一瞬、あたしらの周りだけ時間が止まったかのように、身動きができなかった。 「・・・えっと〜・・・告白・・・なんだよな、今の・・・」 ケンちゃんが、顔をポリポリかきながら真美ちゃんに聞いた。 「・・・――はいっ・・・あたし・・・野村先輩のファンの一人じゃなくて・・・一人の彼女になりたいです!」 ・・・・・・真美ちゃん・・・すご・・・
みんな、真美ちゃんとケンちゃんを交互に見ている。 とてもじゃないけど、茶化す雰囲気ではない。
「・・・・・・別に・・・いいよ。」
「「―――っっ!!」」
ケンちゃん・・・?
「え?・・・あの・・・」 真美ちゃんも戸惑った感じで聞き直す。
「つきあおっか。」
「「―――っっ!!」」
「・・・――はいっ!!」 真美ちゃんは満面の笑みで返事した。
「――ちょっ・・・ケン、マジで!?」 黙っていた田口君がやっと口を開いた。 「そうだよ、冗談だとか、許されないよ?」 美樹も間に入る。 これまでのケンちゃんの女絡みを見てきたら、そういう風に思ってしまう。 きょんちゃんもひとみも事の流れに驚きを隠せない感じだ。 「・・・冗談のつもり・・・ないけど?」 ケンちゃんは、落ち着いた様子で言い返す。 「・・・――ケンちゃんっ、ちょっと・・・」 あたしはケンちゃんの腕を引っ張って、この集団から離れた。
「・・・なんだよっ・・・」 素直に引っ張られてきたが、みんなから見えなくなるとケンちゃんは腕を振り払った。 それと同時に振り返り、ケンちゃんを睨んだ。 「どういうつもり!?」 「どういうって・・・そのまんまの意味じゃん。彼女にしてくださいって言われて、はい、いいですよってことだろ?何をそんなにめくじら立ててんだよ。」 「だってっ・・・真美ちゃんのことたった今紹介されて、なんでつきあえるの!?だいたい、ケンちゃん今までまともな彼女も作ってないのに・・・」 「・・・じゃあ聞くけど・・・なんで俺にあの子紹介したわけ?」 「えっ・・・それは・・・仲良くなりたいって・・・話すきっかけでもって・・・」 「だとしたら、こういう流れになるの自然なことじゃん。遅かれ早かれ、俺告白されてたんじゃね?」 「それはっ・・・そうかもしんないけど・・・」 まさかこんなに早く真美ちゃんが告白するなんて思ってもみなかった。 でも・・・それを言い訳にはしたくない。 「・・・じゃあさ・・・真美ちゃんのこと好きなの?さっきの間だけで、自己紹介されただけで・・・好きになったの!?」 「・・・・・・そんなの、好きじゃねーに決まってんじゃん。」 「はぁ!?・・・なに言い切ってんの!?それでよくあんな思わせぶりな事言えたね!・・・ふざけるにもほどがあり過ぎるよ!!」 「思わせぶりじゃねーよ!ちゃんとつきあうって言ってんだろ!?」 「だからっ!それがおかしいって言ってんの!なんでいきなりそうなんの!?順序っていうか、流れがあるじゃん!!」 いつの間にか二人とも、大声を出していたことに気づいていなかった。
「・・・おいっ!・・・うるさい。」 松井君が歩きながらこっちに向かってくる。 「「―――っ・・・」」 向かい合って言い合っていたが、お互い大袈裟とも言えるほどに距離を置く。
・・・っとに〜・・・何考えてんの!? あたしの怒りは収まっていなかった。
「・・・あの子、気にしてたぞ。」 ・・・そりゃあそうでしょうよ! その気もないのに、つきあうなんて・・・!! 「・・・ケン。行ってやれば?」 ―――っ!? なっ・・・!? 「なに言ってんの!?」 思わず、松井君に食いつく。 「・・・なにって・・・つきあうんだろ?その直後におまえに連れていかれたら、気にすんの当たり前じゃん。」 ・・・何を言ってるの!? いつもの事ながら、サラッと落ち着いて言って・・・!! 今のあたしには、それが余計に気にくわなかった。 「そういう事じゃないでしょ!?」 怒りの矛先が松井君に代わってしまう。 「・・・じゃあ、どういうことだよ?つーかさ、どういうことでもおまえには関係ねーじゃん。つきあうつきあわないは、ケンとあの子の問題だろ?だいたいそうさせたのはおまえだろ?」 ―――!! ケンちゃんと同じこと・・・!! どんどん頭が熱くなっていく。 言ってることは間違ってはいない。 むしろその通り・・・深く考えずに真美ちゃんを紹介し、予想だにしない展開に戸惑ってあたしが口挟んで・・・ よくよく考えれば、自分に非があるのはわかることだけど、今それを認めることなんてできなかった。 「・・・そうよ・・・あたしがさせた事だよ・・・でも・・・ちゃんとした答えを言って欲しかった!・・・ケンちゃんがこんな適当なんてわかってたら、紹介なんてしてないよっ!・・・うまくいって欲しくない訳じゃない。あの子は・・・真美ちゃんは本気なんだよ?・・・今までの女の子たちと同じ扱い、して欲しくないっ!そんな軽い感じでつきあうなんて・・・先が見えてるじゃん!」 「・・・・・・」 しばしの無言の後、松井君はふーっとため息をついたかと思うと、ケンちゃんに目をやった。 「・・・とりあえず、行けよ。」 「・・・あぁ・・・」 再度行くように促され、ケンちゃんはみんなの方へと戻った。
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