こうやって・・・男の人に抱きしめられるの・・・何年振りだろ? 人を好きになったことも、つきあったことも、キスをしたことも、もちろん体の関係だって・・・・・・ それでも・・・今のあたしにとっては・・・初めてになるんだ・・・
・・・だからかな? すごい・・・ドキドキする―――
・・・・・・コロコロコロ・・・トン―――・・・
・・・・・・ん? 足に何か・・・・・・
「・・・あ〜っ、あった〜っ!!」
――――――っっ!!
すぐさま、あたし達は離れた。
5歳くらいの男の子か、あたしらの足元に転がってきたサッカーボール目掛けて走ってきた。 その後ろから、その子のお母さんらしき人も後を追ってくる。
「・・・・・・・」 松井君は、ボールを足で器用に浮かせ、リフティングを何回かして、手でキャッチした。 「・・・うわぁ〜〜っ、すっげ〜っ!!ねぇねぇっ、もう一回やって〜!!」 男の子は、松井君に近づいてきた。 「――あっくん!・・・これっ!!」 我が子が、何か迷惑をかけると察したのか、母親が急いで駆け付けた。 「・・・ほいっ。」 松井君は男の子にボールを渡した。 「・・・ごめんね〜、ありがとう・・・ほらっ、あっくん、お礼言って。」 あたしたちに声をかけて、その子の頭を下げるように手を置いた。 「やだ〜っ、さっきのもう一回やって〜!!」 あっくんとかいう子は、母親の手から離れ、松井君のズボンを引っ張った。 「こらっ、やめなさいっ・・・ほら、行くわよ。お兄ちゃんたち忙しいんだから・・・あっくん!!」 なかなか手を離さないあっくんを母親は、抱きかかえようとした。
「・・・・・・あの・・・もう一回くらい・・いいですよ。」
松井君は、その子があまりにもかわいそうに思えてか、声をかけた。 「え・・・でも・・・」 母親は、あたしの方にも目をやった。
きっと・・・割り込んできたことを申し訳ないと思ってる感じだ。
「・・・あっくんって、言うの?」 その子の目線に合わせて、あたしはしゃがんだ。 「うんっ、年長なんだ。4月から小学生!」 ふふんっと、自慢げに話してくれた。 「へ〜っ!小学生かぁ。どおりでしっかりしてるね〜。」 「えへへへ。」 照れて頭をポリポリとかいている。 ・・・かっわいい〜・・・こんな小さい子と接するのって・・・久しぶり・・・ ・・・・・・仕事辞めて以来・・・か・・・
――――っ! ふと、いたたまれないような感情が走る。
「ねぇねぇ!おにーちゃんっ。もう一回!」 あっくんは、ボールを松井君に差し出した。 「・・・あぁ、いいよ。」 そして、ご要望通りに、リフティングを何回か披露した。 あっくんは、またもや目をキラキラ輝かせて松井君とボールに見入っていた。 母親も傍らで「すごいね〜、あっくん。」と歓声を上げて見守っている。
・・・・・・なんか、この目の前の現状が・・・・・・怖くなった・・・ ・・・・・・あたしって・・・いつまでここに・・・いれるんだろう・・・? とっくに出てきていた疑問が、今改めて浮かんできた。
・・・・・・今のあたしって・・・・・・誰なんだろう・・・
「・・・――ほんとにありがとうね。ほら、あっくん、今度こそお礼言って。」 「ありがとうっ、おにーちゃん!」 「・・・どういたしまして。」 「じゃあ、行こっか。」 「ばいば〜い・・・おねーちゃんもばいば〜い!」
「―――っ・・・あ・・・ばいばい・・・」
あっくんのかけ声に、遅れをとって返す。
「・・・・・・」 「・・・・・・」
なんとなく、無言が続いたけど、松井君はあたしの手を取った。
―――っ・・・
「・・・どっか・・・行こっか。」 「へ?・・・」 「・・・なんか用事あんの?」 「ううんっ・・・ない・・・」 あたしの返事を聞くと、手を握ったまま自転車を止めたところへ歩き出した。 引っ張られるように、後をついて行く。
「・・・・・・海・・・行くか。」 「海!?・・・・・・この真冬に?」 「季節なんて関係あんの?」 「・・・・・・ないの?」 「・・・・・・ない!」
そう言いきると、手は離され自転車へとまたがった。 「・・・ほい。」 当たり前のように、自転車を傾ける。 「・・・あ・・・うん・・・」 夏祭りの帰りがよみがえる。 ・・・・・・そして同じ緊張が走る。 あたしは、松井君の背中に掴まりながら後ろの座席に座った。
「・・・・・・今日はまたぐんだ。」 「え?・・・」 何の迷いもなく、またいで乗った。 「だって・・・ジーパンだし・・・変?」 「いや・・・山田らしい・・・行くぞ。」 「あ、うんっ・・・」 あわてて松井君のお腹の前で手を合わせる。 あの時と違って、服の厚みのおかげで密着は、まぬかれた。
・・・そっか・・・普通女の子って・・・横乗りが基本・・・? 自転車の二人乗りのカップルを思い浮かべていた。
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