春休み最後の日。 部活を終え、帰宅した。 明日から3年生だけど、部活にはさほど関係なく毎日のように練習があった。 入学式が終われば、新入部員も入ってくるだろうから、多少実感が湧いてくるかも。
そして部活の後、春休みの間はいつもよりも長く、松井君と一緒にいることができた。 そのせいで、家に着いたのは、夕方だった。
「・・・ただいま〜」 ・・・・・・ いつもの返事がない。 買い物にでも行ったのかな?
ここら辺は田舎だから、出掛ける度に鍵を閉めるという習慣がなかった。 いつでもオープン・・・だからといって、ドロボウがいるわけでもなく。 平和でなにより・・・
あたしは荷物を階段に置き、手洗いをしてから台所へと向かった。 おやつになるような物を探し、食品庫の中ら、菓子パンを見つけ頬張った。 ふと飯台の上のハガキに目をやる。 何かの郵便物だろうと手に取った。
第16回・・・卒業生・・・同窓会・・・!? これはお母さんの同窓会のハガキだ。 日にちは・・・とっくに過ぎてる。 1月に開催されてたみたい・・・ 返信用のハガキはないから送ったんだろう。 でも・・・お母さんがそれらしきところに出掛けた覚えもないし、話も聞いてない。 ってことは・・・欠席したんだ。 ・・・・・・ ・・・―――!! そういえば・・・・・・あたしも・・・来てた。 ・・・同窓会のハガキ・・・ 中学生に戻る直前に、届いてた! しかも・・・中学のだったな・・・ そのハガキを見て、忘れていた中学時代を、一瞬だけど、思い出してた・・・ そして、眠りについて・・・母に起こされた時は・・・
「あらっ、お帰り〜。」 ――っ・・・ いつの間にか母が帰ってきて、台所に入ってきた。 「・・・どっか行ってたの?」 「うん、回覧版回してきたの。」 そう言いながら、お母さんはエプロンをつけだした。 「・・・あたしが持っていったのに。」 「急ぎだったからね。ありがと、今度お願いね。」 鼻歌でも歌うような感じで、夕飯の支度にとりかかる。
お母さんは、あたしが中学に戻ってから、ずっとこんな感じだ。 口を開けば文句しか出てこなかった時と違い過ぎる。 まぁ、元々怒ってばっかの人なんて、いないしね。
「・・・同窓会・・・行かなかったの?」 あたしは椅子に腰を下ろし、ハガキをペラペラっと振った。 「え〜?・・・あぁ、それね。毎回毎回は行ってられないわよ。」 「毎回って・・・そんな頻繁にやらないでしょ?」 「まぁ・・・5年に一回くらいだけど・・・会う度に、お互い歳とっていくのがわかって・・・なんかね〜・・・」 笑いながら言った。 「智子だって、中学、高校と卒業して大人になったらわかるわよ。最初の方は懐かしくって喜んで行ってたけど、30、40となってくるとね〜・・・まぁ、さらに歳をとってしまえば、そんなこと気にもなんないんだろうけど。」 ・・・・・・わからない・・・でもない・・・ 「・・・じゃあさ・・・なんで今さらハガキ見てたの?」 「久しぶりに中学の友達から電話あって・・・担任だった先生が亡くなったって・・・・・・その時の同窓会に見えてたみたいでね・・・そういう事になるんだったら・・・行けばよかったかなぁって・・・」 お母さんの声が小さくなってくのがわかった。 「・・・さっ、着替えといでよ。汚れ物は洗濯機に入れといてね。」 急に話を切り替えてきて、あたしは素直に言う事をきいた。 今は、一人の方がいいだろうって思えて・・・ 誰だって、そんな不幸な知らせが来たら・・・後悔するよね。
あたしはしばらくの間、自分の部屋でくつろいでいたけど、その後、夕飯の手伝いをしに台所にいた。 部活の事とか、友達のこととか、たわいもない会話をしながら。 なんとなく、お母さんを元気づけたかったんだろう。
大人のあたしなんて、こんなこと気にもかけなかったかも・・・ 歳をとれば、親のありがたみがわかるなんていうけど・・・あたしは子供に戻ったことでわかるようになっていた。
毎日毎日朝早く起きて、ごはん作って、洗濯して、掃除して。 家族の為に尽くして尽くして。 帰ってきたあたしやお父さんの話し相手になって・・・ お母さんは、今の人生楽しいのかな?なんて思うこともあるけれど・・・ 笑いながら話してくれる姿見てると、そんな疑問も薄れてしまいそうだった。 ふと、大人だったあたしに言った言葉を思い出す。
「・・・生きてるうちに、孫の顔が見たいわね〜・・・」
その時はうんざりと思っていたけど・・・その願いを叶えてあげたくなった。
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