「「お疲れ様でしたーっ!!」」
今日の部活も終了。 3年になったら、後片付けは後輩に任せて、挨拶と同時に部室へ戻るだけ。
「智子っ、今日会うの?」 きょんちゃんが、駆け寄る。 「――っ・・・うん・・・きょんちゃんも?」 「うんっ!」 二人揃って、笑みがこぼれてしまう。
顔を洗い、汗をふきとり、デオドラントスプレーを軽く振る。 いつもと違う服装に、2年の子が声を掛けてきた。
「あ〜っ!智子先輩と京子先輩、洋服着てる!!今日デートですか〜?いいな〜」 「ねえねえ、・・・ついて行こうか?」 「きゃははは、あんたならやりかねな〜い。」 そんな会話も今はくすぐったい感じだ。
部室を後にし、駐輪場へと向かう。 きょんちゃんたちは校門で待ち合わせらしいから、途中で別れた。
・・・・・・まだ・・・来てない・・・か。
辺りをキョロキョロと見渡すと、他の生徒が目に入る。 とりあえず自分の自転車のカギをさしておいた。 待つこと数分・・・その間、手鏡を取り出し、前髪をチェック・・・
「よっ!お待たせ!!」 ・・・ん? 鏡をカバンにしまい込み、目当ての声の主と違う事に顔を上げる。
ケンちゃんが手を挙げてこっちに向かってくる。 後ろに松井君の姿もとらえた。
「・・・あっ・・・おまえ、露骨に嫌な顔しやがったな?」 「えっ・・・なに・・が?」 ケンちゃんに言われ、顔を押さえてしまった。 「わかってるって、邪魔する気ねーし。っつーか、俺だってデートだも〜ん。」 自慢げに言ってくる。 ・・・え?・・・デートって・・・ 「・・・真美ちゃんと?」 「当たり前だろ?他に誰がいんの?」 ケンちゃんはそう言いながら、自転車にカギをさした。
・・・ちゃんと、つきあってるんだ・・・ 当たり前だろうけど、真美ちゃん以外の子とは遊んでないみたい。 ・・・あれ?・・・ケンちゃんって、徒歩じゃ・・・
「誰の自転車?」 疑問に思いながら聞いた。 「え?俺のだよ。」 「自転車で来たの?」 「今日はな。これないと行動範囲限られんだろ?先生に見つかるとやばいんだけどな。」
ケンちゃんと話している間に、松井君も自分の自転車を引いてきた。
「んじゃ、邪魔もんは消えるわ。」 ケンちゃんは自転車に乗りペダルに足を置いた。 「あぁ、そうだ・・・俺が蒔いた種とはいえ、おまえらもう人の事でケンカすんなよ。」
―――!!
顔が引きつってしまう。
「俺のせいでだなんて、冗談じゃねーし・・・ほんっとおまえらって衝突すんの好きだな。まぁ・・・ケンカするほど仲がいいって言うしな。」 「・・・うるさい・・・早く行けよ、待たせてんだろ?」 松井君が自転車に乗りながら言った。 「へいへい、わかりましたよ・・・じゃあな〜。」
・・・・・・帰り際に、思い出したくない事を・・・!
「・・・私服で来たの?」 さっきまでの気まずい雰囲気を、まるで気にしないかのように話しかけてきた。 「あ・・・持ってきた・・・テニス部のジャージって、なんかダサいから。」 「ふ〜ん・・・じゃあ、俺も着替えよっかな・・・」 「え?・・・持ってきたの?」 「ううん・・・」 ・・・じゃあ・・・ 「・・・俺んち寄っていい?」 「え!?・・・あぁ・・・うん。」
一瞬ドキッとしてしまった。 家に・・・行くのか・・・・・・いやっ・・・着替えるんだし・・・それだけじゃん! 変な意識をした自分が嫌で、すぐに打ち消した。
松井くんちは、美樹の2件隣だから覚えてしまってる。 相変わらず会話の弾むあたしたちではなく、スピードの速い彼のあとを必死についていくだけだった。 前髪チェックしたの・・・意味ないじゃん・・・
「そこ止めといて。」 「あ・・うん・・・」
松井家に到着。 門をはいったところに庭があり、そこに自転車を置いた。 彼は鍵を開けて家の中に入る。
あたしは・・・・・・どうしよ。 入るのもなんだし・・・でも、外でウロウロなんて怪しいよな・・・ しかも、美樹に見つかったら恥ずかしいし・・・
そう思いながら、庭をキョロキョロ眺める。
「何やってんの?・・・入れば?」 中に入ろうとしないあたしに、玄関から声をかけたかと思うと奥の方へ行ってしまった。
・・・・・・あたしが、変に意識しすぎか・・・
ゆっくりと玄関へ入っていった。
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