「・・・さっき来てたけど・・・人混み嫌いだからって、どっか行ったわ・・・」 「・・・・・・そう。」 内心焦っていたけど、冷静を必死に装った。 「・・・・・・質問の続きだけどさ・・・」 ・・・質問? ・・・・・・そうか。 ・・・さっきから、聞かれてばっかだったっけ。 「・・・・・・おまえ、リョーマとなんかあったろ?」 ―――っ!! ・・・・・・いつか、きょんちゃん以外にも聞かれると思ってた質問だった。 でも、それを聞いてきたのがケンちゃんってのが・・・ちょっと意外だった。
「・・・・・・別にないよ。」 「ふ〜ん・・・リョーマはそんなこと言ってなかったけど・・・」 ――っ!?・・・どういうこと? 「・・・・・・やっぱり・・・」 ・・・え? ・・・やっぱり? 見られてることに気づき、ケンちゃんに目をやった。 ・・・あっ!! ・・・こいつっ・・・かまかけた!? 「・・・おまえ肝心なことは素直に言いそうじゃないもんな。」 「なっ・・にが・・・ほんとのこと言ってんじゃん!」 「・・・今さら誤魔化しても無理!っていうかさっ・・・俺らみんな気使ってんだぞ?口挟むと余計にこじれるんじゃないかと思って黙ってたけど・・・」 「・・・―――っ」 「今までもおまえら衝突することあったから、今回もまたやってる、みたいな感じで思ってたけど・・・ちょっと長過ぎんだろ?」 「・・・・・・」 「・・・いいかげん仲直りすれば?」 「・・・・・・仲直りって言ったって――っ」 「元々そんな仲良くないとか?」 あたしが言う前に言ってきた。 「――っ!・・・」 「言っとくけど・・・リョーマが話すんのって、おまえくらいだよ。」 「何言ってんの!?そんな訳ないじゃん・・・美樹だって話すし・・・クラスの子とかでも話してんじゃないの?」 「・・・俺が言ってんのはっ・・・あいつから話しかけるのは、おまえくらいって言ってんの!」 「――っ・・・それはっ・・・あたしが・・・松井君の弱点・・・知ってるからでしょ・・・バラされない様にって・・・」 ほんとは、松井君がそんなこと思ってないことくらいわかってたけど、ついつい逃れるために口が勝手に動いてしまう。 「・・・ふ〜ん・・・弱点ねぇ・・・そういうこと知ってるってことが仲いいってことなんじゃない?・・・いや、特別・・・とも言うか?」 「あのねっ!・・・そんな変な風に解釈しないでよ。」 これ以上期待してしまうこと言われると、頭がこんがらかってしまいそうだ。 「・・・現に・・・俺はおまえに嫉妬している。」 「・・・・・・はぁ!?・・・なに言ってんの?」 「おまえはそうやって、あいつの弱点知ってる事とか、言いたいこと言い合ってる事とか・・・親友である俺や田口よりも、あいつと深く関わってんじゃん・・・1年の頃から、あいつはなんか一歩置いてというか、本音を見せないっつうか・・・俺らに壁を作ってんだよ。」 てっきり、適当な事を言ってるって思ったけど・・・そうでもないみたい。 ケンちゃんの言いたい事もなんとなくわかる。 いつもつるんでるわりには、松井君だけなんか冷めてる部分がある。 きょんちゃんとのことだって、ケンちゃんのように率先して協力するわけでもないし、なんかある時お呼びがかかっても、一度で素直についてくるようでもない。 「・・・じゃあ・・・なんで友達でいるの?」 率直な疑問だ。 「・・・・・・田口とは小学ん時からつるんでたから、遊びでやってたサッカーを一緒にやろうってことで入部したんだ・・・そん時のリョーマは、同じクラスの奴、くらいにしか思ってなかったんだけど・・・入部して少し経ったくらいに、3年の補欠のやつらにさ、1年がいいようにこき使われたんだ。何かと先輩面して、部活に関係ないことでもやらされて・・・俺も田口も調子いいから、ほいほいと素直に引き受けてたけど・・・リョーマだけはガンとしてやんなくてさ・・・俺は雑用しにサッカー部に入ったんじゃねーって・・・」 ・・・・・・松井君らしいな。 「当然のごとく、3年のやつらに標的にされてさ、みんなの目に見えないところでいろいろと嫌がらせ受けてたよ・・・それでもあいつの態度は変わんなくて・・・今度は俺ら1年がリョーマをのけもんにするようにって言われてさ・・・・・・さすがに俺も田口もそれには呆れてというかさ、初めて先輩らに歯向かったわけ。そしたら怒るわ怒るわ・・・サッカー部でもない3年も加わって呼び出されて、絶対生きて帰れない、とか大袈裟に思ってたよ・・・そこにさ、呼ばれてもないリョーマが駆けつけてきて・・・まさしくヒーローだよな。「俺が気にくわないんだから、俺を呼ぶべきじゃないの?」とか言って・・・結局、誰かが先生に知らせてくれたみたいで、すぐに駆けつけてきてさ。顧問にも連絡行くわ、レギュラーの3年はそいつらを追いつめるわで、退部したんだ。その後の俺らの事も先輩たちが守ってくれてさ、それからまた呼び出しなんてことはなくなったけどな・・・」 ・・・・・・そんなこと・・・あったんだ。 「・・・俺はあの時のリョーマにすごい衝撃受けてさ・・・こいつと仲良くなりてー!とか思えて、それからあほみたいに付きまとったわ・・・最初は、話してもくんなかったけど、サッカーに関してのことはまだ相手にされててさ・・・俺はあいつに相手にされるためにサッカー頑張ったようなもんだし。それは田口も似たようなもんだと思うよ。遊びでやっていたことが、いつしか真剣になってたし、大好きになってたし・・・」 ・・・・・・なんか・・・この3人って・・・アツいな・・・ 「・・・充分、深く関わってんじゃん・・・」 ・・・でも、なんか羨ましい。 この3人は・・・大人になっても、このままなんだろうな。 その後を聞いたことないけど・・・そんな気がする。 「それとこれとは別なんだよっ!だいたい、俺がこ−んなにリョーマの事思ってんのに、あいつは何一つも、俺の事わかっちゃいない!」 ・・・そうかな? ・・・あっ・・・そうだ。 「・・・ケンちゃんさ、なんで合唱でソロやんなかったの?」 「は?なんだよ突然・・・」 「いいからっ。なんで?」 「・・・なんでって・・・だから、これ以上ファン増えても――っ」 「そういうふざけた理由じゃなくて!」 「・・・なんだよそれ・・・」 「恥ずかしいから?・・・それとも自分にはサッカーがあるのに、ソロが目立ってコーラス部に引き抜きされると困るから?」 「−−なにっ・・・言ってんだよ・・・」 「・・・前、松井君がそう言ってたよ。」 「え・・・」 「・・・あいつにはサッカーがあるから、本気で歌わないって。」 「・・・ふ〜ん・・・」 ・・・返事はそっけないけど・・・うれしそ・・・ 思わずニヤけそうなのを我慢して続けた。 「ちゃんと、ケンちゃんの事わかってんだね。」 「・・・・・・それくらいは当たり前だ!」 本音を隠すかのように強気で返してきた。 ちょっと、ケンちゃんの知られざる一面を見たって感じだ。 ほんとに・・・松井君こと、人として好きなんだな・・・
「・・・っていうか・・・本題からずれてんぞ!」 「・・・え?」 「俺の事なんてどうでもいいんだよ!問題はおまえだよ!!」 さっきより口調がきついんだけど・・・ 「・・・だから・・・なんでもないってば・・・」 また、ふりだしに戻る・・・って感じだ。 「・・・わかった・・・じゃあ、質問を変える。」 「・・・はぁ!?・・・まだ聞くことあんの?」 ・・・いいかげん、みんな来ないかな?・・・遅くない? あたしは、2組の入口に目をやったが、まだそれらしき姿は見えない。
「・・・おまえ・・・リョーマの事どう思ってんの?」
「――!・・・なに・・・それ?」
顔が引きつりそうになったのがわかる。 でも・・・そんなわけには・・・いかないっ・・・
「・・・どういう奴とか、性格がどうとかじゃないぞ・・・・・・好きなのかどうかってことだよ。」
・・・確信をついてきた。 もしかしたら・・・ケンちゃんは、最初っからこのことを聞きたかったんじゃ・・・ 木村先輩のこととか、先生のことは、前振りに過ぎなかったんじゃないかって・・・
こんな時に冷静に考えるあたしがいた。
「・・・・・・そんなこと・・・聞いてどうすんの?」 「聞いたからって・・・俺がどうこうしねーよ・・・おまえらのことなんだし・・・でもさ・・・きっかけくらいは――っ」 「たとえっ――・・・・・・あたしが、好きだとしても・・・・・・ただそういうことってだけじゃん・・・」 「・・・どういうこと?」 「・・・・・・松井君と・・・どうかなるなんてことはないって言ってんの!」 「そんなのっ・・・わかんねーだろ?あいつはおまえのこと意識してんの間違いねーんだよ!」 「だからっ――・・・そういうんじゃないってば・・・・・・松井君が・・・あたしに何かを意識してんだとしたら・・・・・・それは、関わらないようにって・・・そう意識してるだけだよ・・・」 「はぁ!?・・・なんでそう思うわけ?」 「・・・・・・あたしが・・・言ったから・・・」 「なにをだよ?」 「・・・・・・話しかけないでって・・・あたしが言ったの!・・・迷惑だって・・・」 「なんでそんなこと――っ」 「そう思ったからそう言っただけ!・・・だいいちっ――・・・松井君はあたしの事なんて何とも思ってないよ――・・・」
・・・何度も嫌ってくらい思い知らされてる。 ・・・彼が好きなのは・・・美加さんだ。 ・・・この先も、間違いなく何年かはそうなんだ。
「でもさ――っ」 「もういいでしょっ!?・・・・・・もうやめてよ。」 「・・・・・・」 ケンちゃんはそれ以上言ってこなかった。
それから間もなくみんながこっちに気づいてやってきた。 飲み物と軽くつまめる食べ物を買ってきたみたい。
「・・・おっせーぞ!!どんだけ撮ってんだよ。」 いつものケンちゃんの口調だ。 さっきまでの険悪な雰囲気は、これっぽちも感じられない。 「ちげーよ!・・・食いもんがえらい待たされてさ・・・」 田口君も当然いつものように返す。 美樹ときょんちゃんもそれに続き、さっきまでの様子を語る。
あたしも顔には出さないよう、話に合わせて相槌を打つ。
・・・でも・・・内容なんて・・・まるで覚えてない・・・
ずっと・・・ケンちゃんから言われた期待してしまう言葉と・・・それを打ち消すかのように、現実を思い返す・・・それの繰り返しだった。
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