次の日―――
昨日はずっと、松井君との一日を思い返してばかりで、少々寝不足気味だ。 それでも朝のお手入れは手を抜くことなく・・・というか、普段より気合いが入ってしまった。 お母さんに時間を言われ、あわてて家を飛び出した。
学校に着き、げた箱で靴を履き換えながら、浮かれてばかりいられない事情を思い出す。 まずは、木村先輩のこと。 先輩のおかげでつきあえることになったけど、散々嫌な思いをさせたことには変わりがない。 でも、そのことを改めて謝りに行くのも変だし、ましてやお礼を言うなんてありえないし・・・。 あとは、みんなへの報告。 ・・・やっぱ、言わなきゃ・・・だよね。 美樹もきょんちゃんも・・・それに田口君やケンちゃんだって・・・ みんなに気遣いさせてしまってたし。 でもな〜・・・ケンちゃんに対しては頑なに否定してたのが、今になって恥ずかしいんだけど・・・。
考えながら歩いていたら、教室の見える廊下にまでやってきた。 すると、あたしの姿を捕らえると同時に、美樹ときょんちゃんがバタバタとこちらに走ってきた。
「?・・・あ・・・おは――っ!」 あたしは親友二人にいつもの挨拶をしようとしたけど、何故か目の前に紙吹雪が・・・
・・・・・・へ!?
美樹ときょんちゃんは、「おめでとー!!」なんて笑いながら、手に持っていた紙吹雪を全てまいてきた。
・・・おめでとう・・・って・・・――!! えっ・・・えっ!? 美樹は、ニヤっと笑って、あたしの腕を掴んだ。 「さぁてと・・・事細かく報告してもらおっか。」 「えっ!?・・・な・・んで・・・?」 きょんちゃんも、ニッコリしながらもう片方の腕を掴んできた。
・・・・・・間違いない・・・この二人・・・知ってる。
「こら――っ!なんだこの紙くずは――!」 通りかかった先生が、あたしらの足元に散らかっている、紙吹雪に気づいてやって来た。 「げっ・・やば・・・・・・すみませ〜ん・・・すぐ拾いま〜す。」 美樹がすぐに謝り、ほうきとちりとりを取りに行った。 そして、何故かあたしまで一緒になって、ここの始末をさせられた。
昼休み――― 結局10分間の休憩では、全てを話すことはできず、前もやってきた人通りの少ない階段のところで、改めてあたしの報告会が始まった。 「それより・・・なんで、二人とも知ってたの?」 最初に出てきた疑問だ。 その質問に、二人とも顔がひきつった。 「・・・あたしはっ・・・美樹に・・・聞いたんだよ。」 そう言いながらきょんちゃんは美樹を横目でチラッと見た。 「・・・まず・・・最初に言っておくね・・・――ごめんっ!!」 美樹は手を合わせて謝ってきた。 「え・・・なに・・?」 「・・・実はさ・・・あたし・・・公園での二人を・・・見てたんだ・・・」 「・・・え・・・え――っっ!!」 思わず叫んでしまった。 ・・・見てた? ・・・あたしらを? ・・・あれを? あたしは、公園で抱き合った時のことが真っ先に思い浮かんでしまった。 「〜〜〜なっ・・・なんで・・・//」 怒るよりも、恥ずかしさがまさっていた。 「ほんっと、ごめん・・・・・・しかも・・・あたし一人じゃなくて・・・」 ・・・えっ?美樹だけじゃなくて・・・? 「その・・・木村先輩と・・・見てた・・・」 ―――・・・っ 空いた口が塞がらないとはこのことか・・・? 「金曜の放課後にね・・・あたし先輩に謝りに行ったの。」 ・・・・・・え? 「・・・ダブルデートの件は無しにしてほしいって・・・勝手に割り込んで申し訳ないって。」 ・・・・・・そう・・なの? じゃあ・・・先輩は知ってて・・・ 「先輩さ、あたしの考えわかってたみたいで・・・日曜に、智子には内緒で来て欲しいって・・・リョーマ君のことも呼び出すから、二人がうまくいくのを見届けようって・・・」 ・・・う・・・そ・・・ 「それであたしは、待ち合わせの場所から見えないところで隠れて見てたんだ。先輩も後から合流して・・・また、ケンカでも始まるんじゃないかとヒヤヒヤしてたけど・・・・・・まぁ、うまくいって良かった〜。」 「〜〜〜//・・・どこまで・・・見てたの?」 「二人が公園出てからはついて行ってないよ。あたしも先輩も歩きだったし。」 「・・・そう」 まだ・・・ましか・・・海辺のことは・・・――ブンブンっ! 頭の中で、浮かんできたシーンを打ち消した。 「あたしはさ、昨日の夜に電話で聞いて。そりゃあもう、びっくりだったけど・・・でも・・・ほんと良かった。」 きょんちゃんの最後の言葉が胸に響いた。 「・・・・・・なんか・・・ありがと・・ね。」 他にもいろいろ言わなくちゃいけないんだろうけど、あたしにはこれが精一杯だった。 「智子・・・今まで嫌な思いしてきたんだから、もう我慢しちゃだめだよ!」 美樹が、うって変わって、真剣な眼差しで言ってきた。 「・・・え?・・・我慢って?」 ・・・なんのことだ? 「二人が行った後、先輩とちょっと話したんだ・・・1年生にリョーマ君のことで呼び出しされたこと、聞いたよ。」 ―――っ!・・・・・・そのこと・・・か。 「もしまたそんなことあったら、あたしが助けるからっ!絶対言ってね!」 ・・・・・・美樹・・・ 美樹の目は真剣そのものだ。 「周りのやつらのことなんて、気にしなくていいんだからっ。何を言われても、リョーマ君との事だけ考えておけばいいんだからっ!」 「そうだよ・・・智子あたしに言ってくれたじゃん・・・田口君とつきあい出した時、周りの目なんか気にするなって・・・やっつけてくれるって・・・あたしも同じだよ。智子のこと守るよ。」 ・・・・・・きょんちゃん・・・
あたしって・・・・・・こんなに恵まれてていいのかな・・・
「・・・・・・ありがと・・・」 胸がいっぱいで・・・それしか言えない・・・
「でもさ・・・」 美樹が思い出しながら話す。 「・・・・・・やっぱりリョーマ君は、智子のことだいぶ前から好きだったんだね〜。」 「――っ・・・なに・・言ってんの?//」 「だって〜・・・先輩言ってたよ?智子のこと協力してもらおうと思ってリョーマ君に頼んだ時、いろいろ文句をつけて、智子のこと止めた方がいいって言ってたらしいけど・・・あれは完全に邪魔してたんだなって。」 「それはっ・・・ほんとのこと言ってただけじゃん・・・別にそういうんじゃ――」 「まぁまぁ、照れない照れない・・・あぁっ・・・あの時あの子が来なきゃね〜・・・」 美樹はそう言いながら、横目で見ながらニヤけた。 ・・・―――っ//!! 「なになに?なんのこと?」 きょんちゃんには言ってなかったことか、興味津津に聞いてくる。 「・・・智子のファーストキス、見れたかもしんないのに〜っ!」 「え〜〜っ!!・・・キ・・キス・・・?・・・もう!?」 きょんちゃんが顔を赤くしながらあたしを見た。 「〜〜〜っちがっ・・・美樹っ!!勝手に想像しないでよっ!」 きょんちゃんの赤さが移ってか、もしくはすでに赤くなっていたのか、あたしは猛烈に熱かった。 ・・・・・・っていうか・・・絶対に、海でのことは言えない。 きょんちゃんのあの反応からすると、田口君とは、まだ・・・だろうし・・・ 美樹だって、冗談で言ってるだけで、本当にしてるなんては思ってないだろう。 じゃなきゃ、ここまで冷やかしてはこなさそう・・・
「ねぇねぇ、あの後どこ行ったの?」 「えっ!?・・・」 「どっか行ったんでしょ?会話は聞こえなかったけどさ、自転車乗ってどこ行ったの?」 「・・・どこって・・・・・・ドライブ・・だよ。」 「ドライブ!?」 「・・・そう!・・・自転車でドライブ!!」 「ふ〜ん・・・そっか〜・・・でも、デートしたってことだもんね〜・・・」 美樹はまたもや想像の世界に入りそうだった。 「それよりさっ・・・」 あたしはこれ以上詮索されないよう、話を振った。 「・・・木村先輩と・・・けっこう話したの?」 「えっ・・・あぁ・・・うん、まぁね。最初は二人のことだったけど、そのうち違う話もしたよ。」 「どんな?」 その話題にきょんちゃんも乗ってきた。 「受験のこともそうだし・・・自分の進路についても・・・あとは・・・家族の事とか。」 へぇ〜・・・そうなんだ・・・ 「ふ〜ん・・・」 あたしもきょんちゃんもさほど気にすることなく相槌をうっていた。 ・・・が。
「・・・あたしさ・・・けっこう先輩のこと、タイプかも・・・」 ボソッと・・・美樹はボソッと言ったんだ。
「「・・・・・・――え―――っ!!??」」 同時にあたしらは叫んでしまった。
聞いてみれば、顔は元々かっこいいし、あたしと松井君を取り持ってくれて優しいし、話してみれば、なかなか合うし・・・非の打ちどころがないじゃん。 という結果らしい。
美樹は前に約束してた通り、いい人ができたら即報告をしてくれた。 あまりにも唐突で、あたしときょんちゃんは戸惑ってしまったけど・・・
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