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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第73回   73
卒業式がやってきた。
これが終われば春休み。
そしてあたしらは3年生となる。


「・・・よっし・・・行ってくるね。」
「頑張れ!美樹!!」
あたしときょんちゃんに見送られ、美樹は式を終えた3年生達が雑談しているところへ入っていった。
他の在校生も沢山姿がある。
下校までの一時、別れの挨拶の時間だ。
部活の先輩後輩、仲の良い者同士、気持ちを打ち明け、第2ボタンをねらう者、様々である。
美樹は第三者だ。

あたしらに気持ちを打ち明けて以来、かなりの積極的な行動をとっている。
昼休みに会いに行ったり、バレンタインに手作りチョコを渡したり、受験のお守り渡したり・・・
木村先輩にしてみれば、戸惑うのは無理もない。
あたしの友達ってこともあるし、いいように利用されるとわかっていた相手、ということもあって、なかなか心を開いてはくれないみたい。
会話はそれなりに弾んでるみたいだけど、美樹に言わせれば、まだまだ社交辞令程度だとぼやいてた。
それでもあきらめない、の一点張りで、先輩が中学校生活最後の日に決めてみせると意気込んでいった。
正直、美樹がこんな恋愛に対して積極的だったなんて、初めて知った。

そして20分くらいたってから、ハンカチ片手に走ってくる美樹がいた。
―――だめ・・・だったか?
とっさにそんな予感がしたけれど、握られた拳をゆっくりと開いて見せた。
「――!!・・・」
そこには、校章入りのボタンあった。
「もらえたの!?」
「やったじゃん!!」
あたしときょんちゃんは美樹の腕を掴んだ。
「もらえたのはもらえたけど・・・つきあうのはだめだった・・・」
「えっ・・・そっか・・・」
笑顔が一瞬にして曇る。
「・・・でも・・・」
美樹の顔が再び笑顔に変わっていく。
「・・・来年同じ学校になったら、考えてくれるって。」
「えっ?・・・それって・・・」
「高校一緒のとこ来たらって・・・こと?」
「・・・うんっ!!」
そう言ってVサインをした。
「やったじゃん!!美樹っ!」
「でも大丈夫?先輩って松高でしょ?」
「そんなの、頑張るに決まってんじゃん!よ〜し、今日から勉学に励むぞ〜っ!!」
「じゃあ、みんなで松高行こうね!・・・あ・・・智子は・・まだ決めてなかったね。」
きょんちゃんが、申し訳なさそうに言ってきた。
「あ・・・うん・・・・・・でも、決めた。・・・あたしも松高にする!」
「ほんとに!?やった〜、3人で合格しようね!」
美樹ときょんちゃんが抱きついてくる。

あんだけ悩んでたのに、とっさに出た答えだ。
たしかに西高に行った方が、将来は有望だろう。
でも、今のあたしは未来のことより、目の前の親友・・・そして松高だったら、笹工に行くであろう松井君との交際も、学校の距離が離れていないから、うまくいきそうに思ってしまった。

結局、幾つになっても、人生やり直せても、あたしは目の前のことしか考えれないんだ。
やっぱり、全然学習していない・・・



春休みに入った日曜日。
あたしときょんちゃんは美樹の家に来ていた。
部活が休みと知っていた美樹は、勉強会をするといい出し召集をかけたのだ。
思い込んだら即行動派みたい。

「あ〜ん、どうしてあたしはこんなに馬鹿なの〜!!」
問題集をやり始めて1時間たつ頃、美樹は机にもたれて嘆いた。
「まだ始めたばっかじゃん・・・ほらっ、やるよ。どこがわかんないの?」
こうして3人で集まって勉強するのは初めてではない。
テスト前には何回かやったことがあるけど、その時からきょんちゃんは美樹の指導係になっていた。
あたしは、人に教えるのは下手くそだ。
たぶん国語の成績が良くないのも、それに比例してそう。

コンコンッ
ガチャッ
ノックと同時くらいに部屋の扉が開いた。
・・・前にもあった光景だ。
「やっほ〜、久しぶり〜。」
「おねーちゃん!?・・・あ、そっか〜。大学も春休みだったね。今日バイトは?」
「休みだよ〜。連休取ったし。」
あたしときょんちゃんは同時にお辞儀をして挨拶をした。
「こんにちは。」「お邪魔してます。」
「どうぞどうぞ、遠慮しないでくつろいでね〜。あっ、そうだ。プリン買ってきたから食べない?今持ってくるわ。」
「え〜っ、ちょっとおねーちゃん!あたしら今勉強中だよ。なんでそんな誘惑するかな〜!」
「じゃ、美樹だけ食べなきゃいいじゃん・・・二人には持ってくるから待っててね〜。」
「あ〜!!ずるい〜っ!!」
部屋を出ていった美加さんを、美樹は追いかけていった。

「クスクス・・・相変わらず仲いいよね〜。おねーちゃんだとそうなのかな〜?」
きょんちゃんには3つ違いのお兄さんがいるけど、当然のように美樹たち姉妹のような仲ではない。
まぁ、美加さんが姉っていうのが羨ましいのもあるだろう。
あたしだって、あんな美人なお姉さんいたら自慢できちゃう。
そういえば・・・美加さんと会うのは、夏祭り以来だ。
あの時は頭の中が混乱してたけど・・・美加さんは、松井君の気持ち知ってたんだよな・・・
―――・・・あたしじゃダメなんだ・・・―――
その言葉が思い浮かぶ・・・
弟みたいな存在だって言ってた。
でも・・・・・・ほんとのところ・・・どうなんだろ?
あたしが知ってる未来では・・・結ばれた二人なんだし・・・

不安が一気に襲ってきた。


「お〜いし〜!頭使った後のプリンは最高だね!」
「どんだけ使ったのよ、ほんっとに調子いいんだから。」
美加さんがすかさず突っ込む。
「「クスクスクス」」
机の問題集は一旦片付かれ、代わりに、プリンにスナック菓子、飲み物が用意された。
「・・・そういえば・・・二人とも、彼氏できたんだって〜?」
「「―――!!」」
美加さんの言葉にあたしときょんちゃんは顔がひきつった。
「きょんちゃんは夏祭りの時からなんでしょー!?あの時彼氏いないなんて言ってたけど、いたようなもんだったんじゃん。えっと〜・・・田口君・・だったよね?」
「あ・・・はい――//」
「もう、すんごい仲いいんだよ〜。‘‘たけし君‘‘、‘‘京子‘‘、って呼び合ってるもんね〜。」
「――美樹ってば//」
顔が赤くなるのは変わらないけど、きょんちゃんたちはだいぶ親密になった。
人の目を気にせず、一緒にいられるようになったし、部活帰りも途中までだけど一緒に毎日帰ってるし。
きょんちゃんが「たけし君」と呼ぶようになって、田口君の下の名前が「武」ということにも改めて気付かされた。
仲がいい松井君もケンちゃんも、苗字でしか田口君のこと呼んでないから、いま彼を「たけし君」と呼ぶのは、家族ときょんちゃんくらいだろう。
「へ〜、なんかいいね〜。名前で呼び合うって、新鮮だよね〜。あたしくらいの年齢になると当たり前だけどさ・・・・・・じゃあさ・・・智子ちゃんたちは?」
「――っ・・・え・・・」
あたしにも振ってくるとは思っていたが、やっぱり固まってしまう。
「リョーマからなんて呼ばれてんの?」
確認することなく当然のように、松井君をあたしの彼氏として話している。
美樹から聞いていることだから、当たり前なんだろうけど・・・
「そういえば・・・まだ‘‘智子‘‘って・・・呼んでないよね?」
美樹が代りに言ってきた。
「そう言われると、そうだね・・・智子も・・・ずっと‘‘松井君‘‘だね・・・」
きょんちゃんも後に続く。
「そうなの?何?二人とも案外奥手なの?」
再び美加さんがあたしに顔を向ける。
「え・・・いや・・・」
「・・・奥手ではなさそうだよね。特にリョーマ君・・・」
またもや美樹が入ってくる。
「ちょっ・・なに言って――っ」
「やっぱり!?絶対そうだと思った〜。生意気なとこは前々からわかってたけど、な〜んか妙に大人びてるもんね、あの子。」
美加さんは、あたしが止めるのも遮って、話に乗ってきた。
「この間なんてさ〜、智子が日直で、もう一人の男の子と日誌の事で、書く書かないのやり取りしてた時。」
「あぁっ、あの時ね!」
きょんちゃんも話に乗ってきた。
「ちょっとっ、二人ともやめてよっ!」
あたしが制止するのなんて、これっぽっちもきいていない。
「リョーマ君からみたら、じゃれあってるように見えたんじゃない?いきなりツカツカツカーって教室に入ってきて、日誌を片手に智子を連れ出してさ〜。」
「え〜っ!?それでそれで?」
「その男の子をまるで無視で‘‘俺が書いたる‘‘って自分の教室連れてったんだよ〜!」
「なにそれ〜!?っていうか、全然ガキじゃん!日直ごときで嫉妬なんて〜、あはははは〜!!」
大爆笑の美加さん・・・手で机をバンバン叩きながら笑ってる。
「そうだね、奥手とかどうとかじゃなく、智子のこと独り占めしたいって感じだよね〜。」
「あはははは〜・・・そっかそっか〜、そんだけ智子ちゃんのこと好きってことなんだ〜。」
―――//・・・・・・は・・・恥ずかしすぎる言葉だ・・・
「でも、松井君ならとっくに智子のこと名前で呼びそうなのにね。」
きょんちゃんが、最初の話題に戻った。
「話したことないの?お互いの呼び方について。」
美樹も食いついてきた。
「・・・・・・ない・・・というか、別に考えたこともなかった。」
「「そうなの!?」」
「だって・・・今までの呼び方が・・・当たり前になってるし・・・今さら違う呼び方なんて・・・」
「‘‘リョーマ君‘‘なんて、別に普通じゃん。あたしが呼んでんのが、なんか変みたいじゃん・・・」
美樹は申し訳なさそうに言った。
「まぁまぁ、二人には二人の呼び方があるのよ。そのうちに名前で呼び合えるかもしんないし・・・周りがどうこう言うことじゃないのっ。」
美加さんが、大人らしい発言でこの話題を終わりにした。

確かにあたしらは、一緒にいる時間は増えたけど、お互いのことを下の名前で呼ぶことはなかった。
向こうは、‘‘山田‘‘、‘‘あんた‘‘、‘‘おまえ‘‘って感じで、あたしはずっと‘‘松井君‘‘だ。
この呼び方に慣れたっていうのもあるけど、下の名前で呼ぶことにすごく抵抗がある。
・・・ただ単に、恥ずかしいってだけなんだけど・・・



それから、再び机に問題集が並ぶことはなく、夕方になりバスで来たあたしときょんちゃんは、美加さんが車で送ってくれることになった。
「美樹は夕飯の支度やっときな。」
美加さんは美樹に留守番を言いつけ、3人で車に乗ることになった。


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