あたしらは、教室から人通りの少ない階段へと移動した。 きょんちゃんがそうしようって・・・美樹が何を言いたいのか、察したんだろう。
その美樹の表情は、1年前に見たのと近いものがあった。 いつもの明るく、あっけらかんとしたものではなく・・・怯えたといった方が近いか・・・申し訳ないといった感じにもとれる。
でも今のあたしは、そんな美樹に気を配ってやれるほど、まるで余裕がなかった。
「・・・あたし・・・状況把握するの遅くて・・・一回こうだって思い込むと・・・なかなかそれから違う事に考えれなくて・・・」 「・・・・・・美樹?」 思いつめてるかのように聞こえ、きょんちゃんが間に入ってきた。 大丈夫だよって・・・ゆっくり話してって・・・ そう言ってるかのように、美樹の顔を下から覗き込んだ。 それを感じ取って、一息ついてから・・・話し出した。
「・・・・・・あたしね・・・智子とリョーマ君が・・・くっついて欲しかったの・・・」 「――っ・・・!!」 「・・・木村先輩には・・・申し訳ないんだけど・・・二人の仲を取り持つために、間に入ってもらった方がいいと思って・・・」 「なんで?・・・なんでそう思ったの?」 黙っているあたしの代わりに、きょんちゃんが聞いてきた。 「・・・・・・リョーマ君が・・・自分の気持ちに気付いて欲しかったから・・・」 ・・・・・・なにを・・・言ってんの? 「・・・松井君の気持ちって・・・・・・松井君・・・美加さんのこと・・・好きだって・・・」きょんちゃんは言いにくそうに言った。 「・・・あたしも・・・そう思ってた・・・ずっとそうなんだって、そうに違いないって・・・・・・でも・・・おねーちゃんに夏祭りの後、二人が一緒に帰ったことなにげなく話したら、お似合いだよねって言ってて・・・それ聞いた時はまだ、リョーマ君のこと、完全な片想いなんだって、かわいそうに思ってた。でもその後に・・・智子はきっと思ってること口に出さない子だから、あたしがちゃんと導いてあげなって言われて・・・」
―――なっ・・・!!
「・・・初めは言っている意味がよくわかんなくて、おねーちゃんの勘違いだって思ってた。智子には、先生のこともあったし・・・でも、考えてたら、リョーマ君の方に違和感感じてたこと思い出して・・・」 「・・・違和感?」 「うん・・・最初は、みんなでチョコ作ってた日。あの時リョーマ君来たでしょ?」 「あぁ・・・そういえばそうだったね・・・」 「・・・あの時、智子のこと・・・その・・馬鹿にするっていうか・・・おちょくるっていうか・・・とにかくっ・・・身近な女子のこと相手にするの、初めて見たの。その時は、特になんにも思ってなかったんだけど・・・そのうち、学校でも二人が話してるとこ見るようになって、言い合いしてることもあったけど・・・でもなんか・・・うれしかった。リョーマ君にとって、普通に話せる子ができたんだって・・・けど・・・練習試合の時、お店で大喧嘩したでしょ?・・・あれは明らかにリョーマ君が悪いと思う・・・告白されたことをみんなの前で言ったり、智子に好きな人がいるってこと知ってたのがびっくりだったけど・・なんで言いふらしたんだろうって・・・ちょっと悪ふざけも度が過ぎると思ってた・・・仲直りするのも時間かかると思ってたけど・・・いつの間にか普通に話してたし・・・二人は馬が合うんだって・・・・・・でも・・・これって違うよね?・・・おねーちゃんへの気持ちがあるってこと、強く意識しすぎて気付かなかったけど・・・リョーマ君にとって、智子はっ―――特別なんだよ。」 「・・・・・・」 「2学期入ってすぐ、みんなから二人の様子が変だっての聞いて・・・あたしが動かなきゃって、思ったの。智子の気持ちははっきりとわかんないままだったけど・・・でもっ、確信はあった・・・リョーマ君が、智子のこと想ってるってわかれば・・・絶対智子も、好きになるって・・・リョーマ君となら・・・智子はうまくいくって・・・」 ―――・・・なんで・・・? 「・・・理由なんてわかんないけど・・・でも直感でそう思ったの。だからっ・・・リョーマ君から気持ちを伝えさせるために・・・木村先輩と二人でいるところ見せつけたかった・・・そうすれば・・・嫌でもリョーマ君、自分の気持ちに気付くって・・・」
・・・・・・言いたい事は、いっぱいある・・・ でも・・・なにを言っても・・・自分を追いつめるだけのような気がした。
「・・・・・・美樹の・・・気持は・・・言いたい事は・・・わかったから・・・」 やっとあたしは口を開いた。 「・・・・・・でも・・・日曜は、来ないで・・・」 「・・・え・・・?」 「・・・もちろん、松井君も誘わないで・・・」 「じゃあっ・・・先輩と・・・日曜・・・どうするの?」 きょんちゃんが不安そうに聞いてきた。 「・・・・・・行くよ。」 「智子っ――!」 「でも・・・デートはしない・・・ちゃんと話するだけ・・・もう一度、はっきりさせるだけだから・・・」
「・・・・・・ねぇ、智子・・・」 美樹が、意を決したように言ってきた。
「・・・・・・リョーマ君のこと・・・どう思ってる?」
・・・・・・この質問・・・何回目だろう?
・・・・・・そっか。
・・・・・・あたしがはっきり答えないからなんだ。
「・・・・・・好きだよ・・・」
・・・白状した。 ・・・自分以外の人に。 でも・・・ほんとにあたしのこと、気にかけてくれてる二人だったから・・・・・・素直に言えた。
|
|