ホームルームが終わり、担任は教室から出て行った。 と、同時に先ほどの騒ぎが戻った。 1時間目の授業まで間もなくだ。 問題は次々と起こってくるが・・・
・・・あたし授業受けるの? ・・・中学の勉強なんて覚えてる?
間違いなく中学、高校、短大と卒業できたけど、今またやれと言われてできるの? ただでさえあまり成績のいい方ではなかったあたしが17年前の事なんて、いや前日の夕飯食べた物答えろって言われても無理なのに。どう考えてもこの後の授業なんて・・・
冷や汗を出しながら、とりあえずカバンに入っている教科書を出してみた。
これを入れたのはあたしだけどあたしじゃない。 17年前のあたしが前日に用意してたんだろう。 まじめな方だったもんなぁ・・・成績は別として・・・
「何かあったの?」
きょんちゃんが、さっきのあたしの様子をうかがってきた。 会った瞬間は、すべてを話して助けてもらおうって気分だったけど、少し時間たつと冷静に無理なことだと判断できてしまう。 きょんちゃんに言ったところでどうなる。 というか、理解してもらうことが無理だ。 いまだに自分が一番理解してないんだから・・・
「・・・ううん、なんでもない・・・」 「ほんとに!?」 きょんちゃんはうつむくあたしをのぞいてきた。 「・・・っほんとほんと。ほら、・・・完全に遅刻したって思ってたけど、先生来てなくてホッとしてさ・・・」 とっさに嘘をついた。 「なぁんだ、そっかぁ。泣きそうに見えたからびっくりしたじゃん。」 「あぁ・・・えへへへ、ごめんごめん・・・」 「そうだ!はいこれ・・・」 そう言ってきょんちゃんはかわいらしいノートを差し出した。
・・・何?これ・・・
一応受け取り、ノートを間近でみた。
・・・あぁ!!これっ・・・
「もう残りわずかだね〜。来月のりぼん(月刊少女まんが)の付録ノートだったからさ、続きそれにしよっか?」
・・・交換日記だ。 覚えてる・・・そうだ・・・1年の時きょんちゃんとやってた。 うわ〜・・・なつかしい・・・
1ページ目を開くと、日記を始める記念として二人で書いたイラストがあった。 正直うまいとは言えないけど、でもなんか、和むな〜・・・
・・・これ・・・どこやったっけ? ・・・しなくなったのいつだっけ?。 ・・・ノートあたしは知らないから、きょんちゃんが持ってるのかな・・・
「ねぇ、智子ってば!聞いてる?」
はっ・・・いけないいけない。思い出にひたってしまってた。
「あ、うん・・・えっと〜付録のね。それにしたよね。」 「は?・・・」
うわっ、あたしってば、「したよね。」じゃなくてこれからするのに・・・
「・・・じゃなくて、それに・・・したいよね・・・の間違いだった。あはは・・・」 「もうっ。・・・じゃあ決まりね、あたしが持ってくるね。」 「うん。」 きょんちゃんはあたしの変な言動にさほど気にすることなく席に戻った。 早速、ノートをめくってみた。
・・・・・・ きょんちゃん・・・ナイスだよ!
今のあたしにこのノートは必需品だ。 ここ1ヶ月くらいの出来事がこの交換日記でちょいちょい記されている。 その時の自分の気持ちも同時に・・・ このおかげできょんちゃんとの距離は縮めれそう。
・・・あったなぁ、こういうこと・・・ 今見るとくだらないことばかり・・・ 自分で書いた内容が恥ずかしくなるよ・・・ 思わず笑みがこぼれてしまう。
あたしはついさっきまで、授業への不安でいっぱいだったが、そっちのけで、ずっときょんちゃんとの交換日記を読むのに没頭してしまった。 1時間目は社会ということもあって、先生の話と黒板に書いてあることをノートに写す程度の授業だったから、余計に日記に集中できた。 授業も日記も終わりに近づいてきた。 昨日きょんちゃんが書いてきた内容だ。
そしてそれは、あの頃とは違う、新しいあたしの始まりだった。
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