みんなのところに戻った時には、ケンちゃんと真美ちゃんはいなくなってた。 他の生徒や観客の姿も少なくなり、時刻も5時を過ぎていた。 「まぁ・・・あの二人のこと気にはなるけど・・・あたしらも解散しよっか?」 あたしたちの雰囲気をいつもと違うように感じてか、美樹が仕切り直した。 「きょんちゃんたち一緒に帰るでしょ?」 「えっ・・・あ・・・」 「送るよ。」 きょんちゃんの返事より先に田口君が言った。 「智子たちもだよね?」 「・・・――あたしっ・・・一人で帰るから。」 「えっ!?・・・」 あたしの返事に対し、美樹は松井君に目をやった。 「自転車で来たし・・・じゃあね。」 「えっ・・ちょっ、智子!?」 美樹の呼ぶ声にも止まらず、駐輪場へと向かう。
カギを差し込み、自転車を引き出す。 「――っ・・智子!」 美樹が走ってきた。 「ちょっと、どうしたの?」 「・・・別に・・・どうもしないよ。」 「・・・リョーマ君と・・・ケンカしたの?」 「・・・・・・そんなんじゃ・・・ないよ」 ・・・・・・まぁ・・・言い合いはしたか。 あんだけ衝突したの・・・久しぶりだ。 つきあってからは、初めてだし。 「・・・ケンちゃんの事で、揉めたの?」 ・・・・・・美樹も絡んでる、なんて言えるわけないし・・・ 「・・・ちょっと・・・あたしがおせっかいすぎたんだ・・・ほんと、心配するようなことじゃないから。こんなに遅くなるなんて、親に言ってなかったし・・・早く帰んないと。」 見えすいた嘘で、この場を去ろうとしている。 「・・・そっか。」 それを美樹もわかっていただろうけど、これ以上は聞いてこなかった。 「・・・ごめんね・・・じゃあ・・・」 「うん・・・ばいばい。」
グラウンドを後にし、家路へと自転車をこぐ。 必死に・・・精一杯・・・考える余裕もないくらい・・・あの顔を思い出さないくらい・・・
翌朝―― 家を出て間もなく・・・ 真美ちゃんが自転車に乗って、待っていた。 「・・・おはよ。」 「・・・おはよ。」 あたしが追いつくと同時に、真美ちゃんも自転車をこぎだす。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 挨拶は交わすものの、あとが続かない。 でも、これ以上の沈黙に耐えれず、先に口を開いた。 「・・・昨日・・・ケンちゃんに・・・送ってもらったの?」 「・・・うん・・・少し、話してからね。」 「・・・そっか。」 「・・・・・・先輩ね・・・好きな人・・・いたんだって。」 ―――! そんな・・・話・・・したの? 「でも、全くの片想いで・・・あたしとつきあうって言ってくれたのも、半分はその人のこと、諦めるためだって・・・」 ・・・・・・何も声をかけてやれなかった。 「でも・・・・・・もう半分は・・・あたしだからOKしてくれたって。」 ・・・・・・え!? 見ることのできなかった真美ちゃんの顔に目をやった。 「入学式のとき・・・先輩もあたしのこと・・・良く思っててくれたみたいで・・・」 恥ずかしそうに話してくれてる。 確かにあの時・・・ケンちゃんは、真美ちゃんのことかわいいって言ってた。 「あたし・・・それだけでも十分だった・・・だから・・・――先輩に、あたしのこと好きになってもらえるよう頑張る!」 「―――っ・・・」 「今は、まだ・・・完全に忘れられないだろうけど・・・あたしが、忘れさせてあげる!」 「・・・・・・」 「だから・・・もし、ともちゃんが、先輩のこと良く思ってなくても・・・あたしは大丈夫だから・・・」 「・・・・・・」 「きっかけはどうあれ・・・あたし先輩とつきあえるのうれしいもん!」 「・・・・・・そっか。」 いつの間にか・・・あたしの頬は緩んでいた。 真美ちゃんの素直な気持ちがすごく伝わって・・・ こんなに喜んでる彼女に反対することなんて・・・できなかった。
この二人の噂は、あっという間に広がり、しばらくはその話題で持ちきりだった。 人気がありながらも、彼女を作っていなかったケンちゃんのことだから、真美ちゃんの存在は学校中に知れ渡った。 ケンちゃんに関しては、ファンクラブまでもが作られていたみたいで、その会員とやらが真美ちゃんに嫌がらせをしたのは言うまでもない。 普通の女の子なら、とっくにめげそうなものの、真美ちゃんはちょっとやそっとじゃやられるようなキャラではなかった。 それに・・・ケンちゃんなりに彼女の事を守っていた。
そして・・・半月経つ頃には、二人の事を邪魔する人はいなくなっていて、もやは、公認のカップルとなっていた。
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