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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第63回   63
そして、また月日は経ち―――
―――3学期に入った。

3年生は、受験勉強の真っ最中。
あたしら2年は、早くも来年に向けての進路指導が始まっていた。

そして―――
あたしが、中学生に戻ってから、丸一年が過ぎたんだ。
今となっては、大人だった自分が嘘のように思える。



「・・・そうね〜・・・山田さんなら西高行けるんじゃない?2年になってから急激に成績伸びてるし・・・どこか考えてる?」
「・・・いえ・・・まだなんにも・・・」
先生との二者面談で、ある事に気付く。
「まぁ・・・西高となると、通うのはちょっと遠いけど・・・でも、指定校は指定校だし。卒業生だって、結構いるし。・・・一度、ご両親と相談してみたら?」
「あ・・・はい・・・」

西高―――あたしは行っていないはずの高校。
あの頃のあたしの成績では、とうてい無理なところだった。
必死に受験勉強して行けたのは、隣町の普通高だった。
そこでも、入れるのは入れたけど、成績の上位と下位にはかなりの差があった。
きょんちゃんは、もちろん上位で進学クラス。
あたしも進学は進学だけど、常に中の下で、クラスメイトもだいたい同じメンバーだった。
中学とは違った生活で、人間関係に関しては、なんの問題もなく楽しく過ごしてた。
少しずつ、オシャレにも興味を持ちだし、部活もやって、帰りにカラオケ行って、そのうち、彼氏もできて・・・――!!
そうだ!・・・もし、西高に行くんだったら・・・あの時の彼とは・・・つきあわないってことに・・・なるよね?
高校でできた友達とも・・・出会わないってこと?
今でも連絡取ってる、まっちゃんとか、アキとか、由美とか・・・他にもいろいろ・・・

未来の自分が嫌で、今のうちから勉強頑張れば明るい未来が待ってるって思ってたけど・・・
今まで出会えた人とのことを無しにするなんて・・・とてもじゃないけど考えられない。
それに、新しい高校生活に踏み入れる勇気が出てこない。
たまたま中学時代に戻って、知っている人ばかりの中へ入り込んだけど・・・もし西高にいったら・・・それこそ全てが一からだ。
出会いも何もかも・・・

でも・・・ここで、変わんなきゃ・・・未来も変わんないのかな・・・

これが普通の中学生と違う悩みだった。



―――昼休み―――
いつものように、3人で集まっていた。
最近の話題は・・・進路のことだ。
「あたしも、みんなと同じ高校行きたいよ〜・・・」
美樹は嘆いていた。
「・・・やっぱ・・・西高・・とか?」
恐る恐る聞いてくる。
「・・・あたしは、松高だよ。親が近いとこにしておけって言ってるし。」
・・・当たり前だけど、行ってた高校だ。
「ほんとに!?・・・松高なら・・・頑張れる気がする。」
本来なら美樹が行っていない高校だ。
このままなら、美樹と高校も一緒になることもあるんだ。
「智子は?どこ?」
「え?・・・・・・まだ・・・決めてない。」
「そっか〜・・・でも、智子なら西高行けちゃうもんね・・・」
まだ進路相談は始まったばかりだから、決まらないのは当然で、あたしの答えに深くは突っ込んでこなかった。
「田口君はどこだって?」
「え・・・今んとこ・・・笹工だって・・・」
きょんちゃんは少し暗い声で答えた。
「そっか〜・・・あそこサッカー強いもんね・・・みんなもそうなのかな〜・・・」
・・・――みんな――
・・・ケンちゃんと松井君のことだ。
確かに、そんな記憶がよみがえる。
笹工は男子校だし・・・どっちにしろ、あの3人とは高校は別々ってことだ。

「・・・山田っ。」
入口からケンちゃんが呼んでいる。
振り向くと、手招きをしている。
・・・?
「・・・なによ〜?・・・――っ!!」
返事をしながら、ケンちゃんの方へ向かった。
そして、廊下にいた人物に動きが止まった。
「・・・・・・先輩が用事だって・・・」
ケンちゃんはそう言うと、その場から離れて行った。

目の前には・・・木村先輩だ・・・
「ごめんね、昼休みに。」
「・・・いえ・・・あの・・・なにか?」
文化祭で写真を撮って以来、決してあたしは先輩に対して、思わせぶりな態度はとっていなかった。
校内でたまに話しかけられることもあったけど、素っ気なく対応してたし、デートみたいなことも誘われたけど、もちろん断っていた。
ここ何日かは会っていなかったから、さすがにもうないかと思ってたのに・・・。
いつもの笑顔で先輩は話してきた。
「あさっての日曜ってヒマ?」
・・・・・・これは、またデートのお誘い・・・?
「・・・あのっ――、前も言ったんですけど――っ」
「これが最後だから。」
あたしが言うのを遮ってきた。
「・・・は?」
「・・・なんかさ・・・受験勉強ばっかしてて、頭がパンクしそうでさ・・・気分転換したくって・・・・・・これが最後の誘いだから・・・つきあってくれない?」
そう言いながら、笑顔は消えて行った。
・・・そんなこと・・・言われても――っ
黙ったままのあたしの後ろから声がした。
「・・・じゃあ、ダブルデートだったらいいんじゃない?」
「えっ・・・!」
振り向くといつの間にか、美樹ときょんちゃんが後ろに立っていた。
「〜〜ちょっとっ、美樹何言ってんの!」
きょんちゃんが美樹の腕を引っ張って、この場から離れようとしている。
「――そうよっ・・・何言ってんの?っていうか、いつからいたの?」
あたしの問いに、まるで無視で木村先輩の方へと近づいた。
「どうです?いい案だと思うんですけど。」
「――美樹ってば!」
あたしは美樹の腕を引っ張る。
「うん、いいよ、俺は。でも誰と行くの?」
木村先輩はまた笑顔になった。
―――ちょっと、ちょっと!!
「じゃあ・・・あたしが行こっかな〜・・・そうだな・・・よしっ、リョーマ君誘うわ。」
「「―――!!」」
あたしだけじゃない・・・固まったのは。
きょんちゃんだって・・・先輩だって――
「時間と場所はどうします?・・・10時に・・・中央公園・・でどうです?」
そんなあたしらを相変わらず無視して、話を進める美樹。
「え・・・あぁ・・・うん、わかった。・・・じゃあ、日曜ね。」
木村先輩は、何か吹っ切れた様子で承諾して、この場を去った。

「―――美樹っ!!どういうつもり?」
あたしが文句言うのもどうってことなく、元にいた席へと戻る。
「そうだよ・・・なんでそんな勝手なこと・・・」
きょんちゃんも美樹の後を追いながら言う。
「・・・いいじゃん、デートくらい。これが最後って言ってたし、いい思い出作りにつきあうくらいさ。」
・・・なんで?・・・なんでそんなに、簡単に言えんの?
「――あたしはっ・・・その気もないのに、デートなんて――っ。」
「なんで?・・・別につきあうとかないんでしょ?前も写真一緒に撮ったのと同じじゃん。デートくらいいいじゃん。」
「――美樹がそういう風に思えても、あたしは違うよ!」
「・・・・・・」
だんだんとあたしの声が大きくなりつつあるのを、きょんちゃんは間にいながらハラハラした様子だった。
「―――あのさっ・・・とりあえず落ち着こう。ねっ・・・座ろ?」
そう促され、美樹が先に席へと着いた。
あたしも席に着きながらも、まだ言いたい事が収まらなかった。
「だいたいっ・・・なんで勝手に話を決めて、事を進めんのよ!」
机をバンっと叩いてしまった。
ほんと、大人げないあたし・・・
「・・・・・・あたしは・・・」
黙っていた美樹が口を開いた。
「・・・・・・智子には幸せになって欲しいの・・・」
――っ!!
さっきまでのあっけらかんとした口調ではなく、呟くような感じだ。
「・・・・・・今こうして・・・あたしが楽しく過ごしてんのは・・・智子のおかげだから・・・」
・・・・・・美樹・・・そんなこと・・・思ってたの?
でも・・・だからって・・・
「・・・・・・それが・・・先輩とデートすることなの?」
美樹の口調に合わせ、あたしまで声が小さくなる。
その問いに・・・美樹は頭を横に振った。
「・・・じゃあ・・・なに?」



「・・・・・・智子・・・おねーちゃんのこと・・・気にしてる?」

・・・え?
・・・なんで?
・・・なんで美加さんが・・・出てくんの?


美樹の言ったことに、またもやあたしは固まってしまった。


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