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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第81回   81
「あ〜あ・・・きょんちゃんに田口君・・・智子にリョーマ君・・・ケンちゃんに真美ちゃん・・・まどかやなっちゃんだって・・・みんなラブラブでいいなぁ〜・・・それにひきかえ、あたしって・・・はぁ〜っ・・・」
美樹のため息が、ここ最近の定番になっている。
「な〜に言ってんの!?あたしがいるじゃん!」
ひとみがポンっと美樹の肩を叩く。
「・・・じゃあゴールデンウィーク相手してくれる?」
「えっ・・・えっと〜・・・ゴールデンウィークは、家族と旅行って決まってて・・・ごめんねっ!」
「え〜〜っ!!旅行!?どこ行くの!?」
「四国だよ。」
「・・・いいなぁ〜・・・はぁ〜〜っ・・・」
さきほどより大きなため息を出す。

昼休み。
最近は、3組の教室に美樹ときょんちゃんがやって来て、4人で談話している。
サッカー部は次の試合の為に、朝練に続き昼練も始まって、あまり一緒にいる時間がなくなってしまった。
帰りも、他の部より遅く終わるため余計だ。

「どうせ彼氏持ちの二人も予定あるんでしょ〜?」
「そんなことないよ〜。あたしらだって部活あるし、サッカー部なんて丸一日練習あるって言ってたよ。ね、智子。」
「・・・え?・・・あぁ・・・そうだね。」

知らなかった。
丸一日練習なんて・・・
そもそも、あの日からまともな会話していない。
なかなか会う時間がないのはもちろんだけど、きょんちゃんたちに比べるとあからさまだ。

「・・・智子・・・リョーマ君と話してる?」
美樹が聞きづらそうに、でも気になっていたことだからか、思い切って口を開いた。
「・・・最近はあんまり・・・なかなかゆっくり会えないしね。」
「・・・そっか・・・」
以前のなら、「なんで!?」とか「まだ仲直りしてないの!?」なんてこと言ってきそうなのに・・・あたしが言わせない雰囲気、出してたのかも。

今週末からゴールデンウィークに入る。
社会人と違ってカレンダー通りの暦だけど、この年は5連休あった。
これだけ長い連休はそうそうないことだから、ひとみの家族のように遠出することもあるだろう。
でも中学最後の部活動で、呑気に休んでいる部なんてなかった。
中体連も近いこともあるし、なおさらだ。
この大会で敗退すれば同時に引退となる。
まぁ、テニス部であるあたし達は、間違いなく引退の道は見えていたけど・・・


そして、なんてことない日々を過ごし、連休に入った。
部活動、宿題に予習、復習。
あたしのゴールデンウィークは、学生という意味では充実していた。

・・・ううん・・・充実させたかったんだ。



連休も後半に入った夜―――
自分の部屋にこもり、机に向かう。
集中するわけでもなく、頬杖をつきながらシャーペンを指の間に、何度も何度もくぐらせる。

「・・・智子−っ、電話よ〜。」
下から母の声が聞こえた。
「・・・は〜い。」
・・・また美樹かな?
連休に入って毎日のように美樹から電話が掛かってきていた。
よっぽど暇なんだろう。

この時代は携帯なんてもちろんないし、自宅の電話の子機も、我が家にはまだ普及してなかった。
台所に設置しているもんだから、あまり長電話はしにくかった。

階段からリズムよく下り、台所へと向かう。
いつのまにか父が帰宅しており、テレビを観ながら晩酌をしているところだった。
保留にしてある受話器を取ろうとした時、母が洗い物をしながら声をかける。

「松井君って子からよ。」

―――!!

母の口から聞こえた名前に体が固まる。
でも、すぐに何かを悟られてはいけないと思い、なるべく平然に返事をする。

「・・・そう。」

なんとなく父からの視線も感じる。
男の子からの電話なんて、これが初めてになるだろう。
本来は・・・もっと先だし・・・

そして、心臓はバクバクしながらも、またもや平然と受話器を取る。


「・・・・・・もしもし・・・」

『あぁ・・・松井・・・だけど・・・』

「・・・うん・・・」

『・・・学校で言おうと思ったんだけど、なかなか会えなかったし・・・』

「・・・うん・・・」

『・・・明日・・・部活ある?』

「・・・うん、ある。」

『俺らさ、明日だけ昼までなんだけど・・・』

「・・・・・・」

『・・・昼からどっか行こっか?』

「―――――っ・・・・・・うん。」

『じゃあ・・・部活終わったら自転車置き場・・・な。』

「わかった・・・」

『んじゃあ・・・』

「うん、じゃあ・・・」

――ップーッ、プーッ、プーッ、
向こうが切れたのを確認してから、受話器を置いた。

――カチャ・・・

テレビの音がいつもより大きく感じる。
お父さんもお母さんも、視線はそれぞれだけど、こちらに意識を集中させているのがわかってしまう。

それでもなお、平然とその場を離れ自分の部屋へと戻った。

・・・バタン。
扉を閉め、ベットに寝ころんだ。

・・・まだ、ドキドキしてる・・・
自分の胸に手をあてて、深呼吸をする。

そして、自分が今までどれだけ不安がっていたことか、わかってしまう。
さっきの数秒の会話だけで、すべてが飛んでいってしまったようだ。

ケンちゃんのことで揉めてから、距離があいてしまったあたしたち。
もしかしたら、このまま話さなくなるんじゃないだろうか?
自然消滅?
実はつきあってたのは嘘だったんじゃないだろうか?

そんな考えばかり出て、嫌で嫌でしかたなかったけど・・・・・・自然と頬が緩んでしまう。

枕を抱きしめて、ベットの上をゴロゴロと転がる。

久しぶりのデート・・・明日、晴れるといいな。


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