「あ〜あ・・・きょんちゃんに田口君・・・智子にリョーマ君・・・ケンちゃんに真美ちゃん・・・まどかやなっちゃんだって・・・みんなラブラブでいいなぁ〜・・・それにひきかえ、あたしって・・・はぁ〜っ・・・」 美樹のため息が、ここ最近の定番になっている。 「な〜に言ってんの!?あたしがいるじゃん!」 ひとみがポンっと美樹の肩を叩く。 「・・・じゃあゴールデンウィーク相手してくれる?」 「えっ・・・えっと〜・・・ゴールデンウィークは、家族と旅行って決まってて・・・ごめんねっ!」 「え〜〜っ!!旅行!?どこ行くの!?」 「四国だよ。」 「・・・いいなぁ〜・・・はぁ〜〜っ・・・」 さきほどより大きなため息を出す。
昼休み。 最近は、3組の教室に美樹ときょんちゃんがやって来て、4人で談話している。 サッカー部は次の試合の為に、朝練に続き昼練も始まって、あまり一緒にいる時間がなくなってしまった。 帰りも、他の部より遅く終わるため余計だ。
「どうせ彼氏持ちの二人も予定あるんでしょ〜?」 「そんなことないよ〜。あたしらだって部活あるし、サッカー部なんて丸一日練習あるって言ってたよ。ね、智子。」 「・・・え?・・・あぁ・・・そうだね。」
知らなかった。 丸一日練習なんて・・・ そもそも、あの日からまともな会話していない。 なかなか会う時間がないのはもちろんだけど、きょんちゃんたちに比べるとあからさまだ。
「・・・智子・・・リョーマ君と話してる?」 美樹が聞きづらそうに、でも気になっていたことだからか、思い切って口を開いた。 「・・・最近はあんまり・・・なかなかゆっくり会えないしね。」 「・・・そっか・・・」 以前のなら、「なんで!?」とか「まだ仲直りしてないの!?」なんてこと言ってきそうなのに・・・あたしが言わせない雰囲気、出してたのかも。
今週末からゴールデンウィークに入る。 社会人と違ってカレンダー通りの暦だけど、この年は5連休あった。 これだけ長い連休はそうそうないことだから、ひとみの家族のように遠出することもあるだろう。 でも中学最後の部活動で、呑気に休んでいる部なんてなかった。 中体連も近いこともあるし、なおさらだ。 この大会で敗退すれば同時に引退となる。 まぁ、テニス部であるあたし達は、間違いなく引退の道は見えていたけど・・・
そして、なんてことない日々を過ごし、連休に入った。 部活動、宿題に予習、復習。 あたしのゴールデンウィークは、学生という意味では充実していた。
・・・ううん・・・充実させたかったんだ。
連休も後半に入った夜――― 自分の部屋にこもり、机に向かう。 集中するわけでもなく、頬杖をつきながらシャーペンを指の間に、何度も何度もくぐらせる。
「・・・智子−っ、電話よ〜。」 下から母の声が聞こえた。 「・・・は〜い。」 ・・・また美樹かな? 連休に入って毎日のように美樹から電話が掛かってきていた。 よっぽど暇なんだろう。
この時代は携帯なんてもちろんないし、自宅の電話の子機も、我が家にはまだ普及してなかった。 台所に設置しているもんだから、あまり長電話はしにくかった。
階段からリズムよく下り、台所へと向かう。 いつのまにか父が帰宅しており、テレビを観ながら晩酌をしているところだった。 保留にしてある受話器を取ろうとした時、母が洗い物をしながら声をかける。
「松井君って子からよ。」
―――!!
母の口から聞こえた名前に体が固まる。 でも、すぐに何かを悟られてはいけないと思い、なるべく平然に返事をする。
「・・・そう。」
なんとなく父からの視線も感じる。 男の子からの電話なんて、これが初めてになるだろう。 本来は・・・もっと先だし・・・
そして、心臓はバクバクしながらも、またもや平然と受話器を取る。
「・・・・・・もしもし・・・」
『あぁ・・・松井・・・だけど・・・』
「・・・うん・・・」
『・・・学校で言おうと思ったんだけど、なかなか会えなかったし・・・』
「・・・うん・・・」
『・・・明日・・・部活ある?』
「・・・うん、ある。」
『俺らさ、明日だけ昼までなんだけど・・・』
「・・・・・・」
『・・・昼からどっか行こっか?』
「―――――っ・・・・・・うん。」
『じゃあ・・・部活終わったら自転車置き場・・・な。』
「わかった・・・」
『んじゃあ・・・』
「うん、じゃあ・・・」
――ップーッ、プーッ、プーッ、 向こうが切れたのを確認してから、受話器を置いた。
――カチャ・・・
テレビの音がいつもより大きく感じる。 お父さんもお母さんも、視線はそれぞれだけど、こちらに意識を集中させているのがわかってしまう。
それでもなお、平然とその場を離れ自分の部屋へと戻った。
・・・バタン。 扉を閉め、ベットに寝ころんだ。
・・・まだ、ドキドキしてる・・・ 自分の胸に手をあてて、深呼吸をする。
そして、自分が今までどれだけ不安がっていたことか、わかってしまう。 さっきの数秒の会話だけで、すべてが飛んでいってしまったようだ。
ケンちゃんのことで揉めてから、距離があいてしまったあたしたち。 もしかしたら、このまま話さなくなるんじゃないだろうか? 自然消滅? 実はつきあってたのは嘘だったんじゃないだろうか?
そんな考えばかり出て、嫌で嫌でしかたなかったけど・・・・・・自然と頬が緩んでしまう。
枕を抱きしめて、ベットの上をゴロゴロと転がる。
久しぶりのデート・・・明日、晴れるといいな。
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