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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第75回   75
春休み最後の日。
部活を終え、帰宅した。
明日から3年生だけど、部活にはさほど関係なく毎日のように練習があった。
入学式が終われば、新入部員も入ってくるだろうから、多少実感が湧いてくるかも。

そして部活の後、春休みの間はいつもよりも長く、松井君と一緒にいることができた。
そのせいで、家に着いたのは、夕方だった。

「・・・ただいま〜」
・・・・・・
いつもの返事がない。
買い物にでも行ったのかな?

ここら辺は田舎だから、出掛ける度に鍵を閉めるという習慣がなかった。
いつでもオープン・・・だからといって、ドロボウがいるわけでもなく。
平和でなにより・・・

あたしは荷物を階段に置き、手洗いをしてから台所へと向かった。
おやつになるような物を探し、食品庫の中ら、菓子パンを見つけ頬張った。
ふと飯台の上のハガキに目をやる。
何かの郵便物だろうと手に取った。

第16回・・・卒業生・・・同窓会・・・!?
これはお母さんの同窓会のハガキだ。
日にちは・・・とっくに過ぎてる。
1月に開催されてたみたい・・・
返信用のハガキはないから送ったんだろう。
でも・・・お母さんがそれらしきところに出掛けた覚えもないし、話も聞いてない。
ってことは・・・欠席したんだ。
・・・・・・
・・・―――!!
そういえば・・・・・・あたしも・・・来てた。
・・・同窓会のハガキ・・・
中学生に戻る直前に、届いてた!
しかも・・・中学のだったな・・・
そのハガキを見て、忘れていた中学時代を、一瞬だけど、思い出してた・・・
そして、眠りについて・・・母に起こされた時は・・・

「あらっ、お帰り〜。」
――っ・・・
いつの間にか母が帰ってきて、台所に入ってきた。
「・・・どっか行ってたの?」
「うん、回覧版回してきたの。」
そう言いながら、お母さんはエプロンをつけだした。
「・・・あたしが持っていったのに。」
「急ぎだったからね。ありがと、今度お願いね。」
鼻歌でも歌うような感じで、夕飯の支度にとりかかる。

お母さんは、あたしが中学に戻ってから、ずっとこんな感じだ。
口を開けば文句しか出てこなかった時と違い過ぎる。
まぁ、元々怒ってばっかの人なんて、いないしね。

「・・・同窓会・・・行かなかったの?」
あたしは椅子に腰を下ろし、ハガキをペラペラっと振った。
「え〜?・・・あぁ、それね。毎回毎回は行ってられないわよ。」
「毎回って・・・そんな頻繁にやらないでしょ?」
「まぁ・・・5年に一回くらいだけど・・・会う度に、お互い歳とっていくのがわかって・・・なんかね〜・・・」
笑いながら言った。
「智子だって、中学、高校と卒業して大人になったらわかるわよ。最初の方は懐かしくって喜んで行ってたけど、30、40となってくるとね〜・・・まぁ、さらに歳をとってしまえば、そんなこと気にもなんないんだろうけど。」
・・・・・・わからない・・・でもない・・・
「・・・じゃあさ・・・なんで今さらハガキ見てたの?」
「久しぶりに中学の友達から電話あって・・・担任だった先生が亡くなったって・・・・・・その時の同窓会に見えてたみたいでね・・・そういう事になるんだったら・・・行けばよかったかなぁって・・・」
お母さんの声が小さくなってくのがわかった。
「・・・さっ、着替えといでよ。汚れ物は洗濯機に入れといてね。」
急に話を切り替えてきて、あたしは素直に言う事をきいた。
今は、一人の方がいいだろうって思えて・・・
誰だって、そんな不幸な知らせが来たら・・・後悔するよね。


あたしはしばらくの間、自分の部屋でくつろいでいたけど、その後、夕飯の手伝いをしに台所にいた。
部活の事とか、友達のこととか、たわいもない会話をしながら。
なんとなく、お母さんを元気づけたかったんだろう。

大人のあたしなんて、こんなこと気にもかけなかったかも・・・
歳をとれば、親のありがたみがわかるなんていうけど・・・あたしは子供に戻ったことでわかるようになっていた。

毎日毎日朝早く起きて、ごはん作って、洗濯して、掃除して。
家族の為に尽くして尽くして。
帰ってきたあたしやお父さんの話し相手になって・・・
お母さんは、今の人生楽しいのかな?なんて思うこともあるけれど・・・
笑いながら話してくれる姿見てると、そんな疑問も薄れてしまいそうだった。
ふと、大人だったあたしに言った言葉を思い出す。


「・・・生きてるうちに、孫の顔が見たいわね〜・・・」


その時はうんざりと思っていたけど・・・その願いを叶えてあげたくなった。


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