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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第7回   オバタリアン参上
恐怖続きの授業も午前中を無事終えた。

給食を食べ、やっと一息できる。
・・・はずだったのに・・・

「キャ〜!ほんとに!?すっご〜い。それでそれで?」
「えっとね〜、なんか一緒に帰ることになってさ〜・・・」
「え〜っっ!!うっそ〜、いいなぁ〜。」

・・・耳を塞ぎたくなるほどの大きな声での会話が繰り広げられる。
クラスの女の子5、6人で恋バナというか、ガールズトークというか・・・

なんか学生の頃って、妙に大声で話してたよなぁ。
そして妙に、明るく楽しく過ごしてます、みたいな自分を作ってた。
そうすることで、周りから明るい子なんだと思われたかったんだろうね。

・・・アホらしい・・・

ほとんど会話なんてうわの空で、この場から去りたいんだけど、きょんちゃんが腕に巻きついて離してくれなさそう。

「あ〜あ、あたしも松井君と帰りた〜い。」

ふとその名前に反応する。

・・・そっか、この子好きだったよなぁ・・・松井君のこと。
でもあっさりフラれて次の男の子に乗り換えてたっけ?

北田 弘子。
この集団のリーダー的存在だ。
今日も彼女の呼びかけで集まった。

「・・・おっ!!噂をすれば・・・ほらっ!」

教室の後ろのドアから松井リョーマとその友達が入ってきた。

そういえば、3組に仲のいい子がいたっけ?
松井君が向かう男の子に目をやった。

田口 武。
同じサッカー部の子だ。
この子もなかなかモテてたような・・・

松井君とはちょっと違うタイプでムードメーカーというか、まぁ、悪ふざけをするやんちゃ坊主みたいな感じだったな。

休み時間にちょくちょく来てたから、その度に、いま目をキラキラさせてる弘子がはしゃいでたわ、そういえば・・・

この女子軍団が一斉に松井リョーマに視線を向けてるものだから、いやでも本人は気づいてしまう。

「きゃーっ、こっちみてるよ〜、どうしよ〜。」
少し小さめの声でその子がはしゃぎ、隣の子の腕をバンバン叩いてる。

「なに?おまえらまたリョーマ目当て?」

声を掛けてきたのは、田口君だ。
ニヤニヤしながらこっちに近づいてきた。
冷やかしたい願望丸出しだ。

「いいかげん教えろよ。この中で誰がリョーマのこと好きなんだよ。」
「はあ?何言ってんのよ。」
弘子は強気で言い返す。今バレては困るからだろう。
「おれが取り持ってやるからさ。な、チャンスだろ?」

あきらかに嘘だ。

でも弘子にとっては、魅力の言葉だろう。
「・・・・・・」
何も言えなくなってしまう。

田口君は一人一人の顔を眺め犯人を探そうとしている。

あたしとも目が合った。

「・・・山田は・・・違うもんな〜。」

・・・なに?それ?・・・

思わず突っ込みたくなった。
なにか言いたげのあたしに、にやけながら更に続けた。

「ほら〜、おまえには近藤がいるもんな〜。」

−−−っ!!

頭が一気にフル回転する。
交換日記にも書かれてあった人物だ。

確かにこの頃のあたしは同じクラスの近藤君に恋してた。
中学に入って初めての恋の相手だ。
そして、何故か告白もしてないのに周りにばれてしまってた。
こいつにはそのことで何度か、からかわれたのを思い出す。

「あれっ、近藤いないな〜。どこ行ったんだよ〜。山田、おまえ奥さんなんだから知ってんだろ?」

だんだん調子に乗ってきている。
言い返してこいよ、と言わんばかりの口調だ。
・・・・・・

「・・・ちょっと、やめなよ!」

黙っているあたしの隣できょんちゃんが言い返した。
かばってくれたんだろう。

「ああっ!!実は中田なんだろう?リョーマのこと好きなの。」

適当もいいところだ。

「はあ?違うわよっ。なんでそうなるのよ。」
「またまた〜、焦ってるところがあやしいなぁ・・・」
からかいの矛先があたしからきょんちゃんに変わってしまった。

・・・・・・−−っ!!
バンッ!!

立ち上がったあたしを一斉にみんなが注目した。
もちろん田口君も。

「・・・ガキ」

上から睨むように発した。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

辺りが心なしか静かになった。
そんなこともお構いなしにあたしは続けた。

「あんたの言ってることは、低レベル過ぎるんだよ。・・・もう一回小学校行ってくれば?いや・・・幼稚園のほうがいいかも。人としてやり直してきたら?」

決して大声ではなく、ゆっくりと言い放った。

・・・・・・ん?

ここだけでなく、教室全体の空気が止まってる。
そしてみんなあたしに注目している。
というより目が離せないといった方がいいだろうか・・・

・・・−−しまった!
・・・そっか。

あたしはみんなと同じ中学1年なんだ。
さっき言ったようなこと、この頃のあたしは・・・絶対言ってないな。
30歳のあたしだからこそ言ってしまったんだ・・・

ふと、松井君と目が合ってしまった。
彼もあたしが発した言葉を聞いていたはずだ。
そして朝の松井君との会話を思い出した。

・・・あれも今のあたしだから食ってかかったんだ。
昔のあたしなら何も言えなかったもん。

・・・オバタリアン・・・

この言葉がよみがえる。
若い頃は言いたいことが言えなかったが、歳をとると平気で言えちゃう・・・なんて、まさしくオバタリアンだ・・・
古い言葉だけどね・・・

あたしはとりあえず、トイレへと逃げ込んだ。


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