「・・・お待たせ。」
――日曜日―― Am9:53
約束通り、公園へでの待ち合わせ。 あたしの方が少し先に待っていた。
「・・・いえ・・・あのっ・・・ダブルデートって・・・言ってたんですけど・・・やっぱり、なしで・・・」 「・・・・・・そっか。じゃあどこ行く?って言っても、範囲が限られてるね。あ、そうだ――っ」 「――あのっ!」 「・・・・・・」 「・・・・・・デートも・・・なしで・・・お願いします。」 「・・・どういうこと?」 「・・・・・・きちんと、お断りしようと思って・・・今日来たんです・・・」 「・・・・・・」 「・・・いくら・・・これが最後って言っても・・・やっぱり・・・できないです。」 「・・・あのさ――っ」 「―――ほんとにっ・・・ほんとに、ごめんなさい・・・」 あたしは深々と頭を下げた。 もう、どんなにあの笑顔で言われても動じないように、決意を固めていた。 「・・・・・・」 しばしの沈黙の後、ふぅ〜〜、っと先輩がため息をついた。 「・・・・・・わかったよ。」 「・・・・・・」 「・・・わかったから・・・もう顔上げて・・・」 先輩の声に、ゆっくりと頭をあげた。 「・・・とりあえず・・・あそこのベンチ座ろっか・・・」 時計台の下にあるベンチへと向かった。 1月も終わりに近いけど、日曜の晴天という事もあって、家族連れの人たちが、あたしたちの前を通って遊具施設のある方へ向かってく姿がチラホラ見える。 「・・・こっちがどんどん攻めれば・・・いけるかなって、思ってた・・・」 「・・・・・・」 「・・・ほんとはさ・・・最初に振られた時点であきらめてたんだ・・・・・・でも・・・夏休みの時の見た時に・・・ほっとけなくてさ・・・強気って聞いてたわりに、案外もろそうだなって・・・だから、今度は攻めていこうって・・・たとえ山田さんの気持ちがその時自分になくても・・・攻めてれば、こっちに振り向くんじゃないかって・・・」 「・・・・・・」 「・・・それに・・・少し間あけてからがいいと思って、文化祭まで待ってたんだ。もしかしたら・・・松井のこと、あきらめてねーかなって・・・」 「――っ・・・・・・」 「・・・けど・・・全然そんなことなかったな・・・」 「・・・・・・え?」 ・・・あたし・・・そんな素振り・・・した覚え・・・ 「・・・・・・あん時、あいついたの、わかってたでしょ?」 「・・・あの・・時・・・?」 「・・・・・・俺と、写真撮った時だよ。」 「――っ・・・先輩・・・待ってる時、気づきました・・・」 「待ってる時?・・・あ、そう・・・・・・まぁでも・・・早くその場を離れたいんだなって・・・そういう感じだったからさ・・・」 「―――っ!!・・・」 ・・・あたしってば・・・最低っ! ・・・全然・・・先輩の気持ち・・・考えてなかった。 自分のことばっかで・・・先輩のこと・・・傷付けてばっかだ・・・ 「・・・こんなこと言っといて、説得力ないかもだけど・・・自分のこと責めるなよ。」 ――っ・・・ 思わず、俯いていた顔を上げた。
・・・先輩は、また、いつもの笑顔だ。
「俺が勝手に、つきまとったんだから。山田さんは、初めっからちゃんと、俺に対して素直な態度とってたし。それこそ、思わせぶりな事なんて、何一つなかったしね。」 そう言って、さらに笑った。 「・・・さてとっ!」 先輩立ち上がって、時計を見上げた。 「・・・20分過ぎたか。そろそろだな・・・」 ・・・・・・? 「・・・ほんとはさ・・・仲いいとこ見せびらかしたかったんだけど・・・」 ・・・?・・・なにを言ってるんだ? 「そうもうまくはいかなかったな・・・」 先輩はそう言いながら、公園入口の方を眺める。
誰か・・・来るの?
・・・――まさっ・・・か!!
頭の回転が一気に回る。と同時にあたしも先輩と同じ方向を見た。
・・・親子連れが歩いている。
・・・勘違い・・・か・・・
そう思い気を緩めた時だった。
―――キキ――っ!・・・ ブレーキの音と共に、その相手を確認する。
――――――っっ!!!
「・・・おっ、来た来た。」 先輩は、自転車に乗ったままのその相手に、手を上げた。 こっちに視線を向けられる前に、あたしは一気に顔を下げた。 ・・・見ることなんて・・・できるわけがないっ・・・
・・・っていうか・・・なんで? なんで・・・・・・松井君がっ―――――!?
松井君は、当然あたしにも気づき、しばらくそのままだった。 「・・・そんなとこ突っ立ってないで、こっち来いよっ!」 先輩が叫ぶ。 その呼び声に、ゆっくりと自転車から降りて、車輪止めを立てた。 そして、またゆっくりと・・・こっちに歩いてくる・・・
・・・・・・わけが・・・わかんないっ。 ・・・・・・どうしよっ―――!
あたしは、近寄ってくる松井君に、恥ずかしさというより・・・恐怖心が出てきた。 まともに顔を合わせるなんて・・・久しぶりすぎて・・・ 今までどうやって彼と接してたのか、わからないくらいだ。
「・・・俺が10時半にここに来いって呼んだの。」 平然と隣で松井君を待ちながら、先輩はボソボソっと言った。 「―――なんでっ!・・・ですか?」 あたしも大声になりそうなのを押さえた。 「・・・まぁ・・・つきまとったお詫び・・・かな?」 そう言ってまた笑う。 「なにっ・・・言ってんですか!?」 「・・・あいつさ・・・俺と一緒に写真撮ってたの、見てたよ。」 「・・・え・・・?」 「・・・いや・・・あれは、睨まれてた・・・だな。」 「―――っ・・・」
先輩は、近くまで来た松井君の側へ歩いて行った。 「・・・さすがだな。時間厳守で。」 松井君もその場で止まった。 「・・・・・・先輩の呼び出しに・・・遅れるわけいかないですから・・・。」 いつものぶっきらぼうな言い方・・・ 「あははは、そうだな。」 その松井君に対し、慣れたもんなのだからか、先輩の態度は余裕ともとれる・・・
というか・・・この後・・・どうすんだ?
「・・・んじゃ、俺帰るな。」 「「――――――!!」」
先輩は、松井君の横を通り過ぎた。
――――何を言い出すの!?
あたしと同じく松井君も訳がわかんなかっただろう。
「――ちょっとっ・・・呼び出しといて・・・なんすか、それ?」 「何って・・・こういう場でも設けないと、おまえら話さないだろ?」 「・・・・・・先輩――っ」 「悪いけどっ・・・俺はこんなとこで遊んでる暇はないの!帰って勉強しなくちゃいけないんだよ・・・スッキリしたし、はかどれそうだわ。・・・じゃな。」 先輩は、手を振りながらその場を去って行った。
「「・・・・・・」」
残されたあたし達は・・・先輩の姿を、なんとなく見送ってしまった。
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