんは消えるわ。」
ケンちゃんは自転車に乗りペダルに足を置いた。
「あぁ、そうだ・・・俺が蒔いた種とはいえ、おまえらもう人の事でケンカすんなよ。」

―――!!

顔が引きつってしまう。

「俺のせいでだなんて、冗談じゃねーし・・・ほんっとおまえらって衝突すんの好きだな。まぁ・・・ケンカするほど仲がいいって言うしな。」
「・・・うるさい・・・早く行けよ、待たせてんだろ?」
松井君が自転車に乗りながら言った。
「へいへい、わかりましたよ・・・じゃあな〜。」

・・・・・・帰り際に、思い出したくない事を・・・!

「・・・私服で来たの?」
さっきまでの気まずい雰囲気を、まるで気にしないかのように話しかけてきた。
「あ・・・持ってきた・・・テニス部のジャージって、なんかダサいから。」
「ふ〜ん・・・じゃあ、俺も着替えよっかな・・・」
「え?・・・持ってきたの?」
「ううん・・・」
・・・じゃあ・・・
「・・・俺んち寄っていい?」
「え!?・・・あぁ・・・うん。」

一瞬ドキッとしてしまった。
家に・・・行くのか・・・・・・いやっ・・・着替えるんだし・・・それだけじゃん!
変な意識をした自分が嫌で、すぐに打ち消した。

松井くんちは、美樹の2件隣だから覚えてしまってる。
相変わらず会話の弾むあたしたちではなく、スピードの速い彼のあとを必死についていくだけだった。
前髪チェックしたの・・・意味ないじゃん・・・


「そこ止めといて。」
「あ・・うん・・・」

松井家に到着。
門をはいったところに庭があり、そこに自転車を置いた。
彼は鍵を開けて家の中に入る。

あたしは・・・・・・どうしよ。
入るのもなんだし・・・でも、外でウロウロなんて怪しいよな・・・
しかも、美樹に見つかったら恥ずかしいし・・・

そう思いながら、庭をキョロキョロ眺める。

「何やってんの?・・・入れば?」
中に入ろうとしないあたしに、玄関から声をかけたかと思うと奥の方へ行ってしまった。

・・・・・・あたしが、変に意識しすぎか・・・

ゆっくりと玄関へ入っていった。


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