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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第66回   66

・・・・・・
・・・・・・

どのくらい経っただろう。
実際にはそんな経っていないんだろうけど・・・すごく長く感じられた。

そして・・・やっぱり、先に口を開いたのは、松井君だった。

「・・・なんで・・・ここにいんの?」

「・・・・・・先輩と・・・待ち合わせ・・・してて・・・」

「・・・ふ〜ん・・・」

「・・・・・・」

・・・・・・逃げたい。
・・・・・・この場から・・・すぐにでも逃げたいっ!
だいたいっ・・・何を話すの?

「・・・・・・なんかさ・・・」
松井君はそう言いながら、さっきまであたし達が座っていたベンチに腰をおろした。
「・・・・・・久しぶりだね・・・」
「――っ・・・・・・」
「・・・・・・座れば?」
「・・・・・・」

体が凍張っていたけど、ゆっくりと、そして松井君との距離を、人一人分空けて、ベンチに座った。

周りからは、子供たちのはしゃぎ声が聞こえてくる。
そして、それに対する親たちの笑い声と・・・
向こうからすれば、あたしらはどう見ても中学生の、初々しいカップルに見えるだろう。
お互いに、顔を見ようとはしなかった。

・・・・・・どうしよ・・・座んない方が・・・良かったかも。
・・・・・・帰るタイミングが・・・ない・・・

気温は寒いはずなのに、あたしは体から汗がでてきそうだった。

「・・・・・・俺らさ・・・」
・・・また、沈黙をやぶった。



「・・・・・・つきあおっか。」



――――――っっ!!

すぐさま隣に目をやった。

「なっ――!・・・なに言ってんの!?」
「・・・なにって・・・・・・なんかそういう流れじゃん。」
「・・・・・・は?」
・・・・・・はぁ!?
・・・・・・いやいやいや―――!!
「――違うでしょ!・・・その前にっ・・・いろいろ・・・あるでしょっ!」
「・・・・・・いろいろって?」
「えっ・・・いや・・・だからその・・・」
「・・・お互いの気持ちの確認・・・とか?」
「・・・それはっ――その、そうだけど・・・他にもっ、今までの事からいったら・・・いろいろと・・・」
「・・・あんた・・・先輩のこと好きなの?」
「えっ!?ちがっ・・うよ・・・」
「じゃあ・・・尾上のことは?」
「・・・・・・いつの話してんの・・・」
「じゃあ・・・俺のことは?」
「―――っ//・・・」
・・・なんで・・・そんな、スルっと・・・サラっと・・・聞いてくんの?
「・・・・・・話しかけないで――ってくらい、嫌い?」
「―――あれはっ・・・・・・」
「・・・なに?」
・・・・・・密かに・・・根に持ってるの?
「―――っ・・・あの時は・・・ごめん・・・思わず――っ」
「思わず本音が出たって?」
「――違うってば!自分の気持ちがバレそうだったから・・・――っ!!」
――しまった――!!
まさしく今・・・思わず本音がでてしまった・・・
いつの間にか前のめりになっていたのを直し、ベンチから立ち上がり少し前に出た。
少しでも、松井君との距離を取りたくて・・・
「―――あたしのことよりっ・・・そっちの方が・・・問題だと思う・・・」
「・・・俺!?」
・・・そんなに・・・驚くことじゃないじゃん・・・
その事が・・・一番の・・・あたしの踏みこめないこと・・・
「・・・・・・美加のこと・・・言ってんの?」
―――っ・・・そうやって・・・サラっと呼ぶことすら・・・あたしには・・・耐えらんないっ・・・

「・・・・・・あんた・・・ばかじゃない?」

・・・―――ば・・・か・・・?

「―――なんであたしがばっ―――!?」

――――――!!

ムキになって言い返そうと後ろを振り返ると、それと同時くらいに、自分の腕が引っ張られた。
そしてそのまま、体ごと松井君にぶつかった―――



―――いや・・・・・・抱きしめられていた―――


―――頭が真っ白になりそうにもなりつつ、今の状況に戸惑いは隠せない。
思わず、あたしは両腕を動かそうとした。

でもそれを制するかのように、さらに強い力で抱きしめられた。

「―――ちょっ・・・っ」
「・・・また・・・離すの?」
頭の上から声がする。
「・・・・・・え?」
「・・・前みたいに・・・振りほどくんだ。」
「―――っ!・・・・・・そうじゃ・・・なくて・・・」
・・・・・・そんな言い方されると・・・逃げれないじゃん。
だんだんと・・・力が抜けていく。
あたしは、もう抵抗するのをやめた。

「・・・なんか・・・山田のこと・・・すげぇムカつく・・・」
「・・・なっ――!」
また力が入り、顔を上げた。

――っ!!

が、すぐに松井君の顔がすぐ上にあって、また胸元に顔をうずくまる。

「・・・・・・美加のこと・・・好きなはずだったのに・・・・・・なんか、あんたのことばっか気になってしかたない・・・」
「―――っ・・・・・・」
「・・・・・・尾上のことだって、先輩のことだって・・・ムカついた・・・」
「・・・・・・先生?」
「・・・・・・緑ヶ丘行った時、一緒にいたじゃん・・・」
「・・・あぁ・・・?――あれが!?」
・・・だって・・・あの時って・・・あの日に・・・松井君の気持ち聞いた時じゃん・・・
好きな人がいるって・・・自分も年上の人がって・・・
「・・・おまけに、先輩から告白シーン見せつけられるわで・・・だから、店でみんなの前で言いふらしたんだと思う・・・」
「・・・・・・」
「・・・それでも、自分は美加が好きなはずだって・・・現に・・・美加が帰ってきたらその気持ちはあったし・・・」
「―――っ・・・・・・」
「・・・けど・・・あんたと話さなくなって、姿も見かけなくなった時・・・・・・無性に会いたくなった・・・」
「・・・・・・」
「・・・あんた前に言ったよな?」
「・・・・・・え?」
「・・・本当に好きで好きでたまらなかったら・・・会いたくなるって・・・」
「――――――っ・・・!!」

あたしは・・・松井君の胸の中で・・・小さく、コクンと頷いた・・・

・・・あたしもそうだ。
目の前にするのは・・・すごく怖かった。
・・・・・・でも・・・松井君のことを・・・考えない日なんて、なかった。
話せなくてもいいから・・・・・・ちょっとでもって、松井君の姿を見つけてた。

ほんとに・・・自分でもおかしいくらい、松井君のこと―――好きだ―――


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