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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第60回   60
3年生の教室は2階にあり、廊下はすでに混み合っていた。
人気のあるクラスには早くも行列ができてたし。
その人混みを抜け、2組の「写真館」へとたどり着いた。
ここもなかなかの入場者がいた。
そして、教室の壁にはすでに数十枚の写真が飾られていた。

見回していると、聞きなれた声が掛けられた。
「いらっしゃい・・・あれ?・・・おまえらも来たの?」
木村先輩は、すぐ側にいたケンちゃんと田口君に気付いた。
そして、辺りをキョロキョロと見回した。
・・・?・・・何を見たんだ?
あたしも木村先輩と同じ方に目をやるが、これといって気になるものがわからなかった。
「こんちわ・・・木村先輩って、2組でしたね、そういえば。」
田口君が挨拶がてらに言葉を交わす。
「え?・・・あぁ、うん。」
「・・・お〜っ、来た来た!」
向こうからまた声が聞こえたかと思うと、あたしらの方にやってきた。
・・・あ・・・確か、この人・・・
「部長!」
ケンちゃんが思わずそう呼んだ。
「ぶっはは、部長はおまえだろ?いつまでも呼ぶなよ〜」
そう言って、ケンちゃんの頭をくしゃくしゃっと撫でた。
そうだ・・・元サッカー部の部長、佐々木先輩だ。
たまに校内で見かけることはあったけど、こんな間近はあの時以来だ。
「何?おまえら付き添い?」
佐々木先輩は、ケンちゃんと田口君を見ながら聞いた。

・・・知ってるんだ、あたしがここに来ること・・・友達だから当たり前か。
この二人には、木村先輩とのことなんて説明してないから、付き添いの意味がわかってないよね・・・
なんとなく焦ってきた。

「え?・・・まぁ、付き添いっちゃ付き添いですね。後でもいいんで俺の写真集作ってくださいよ〜。」
相変わらずのケンちゃんの冗談を佐々木先輩は笑いながら返す。
「あはははは。でも、そうだなぁ・・・おまえのだったら売れるかも・・・印税は全て俺な!」
「え〜っ!それはないっすよ〜。」

・・・・・・そんな話自体、ないでしょ。
でも、ケンちゃんのジョークのおかげで、今は紛れたけど・・・

「・・・佐々木先輩。この二人の初写真、きれいにお願いしますね。」
美樹は、きょんちゃんと田口君の腕を引っ張りながら言った。
佐々木先輩と同じ小学校って言ってたからか、普通に話しかけれるみたい。
「・・・え?二人って・・・」
そう言いながら、赤くなっているきょんちゃんと田口君に目をやる。
「あぁっ!そういう事ね、はいはい了解しましたよ〜。なんかポーズとか衣装とか希望ある?」
「えっ!・・・いや・・普通でいいっす・・・」
田口君が、照れながら答える。
まぁ、当然だよね。
その普通でさえ、まともに写れるか、この二人にとってはいっぱいいっぱいだろう。
「どこで撮るんですか?」
美樹がまた佐々木先輩に問いかける。
「あっちだよ。カメラマンいるからさ。」
「そうですか。よしっ、じゃあ行こう。」
そう言って、この真っ赤っかな二人の背中を押していく。
「・・・ほらっ、ケンちゃん。連れてくの手伝って。」
美樹は動こうとしないケンちゃんに声をかけた。
「え、あぁ、わかったよ。」
遅れを取りながら、みんなについて行った。
・・・美樹・・・わざと離れようとしてるんだ。
・・・あたしらに・・・気を使って・・・。
「・・・さぁてと・・・おまえらは?どこで撮る?」
やっぱり事情を知っている佐々木先輩が、話を切り出した。
・・・今さら・・・断れないかな・・・
「・・・別にここでもいいよ。山田さんなんかリクエストある?」
木村先輩がいつもの笑顔で聞いてきた。
・・・今なら・・・まだ――っ
「―――っ・・・特に・・・ないです・・・」
・・・結局、笑顔を見ると断れず・・・承諾してしまった。
・・・まぁ・・・美樹じゃないけど、写真くらいなら・・・いっか。



「・・・じゃあ撮るぞ〜・・・ハイ、チ〜ズ。」
佐々木先輩がカメラマンとなり、写真撮影をした。
普通に並んで教室の片隅で。
カメラから、今撮った写真が少しずつ出てくる。
ポラロイドだから、しばらくしないと浮き出てこない。
「ほいっ、これ。」
佐々木先輩から木村先輩へと写真が渡される。
「じゃあ、俺仕事あるから。・・・山田さん。」
その場を離れようとしたが、佐々木先輩は、あたしの方を見た。
「・・・はい?」
「・・ついでと言っちゃなんなんだけど、もう少しこいつとつきあっててよ。」
「えっ!・・・」
「ねっ?30分くらいでいいからさ。その変わり木村っ。その後めいっぱい働けよ。んじゃ。」
そう言い残し、集団の方へと行ってしまった。
・・・・・・いやいやいや・・・勝手にそんな・・・
「・・・なんか、強引になっちゃったけど・・・いい?」
木村先輩が、写真を乾かすため振りながら聞いてきた。
・・・いいって・・・この流れで聞かれたら・・・
「・・・・・・みんなもいるんで・・・少しなら・・・」
・・・断れるわけないじゃん。
「ありがと。」
またもや、お得意のさわやかスマイル。
今さらだけど・・・なんで・・・あたしなんだろ?
率直な疑問が浮かび上がる。
「乾いた・・・これ貼ってくるからちょっと待ってて。」
チラッと写真を見せてくれた。
自分が思ってたよりも、あたしはかなり緊張した顔だった。

木村先輩がその場を離れ、写真を貼っているのをなんとなく見ていて、そのまま教室全体を見回した。
・・・みんな、どこだろ?・・・―――っ!!
とっさにパッと後ろを向いた。
・・・そしてまたゆっくりと、さっき捕らえた姿に、体の向きはそのままで目をやった。

・・・・・・来たんだ・・・松井君・・・

今来たばっかの様子で、入口からケンちゃんたちを探している。
なんとなく、あたしが木村先輩と一緒にいるところを見られたくなかった。
・・・また・・思わせぶりな態度とってるって・・・減滅されそうで。

「・・・お待たせ。」
写真を貼り終え、先輩が戻ってきた。
「あ・・いえ・・・」
「他のクラス見に行ってみよっか。」
先輩は、催し物の内容が書いてあるパンフレットみたいな冊子を持っていた。
「えっと・・・喫茶店は後でみんなで行くつもりなんで・・・」
「そっか・・・じゃあ、1組のフリマでも行ってみる?」
「あ、はい・・・行きましょうか。」
早くこの教室から出たくて、先に動いた。
「・・・・・・」
先輩は無言で後ろをついてきた。
この時の先輩の気持ちなんて、今のあたしは知る由もなかった。


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