・・・・・・ 体ごとを松井君から向きを変えた。 いつの間にか、手には拳が握られていた。 「・・・俺らも行くぞ。みんな待ってんだし・・・」 「・・・・・・」 反応を見せないあたしに、松井君は再びため息をつく。 「・・・ケンにはケンの考えがあるんだろ?」 「・・・・・・」 「交際申し込まれて、受け入れたの初めてだし。」 「――!・・・」 それは・・・そうかも・・・ デートとか遊びにはつきあっても、彼女ということでは受け入れてなかった。 それでもいいからって、お誘いがなくなることはなかったけど・・・ 「おまえらが考えてるより、いいかげんじゃねーんじゃね?」 「・・・・・・好きでもないのに?」 「は?」 「・・・ケンちゃんはっきり言ったよ!・・・真美ちゃんのこと好きじゃないって・・・それのどこがいいかげんじゃないの!?どこが考えてんの!?」 再びヒートアップしてしまう。 「・・・今は・・・だろ?・・・つきあいだしらわかんねーじゃん。」 ―――っ! ・・・なんで? ・・・なんで、そんなにケンちゃんの肩をもつの!? 「・・・話になんない。」 静かにそう言い放って、松井君の横を通り過ぎた。 「――おいっ!」 すぐさま腕を掴まれたが、振りほどこうと腕を上げる。 「離してよっ!・・・ケンちゃんや松井君に言ったって無駄だった。真美ちゃんに直接言ってくる!」 「余計な事すんなって!」 振り払おうとした腕はまだ離されず、お互い力が入ったままだ。 「あたしが蒔いた種なんだから、あたしが止めるだけじゃん!何が余計なのよっ!」 「――――っ・・・」 「離してってば!!」 「――――あいつなりに前に進もうとしてんだよ!!」 ―――! その言葉に、あたしの振り払う動きが止まってしまった。 ・・・・・・なんの・・・こと? 背けていた目線を松井君に向けた。 何かを諦めたかのように、掴まれている腕の力もなくなった。 「・・・半分ムキになって・・・ってのはあったかもしんないけど。」 ・・・・・・どういう事!? 「・・・あいつ、好きな奴いたんだよ。」 「―――っ!!・・・そう・・なの?」 「・・・たぶん・・・片想いってやつ。」 ・・・・・・片想い・・・・・・ 「あんな調子だから、気持ち伝えるなんてことしなくて・・・・・・諦めたくても諦めきれずに、未練たらしい自分が嫌だったんじゃないか?」 話し続ける松井君を黙って見ていた。 「いろんな子と遊びに行ってたのも、紛らわすってのもあるけど・・・相手に見せつけるってのが一番だったかもな。」 ・・・・・・見せつける? ・・・ってことは・・・近くにいる人? ・・・いつも・・・側にいた人・・・・・・―――っ!! 「そんなこといつまでもやってるわけにいかないから・・・あの子のこと、本気で考えよう思ったんじゃね?」 あたしは一呼吸おいて、ゆっくりと聞いた。
「・・・・・・好きな子の・・・目の前だったから・・・余計に?」
あたしの言葉にしばらく黙っていたけど・・・ 「・・・・・・あぁ・・・」 と静かに答えた。
・・・・・・そっか・・・そうなんだ。
今までのやりとりが一気に頭に浮かぶ。 ・・・そんなの・・・気付かないよ・・・ 本人だって・・・絶対気付いていない・・・
ケンちゃんは・・・・・・美樹のこと―――好きだったんだ―――
「確かに、あの子にとっては失礼かもしんないけど・・・この先の流れ次第で、いいきっかけって思えばいいじゃん。あいつは自分の事だけ考えて、なんてことないだろうし・・・」 「・・・・・・」 「あんたにとっては、嫌なやり方だろうけど・・・ちょっと見守っといてよ。」 「・・・・・・」 松井君は、みんなの方へと歩きだした。 あたしも・・・ゆっくりとその後ろへついて行った。
なにも言えなかった。 意外すぎるケンちゃんの気持ち・・・ 美樹に対して特別のことなんてなかったように感じてた。 いつの間にか仲良くなって、冗談を言い合えて、きょんちゃんたちの事に関しては意気投合してたけど・・・あたしらだけじゃなく、他の女の子とも仲良かった。 でも・・・ケンちゃんがデートらしきことするようになったのって・・・・・・3学期の終わり頃からだ。 美樹が・・・木村先輩のこと好きになった後から。 ケンちゃんにはもちろん、松井君や田口君にもいろいろ情報を聞き入れていた。 そのことで、嫌でも美樹の気持ちをわかっていただろう。
その時のケンちゃんの気持ちが、わからない訳ではない。 でも・・・その事を考えると・・・それ以上に、違う事が頭から離れなかった。
松井君がなぜケンちゃんを頑なにかばったのか・・・わかってしまった。 人の恋愛沙汰なんて、今まで口挟んだことないのに・・・今回のことは、一番に理解している・・・・・・自分もかつて感じていた感情に。
・・・・・・片想い ・・・・・・未練たらしい気持ち
美加さんの時と重なっているはずだ。 前に、あたしが尾上先生のことを想っている時と同じように。
彼が話している時の表情が、頭にこびりついて離れなかった。
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