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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第61回   61
1組の教室へ行き、フリーマーケットを一通り見回った。
売ってあるものを見ながら、談笑した。
考えてみれば、木村先輩とこうして普通の会話するのは初めてだったけど、思ったより会話が弾んだ。
そのせいか、時折、タメ口になりそうなったのを気をつけながらだったけど。

「木村君っ、探したよ〜・・・――っ」
同じクラスの女子生徒か、廊下に出たところで声をかけてきた。
そしてすぐに隣にいたあたしに気付き・・・目つきが変わった。
すぐにわかった・・・・・・この人は、木村先輩に気があるんだ。
・・・・・・あたしを見る目には、嫉妬が感じられた。
「なに?」
木村先輩は、動きの止まった彼女に聞き直した。
「え・・・あぁ・・・なに?じゃなくて、仕事溜まってるよ。佐々木君ひとりじゃ追いつかなくって・・・呼ばなくていいって言ってたけど、お客さん待ってるし・・・」
「そっかぁ、ごめんごめん。すぐ行くわ。」
「わかった・・・じゃあ早くね。」
そう言った後、またあたしをチラッと見てから教室へと戻って行った。
「そういう訳だから・・・残念だけど、行くね。」
木村先輩は、少し半笑いで言った。
「あ、はい・・・頑張ってくださいね。」
あたしも当たり障りのない言葉をかける。
「・・・じゃ、また。」

木村先輩を見送って、一息つく。
・・・ふぅ〜・・・
この歳で、自分に向けられての嫉妬を2回味わった。
ついさっきと、夏休みにと・・・。
今まで、嫉妬されるような人と隣り合わせになっていなかったからだろうけど、相手が幾つだろうと・・・怖いもんがあるな。

さてと・・・これからどうしよう。
みんなと合流・・・するわけにはいかないよね。
松井君・・・いるだろうし・・・

チラッと、2組の教室を通り過ぎながら覗いた。
人が多くてすぐには見つけれない・・・

「・・・山田っ!」
騒がしい廊下から、名前を呼ばれたのが聞こえた。
その方を見ると、ケンちゃんが人混みをよけながら近づいてきた。
あたしもケンちゃんの方へ向かった。
「・・・みんなは?」
「まだ中だよ。」
「・・・そうなんだ。」
「山下がえらい張り切ってさ・・・あいつら貸衣装に着替えて撮ることになって・・・」
「えっ!貸衣装!?・・・きょんちゃんたちが!?」
「あぁ・・・もちろん嫌がってたんだけど、山下の粘りと周りの盛り上がりで。」
「・・・そっかぁ・・・」
嫌がるきょんちゃんが目に浮かぶわ・・・
「俺は途中で後輩に捕まっててさ。」
「・・・なんで?」
「え?そりゃあ、写真一緒に写りましょ。ってやつだよ。」
・・・ファンの子たちか・・・
「・・・もういいの?」
・・・こんなとこで、ケンちゃんと一緒のとこ見られたら、嫉妬の標的にまたなっちゃうじゃん。
あたしはキョロキョロしながら、今こっちを見ている子がいないか見渡した。
「いいのいいの。それよりさ、のど渇いたから喫茶店やってるとこ行こうと思って。あいつらには先行っとくって言っといたから、行こうぜ!」
「・・・えっ!?」
・・・一緒に?・・・まぁケンちゃんとなら別に平気だけど・・・先に行っとくってことは・・・・・・後からくるんだよね?
「・・・まだなんか用あんの?」
戸惑っているあたしにケンちゃんは、聞いてきた。
「え?・・・別に用はないけど・・・」
「・・・木村先輩もクラス戻ったみたいだしな。」
――っ!!
思わずケンちゃんの顔を見たが、2組の教室の方を見ていた。
「・・・言っとくけど・・・別に深い意味はないからね。」
思わず言い訳をしてしまった。
事情を全て知っているかどうかはわからないが、先輩と一緒にいたことはバレてるみたいだ。
「・・・まだなんも聞いてないじゃん・・・早く行こうぜ。」
ケンちゃんは喫茶店をやっている3年4組の教室へと向かった。
なんとなく気まずい空気が流れたけど、遅れをとって後をついて行った。


ここのクラスもすごい人で、本来なら座れるんだろうけど、すでに満席でテイクアウト方式になっていた。階段の所やベランダで飲食をしている生徒が目立ってきた。
あたしらも、ちょっと人の群れから離れた廊下の窓際でドリンクを飲んでいた。
ここなら、みんなの姿をとらえやすいし。

「・・・来年は、俺らの番なんだよな。」
向こうでにぎわっている群れを見てケンちゃんがボソッと呟いた。
「まぁ・・・そうだね・・・」
あの頃、どんな催し物をやったか思い出してみた。
高校の時の文化祭と、記憶がこんがらかって定かではないが・・・屋台っぽいことやってたような・・・
「・・・1年後って・・・どうなってんだろ?・・・田口らは少しは進歩してるかな?」
「クスクス・・・どうだろね?・・・うまくいってて欲しいけど・・・」
「へ〜・・・おまえもう認めてんだ、田口のこと。」
「認めてるって・・・そんな親じゃあるまいし・・・」
「でも、俺らが協力しろって言った時、えらい反対してたじゃん。」
「・・・そりゃあ、あの時は・・・ね。・・・でも・・・きょんちゃん本人が好きになっちゃったんだから、しょうがないじゃん・・・」
「まぁな・・・でも、田口おまえにこっぴどく言われてから変わったと思うよ。」
「・・・あたし?」
「そ。人の上げ足とってばっかいる奴が〜!って。」
・・・あぁ・・・言った言った、そういえば・・・
「あいつ、中田に好かれる前に、おまえに認めてもらうぞ〜!とか言ってたな。」
「あははは、そうなの?・・・でも・・・その通りになっちゃったね。」
「これから先のことは、俺らは踏み込んじゃいけねーだろ?二人のことなんだし。」
「・・・とかいって〜。ケンちゃん、からかい過ぎじゃない?親友のくせして。」
「ば〜か。いいんだよ。俺がからかうから、他が言ってこねーだろ?」
「は?・・・どういうこと?」
「だからっ・・・なんかつきあってるやつらでさ、周りからの野次とかに耐えきれないで別れるのいるだろ?絶対にそんなことはさせたくないの!」
・・・へ〜・・・考えてんだ・・・
「わざと俺が嫌な役引き受けてんだよ。俺がみんなが言いたそうな野次を全部言ってやるから、他のやつらに言う隙を与えないんだよ。」
「・・・・・・はいはい。そういうことにしておくか。」
「あっ、おまえ、わかってないな〜。」
「そんなことないよ・・・」
あえて、けなした感じで受け止めた。
・・・ほんとは少し見直したけど・・・絶対口が裂けても言うまいと思った。


「・・・おまえさ・・・木村先輩とつきあうの?」
「――っ、な・・んで・・・話が、飛ぶの・・・」
ドリンクを少し吐き出しそうになった。
さっきまでの流れでどうしてそこにいくかな・・・
「・・・マジでどう思ってんの?」
いつになく真剣に聞いてくる。
ごまかそうと思っても、それは許されなさそう・・・
「・・・・・・かっこいいし、いい人そうだし、嫌いじゃないけど・・・でも、それ以上の気持ちは・・・ない。」
素直な気持ちだった。
そりゃ、自分の事を理由がどうであれ、良く思ってくれてることは正直うれしい。
でも、先輩の気持ちが伝われば伝わるほど、やっぱり中途半端なことはやめたがいい。
さっき一緒にいて、それは改めて思い知らされた。
あたしの軽はずみな行動で、傷つく人だっている訳だし。
その人の為にも、先輩の為にも、そして何より自分の為にも・・・それが一番かも。
「・・・じゃあ・・・先生のことは?」
――はぁっ!?
思わずケンちゃんを睨んでしまった。
「――っ、なんでその話が出てくるの?」
「え・・いや〜、聞いちゃまずいだろうな〜、とは思ってたんだけどさ。前にそういう話してたじゃん。その後聞きたくても、山田が聞かせないモードたっぷりだったし・・・それ以前に・・・好きになれそうな先生なんて、いるか?・・・もしかして、でまかせ?」
・・・・・・お好み焼き屋で松井君と言い争いになったときだな・・・あたしが思わず「先生」なんて口ずさんでしまったから・・・
というより、なんで今頃そんなことを・・・
「・・・・・・誰かなんてことは、絶対に言わないけど・・・事実だよ。」
「あ・・・そう・・・」
あたしが答えたのが意外だったのか、少し驚きながらも返事をした。
「・・・でも・・・今はなんとも。あの時そう言ったじゃん。」
「・・・たしかに・・・言ってたな・・・」
思い出しながら呟いている。

・・・・・・ほんとにもう〜・・・変なこと思い出させないでよ・・・
あの時は、本気で松井君に対して腹立ててたな・・・でも、その後の行動や会話は・・・
――っ・・・彼の事を思い浮かべると、自然と繋がってしまう・・・・・・美加さんのことが・・・
・・・あぁ・・・だめだ・・・重症かも・・・
このままケンちゃんとここにいたら、絶対顔を合わせることになっちゃう。
・・・この場を離れなきゃ・・・
そう思いながら、まだみんなの姿がないかと向こうに目をやる。
無意識にドリンクを飲み干そうとしていたことには、自分では気付いてなかった。



「・・・・・・焦んなくても・・・リョーマ来ないよ。」



・・・・・・―――!!

一瞬、ケンちゃんの言ったことの意味がわかんなかった。
でも・・・目が合って、ケンちゃんの顔を見ていたら・・・・・・わかってきた。
ケンちゃんは、あたしが松井君と会いたくないのを知っていたんだ。


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