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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第69回   69
ゆっくりと、お互いの唇が離れる。
そしてゆっくりと、いつの間にか瞑っていた目を開ける。
視線は相変わらず、まともに向けられずにいた。
これ以上にないくらい、胸のドキドキはおさまらず、この後の行動をどうとっていいか全くわからなかった。

「――――――っ・・・・・・」
そのままギュッと抱きしめられ、再び松井君の胸の中へと顔がうずくまる。
そして、ボソボソっと呟いたのが・・・確かにこう聞こえた。



「・・・・・・重症かも・・・」



・・・・・・うん・・・あたし重症だ。
・・・このフレーズ・・・前も思ったことある。

――!?――ってか、ちがうちがうちがうっ!!
今のっ、松井君が言ったの!?

一人で乗り突っ込みを頭の中で繰り広げていたが、思わず顔を見上げた。
と、その拍子に体が後ろに倒れていく・・・
バサッ――!
・・・ううん・・・――倒されてる!!
「――えっ・・ちょっ――っ!!」
それしか発することができなかった。
あたしの唇は、またもや塞がれてしまっていた。
さっきのよりも、少し荒さが感じられる。
「――んっ―――・・・」
―――っ・・・ちょっと・・・これって・・・やばくない!?
あたしは、すでに押さえつけられている両手を動かそうとしたが、ピクリとも動かない。
「――ちょっ・・・ん――っ・・・」

時折、唇が離される隙に、抵抗しようとするものの、すぐに塞がれ遮られる。

――っ・・・このままだと・・・――っ・・・嘘でしょ――!?
――――――やばいってば―――・・・

「・・・ん・・・?」

息苦しさから解放された。
目を開けると、・・・あたしを上から見下ろしている。
でも、両手はそのままで、身動きができない。


「〜〜〜――っ・・・//」
「・・・・・・やっぱ・・・ここじゃあ、まずいよな・・・」
「―――//!!」
まずいって・・・なに!?
ここじゃなきゃ・・・って、続きがあったってこと!?

押さえつけられている力が緩くなって、そのまま腕を引っ張られ体が起き上がる。
「・・・砂・・・ついた?」
松井君は、なおも冷静に気遣う。
「・・・大丈夫・・・//」
あたしは解放された手で、髪の毛をはらった。
「・・・やっぱ、寒いな・・・自販機探してくるわ。」
松井君は、上着のポケットに手を突っ込んで歩いて行った。
「えっ・・・あぁ・・・うん・・・」
ほんとは一緒に行こうかと思ったけど・・・・・・止めといた。

・・・・・・
・・・と・・・とりあえず・・・もう・・・しないよね?
この先なんて・・・今のあたしには、ハードすぎる!
っていうか、あたしら中学生・・・だよね?
つきあいましょ、ってなってから、1時間経つか経たないうちに、もうキスしてしまうことすら早すぎるでしょ!?
大人になってからのつきあいでも、こんな早い展開になったことないよ?
それはそれで、おかしいのかどうかわかんないけど・・・
まるで動じない松井君と、テンパってるこのあたしとの差はなに!?
松井君って・・・ものすごい、手が早いとか・・・?
歳の割に、大人びてるもんなぁ・・・
・・・・・・もしかして・・・既に・・・経験済み・・・とか!?
初めてにしては・・・うますぎ・・というか・・・//
・・・・・・だとしたら、いつ?誰?――――――って・・・美加さんしか出てこない・・・
・・・――っなに考えてんの、あたし・・・
・・・はぁ〜・・・
そんなこと聞けるわけないし、聞いたところで・・・ショックうけそう・・・


ふと目の前の海を眺める。
そして、体育座りのまま両膝を腕で抱え込んで、顎を膝につけた。
・・・ザザァ・・・ザザザァ・・・
幾つになっても、波の音って癒されるな・・・
・・・ザザァ・・・ザザザァ・・・
・・・・・・
さっきまでのモヤモヤがスーッと、消えていく。
あたしは松井君が来るまで、この癒しに浸っていた。


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