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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第67回   67
こうやって・・・男の人に抱きしめられるの・・・何年振りだろ?
人を好きになったことも、つきあったことも、キスをしたことも、もちろん体の関係だって・・・・・・
それでも・・・今のあたしにとっては・・・初めてになるんだ・・・

・・・だからかな?
すごい・・・ドキドキする―――


・・・・・・コロコロコロ・・・トン―――・・・

・・・・・・ん?
足に何か・・・・・・


「・・・あ〜っ、あった〜っ!!」

――――――っっ!!

すぐさま、あたし達は離れた。

5歳くらいの男の子か、あたしらの足元に転がってきたサッカーボール目掛けて走ってきた。
その後ろから、その子のお母さんらしき人も後を追ってくる。

「・・・・・・・」
松井君は、ボールを足で器用に浮かせ、リフティングを何回かして、手でキャッチした。
「・・・うわぁ〜〜っ、すっげ〜っ!!ねぇねぇっ、もう一回やって〜!!」
男の子は、松井君に近づいてきた。
「――あっくん!・・・これっ!!」
我が子が、何か迷惑をかけると察したのか、母親が急いで駆け付けた。
「・・・ほいっ。」
松井君は男の子にボールを渡した。
「・・・ごめんね〜、ありがとう・・・ほらっ、あっくん、お礼言って。」
あたしたちに声をかけて、その子の頭を下げるように手を置いた。
「やだ〜っ、さっきのもう一回やって〜!!」
あっくんとかいう子は、母親の手から離れ、松井君のズボンを引っ張った。
「こらっ、やめなさいっ・・・ほら、行くわよ。お兄ちゃんたち忙しいんだから・・・あっくん!!」
なかなか手を離さないあっくんを母親は、抱きかかえようとした。

「・・・・・・あの・・・もう一回くらい・・いいですよ。」

松井君は、その子があまりにもかわいそうに思えてか、声をかけた。
「え・・・でも・・・」
母親は、あたしの方にも目をやった。

きっと・・・割り込んできたことを申し訳ないと思ってる感じだ。

「・・・あっくんって、言うの?」
その子の目線に合わせて、あたしはしゃがんだ。
「うんっ、年長なんだ。4月から小学生!」
ふふんっと、自慢げに話してくれた。
「へ〜っ!小学生かぁ。どおりでしっかりしてるね〜。」
「えへへへ。」
照れて頭をポリポリとかいている。
・・・かっわいい〜・・・こんな小さい子と接するのって・・・久しぶり・・・
・・・・・・仕事辞めて以来・・・か・・・

――――っ!
ふと、いたたまれないような感情が走る。

「ねぇねぇ!おにーちゃんっ。もう一回!」
あっくんは、ボールを松井君に差し出した。
「・・・あぁ、いいよ。」
そして、ご要望通りに、リフティングを何回か披露した。
あっくんは、またもや目をキラキラ輝かせて松井君とボールに見入っていた。
母親も傍らで「すごいね〜、あっくん。」と歓声を上げて見守っている。



・・・・・・なんか、この目の前の現状が・・・・・・怖くなった・・・
・・・・・・あたしって・・・いつまでここに・・・いれるんだろう・・・?
とっくに出てきていた疑問が、今改めて浮かんできた。


・・・・・・今のあたしって・・・・・・誰なんだろう・・・



「・・・――ほんとにありがとうね。ほら、あっくん、今度こそお礼言って。」
「ありがとうっ、おにーちゃん!」
「・・・どういたしまして。」
「じゃあ、行こっか。」
「ばいば〜い・・・おねーちゃんもばいば〜い!」

「―――っ・・・あ・・・ばいばい・・・」

あっくんのかけ声に、遅れをとって返す。


「・・・・・・」
「・・・・・・」



なんとなく、無言が続いたけど、松井君はあたしの手を取った。

―――っ・・・

「・・・どっか・・・行こっか。」
「へ?・・・」
「・・・なんか用事あんの?」
「ううんっ・・・ない・・・」
あたしの返事を聞くと、手を握ったまま自転車を止めたところへ歩き出した。
引っ張られるように、後をついて行く。

「・・・・・・海・・・行くか。」
「海!?・・・・・・この真冬に?」
「季節なんて関係あんの?」
「・・・・・・ないの?」
「・・・・・・ない!」

そう言いきると、手は離され自転車へとまたがった。
「・・・ほい。」
当たり前のように、自転車を傾ける。
「・・・あ・・・うん・・・」
夏祭りの帰りがよみがえる。
・・・・・・そして同じ緊張が走る。
あたしは、松井君の背中に掴まりながら後ろの座席に座った。

「・・・・・・今日はまたぐんだ。」
「え?・・・」
何の迷いもなく、またいで乗った。
「だって・・・ジーパンだし・・・変?」
「いや・・・山田らしい・・・行くぞ。」
「あ、うんっ・・・」
あわてて松井君のお腹の前で手を合わせる。
あの時と違って、服の厚みのおかげで密着は、まぬかれた。



・・・そっか・・・普通女の子って・・・横乗りが基本・・・?
自転車の二人乗りのカップルを思い浮かべていた。


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