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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第64回   64
あたしらは、教室から人通りの少ない階段へと移動した。
きょんちゃんがそうしようって・・・美樹が何を言いたいのか、察したんだろう。

その美樹の表情は、1年前に見たのと近いものがあった。
いつもの明るく、あっけらかんとしたものではなく・・・怯えたといった方が近いか・・・申し訳ないといった感じにもとれる。

でも今のあたしは、そんな美樹に気を配ってやれるほど、まるで余裕がなかった。



「・・・あたし・・・状況把握するの遅くて・・・一回こうだって思い込むと・・・なかなかそれから違う事に考えれなくて・・・」
「・・・・・・美樹?」
思いつめてるかのように聞こえ、きょんちゃんが間に入ってきた。
大丈夫だよって・・・ゆっくり話してって・・・
そう言ってるかのように、美樹の顔を下から覗き込んだ。
それを感じ取って、一息ついてから・・・話し出した。


「・・・・・・あたしね・・・智子とリョーマ君が・・・くっついて欲しかったの・・・」
「――っ・・・!!」
「・・・木村先輩には・・・申し訳ないんだけど・・・二人の仲を取り持つために、間に入ってもらった方がいいと思って・・・」
「なんで?・・・なんでそう思ったの?」
黙っているあたしの代わりに、きょんちゃんが聞いてきた。
「・・・・・・リョーマ君が・・・自分の気持ちに気付いて欲しかったから・・・」
・・・・・・なにを・・・言ってんの?
「・・・松井君の気持ちって・・・・・・松井君・・・美加さんのこと・・・好きだって・・・」きょんちゃんは言いにくそうに言った。
「・・・あたしも・・・そう思ってた・・・ずっとそうなんだって、そうに違いないって・・・・・・でも・・・おねーちゃんに夏祭りの後、二人が一緒に帰ったことなにげなく話したら、お似合いだよねって言ってて・・・それ聞いた時はまだ、リョーマ君のこと、完全な片想いなんだって、かわいそうに思ってた。でもその後に・・・智子はきっと思ってること口に出さない子だから、あたしがちゃんと導いてあげなって言われて・・・」

―――なっ・・・!!

「・・・初めは言っている意味がよくわかんなくて、おねーちゃんの勘違いだって思ってた。智子には、先生のこともあったし・・・でも、考えてたら、リョーマ君の方に違和感感じてたこと思い出して・・・」
「・・・違和感?」
「うん・・・最初は、みんなでチョコ作ってた日。あの時リョーマ君来たでしょ?」
「あぁ・・・そういえばそうだったね・・・」
「・・・あの時、智子のこと・・・その・・馬鹿にするっていうか・・・おちょくるっていうか・・・とにかくっ・・・身近な女子のこと相手にするの、初めて見たの。その時は、特になんにも思ってなかったんだけど・・・そのうち、学校でも二人が話してるとこ見るようになって、言い合いしてることもあったけど・・・でもなんか・・・うれしかった。リョーマ君にとって、普通に話せる子ができたんだって・・・けど・・・練習試合の時、お店で大喧嘩したでしょ?・・・あれは明らかにリョーマ君が悪いと思う・・・告白されたことをみんなの前で言ったり、智子に好きな人がいるってこと知ってたのがびっくりだったけど・・なんで言いふらしたんだろうって・・・ちょっと悪ふざけも度が過ぎると思ってた・・・仲直りするのも時間かかると思ってたけど・・・いつの間にか普通に話してたし・・・二人は馬が合うんだって・・・・・・でも・・・これって違うよね?・・・おねーちゃんへの気持ちがあるってこと、強く意識しすぎて気付かなかったけど・・・リョーマ君にとって、智子はっ―――特別なんだよ。」
「・・・・・・」
「2学期入ってすぐ、みんなから二人の様子が変だっての聞いて・・・あたしが動かなきゃって、思ったの。智子の気持ちははっきりとわかんないままだったけど・・・でもっ、確信はあった・・・リョーマ君が、智子のこと想ってるってわかれば・・・絶対智子も、好きになるって・・・リョーマ君となら・・・智子はうまくいくって・・・」
―――・・・なんで・・・?
「・・・理由なんてわかんないけど・・・でも直感でそう思ったの。だからっ・・・リョーマ君から気持ちを伝えさせるために・・・木村先輩と二人でいるところ見せつけたかった・・・そうすれば・・・嫌でもリョーマ君、自分の気持ちに気付くって・・・」



・・・・・・言いたい事は、いっぱいある・・・
でも・・・なにを言っても・・・自分を追いつめるだけのような気がした。



「・・・・・・美樹の・・・気持は・・・言いたい事は・・・わかったから・・・」
やっとあたしは口を開いた。
「・・・・・・でも・・・日曜は、来ないで・・・」
「・・・え・・・?」
「・・・もちろん、松井君も誘わないで・・・」
「じゃあっ・・・先輩と・・・日曜・・・どうするの?」
きょんちゃんが不安そうに聞いてきた。
「・・・・・・行くよ。」
「智子っ――!」
「でも・・・デートはしない・・・ちゃんと話するだけ・・・もう一度、はっきりさせるだけだから・・・」

「・・・・・・ねぇ、智子・・・」
美樹が、意を決したように言ってきた。



「・・・・・・リョーマ君のこと・・・どう思ってる?」



・・・・・・この質問・・・何回目だろう?



・・・・・・そっか。



・・・・・・あたしがはっきり答えないからなんだ。



「・・・・・・好きだよ・・・」



・・・白状した。
・・・自分以外の人に。
でも・・・ほんとにあたしのこと、気にかけてくれてる二人だったから・・・・・・素直に言えた。


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