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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第59回   59
そして、文化祭当日。
午前中は1、2年生の合唱と劇が体育館で行われ、全校生徒集まった。

順番が進み、あたしたち2年2組の出番だ。
幕の下りている舞台で前の番のクラスと入れ替わる。
「よっしゃー!!円陣組むぞ!!」
練習の時は、まるでやる気を出していなかったケンちゃんが、ここにきて気合い十分のようだ。
勝負事には、ついついのっかってしまうというか・・・。
でも、そんなケンちゃんにクラスのみんなは、同調した。

「2組―っ!、ファイトっ!!」
「「オ――っ!!」」
観客席にも丸聞こえだろう。
たかが合唱で円陣を組んでいることが、場違いのように感じられクスクスと笑い声が聞こえる。
それも計算のうちか、ケンちゃんは満足そうだ。

そして、なんなりと披露し終え、すべてのクラスの演目が終了した。
優勝は1年生のクラスだった。
まぁ、一番上手・・・それが勝因だ。

表彰が終わった後、先生が午後からの3年生の催し物についての説明があり、その後解散となった。
みんなバラバラとなり、出口付近が渋滞になる。
あたしらは、それが収まるのを待って、その場でおしゃべりをしていた。

「はぁ〜・・・終わった終わった。これであたしの役目も無事終了〜。」
「お疲れ、美樹。」
きょんちゃんが肩を揉んできた。
「ねぇねぇ、それより、どこから回る?」
3年生の催し物の事だ。
「そうだな・・・お昼の後だし・・・喫茶店みたいなのあるよね?そこからにしない?デザート食べに。」
「うん、それいいね〜。そうしよそうしよ。」

「・・・山田さん。」
ふと後ろから呼ばれ、振り返る。

――っ!・・・木村先輩だ・・・

同時に美樹ときょんちゃんも振り返り、ピタッと動きが止まった。

「お昼食べた後、いいかな?」
「え・・・あ・・・」
「友達も一緒にどうぞ。」
そういってニコっと笑って、固まっている二人にも声をかけた。
「俺2組だから。教室来てもらっていい?じゃあ後でね。」
「「・・・・・・」」

木村先輩は、言うだけ言って、体育館から出て行った。

「・・・なに?・・・なんのこと?」
美樹には事情を説明していなかったので、事の成り行きがわかる訳がない。


今日だけは、給食を自由な席で食べてよかった為、あたしら3人で食べた。
その時美樹にも、木村先輩からの用件を話した。
「・・・へ〜・・・そっか・・・そうなんだ。」
美樹の反応は、意外にも冷静だった。
「・・・なんか、先輩のあの笑顔見たら、断りずらいね。」
きょんちゃんは、あたしの気持ちを共感してくれたみたい。
「・・・でしょ?・・・どうしよ・・・」
「・・・・・・まぁ・・・写真くらいいいじゃん。」
「え?」
美樹の、これまた意外な発言に、牛乳をストローで飲んでいたのを止めた。
「その写真館さ、田口君も連れて行けば?」
「えっ――//」
美樹の提案に、いつものように赤くなるきょんちゃん。
「だって、あたしらも一緒に来ていいよって言ってくれてたでしょ?だったら田口君ならなおさら大丈夫じゃん。同じサッカー部の後輩だったんだし。ねっ?そこで二人の初のツーショット写真撮れば?」
「え〜っ!!・・・でも・・・」
「恥ずかしいから嫌だ、なんて理由はなしだよ!」
きょんちゃんの言いたい事をお見通しのようだ。
クスクス・・・ん?・・・待てよ・・・
「・・・ねぇ・・・田口君が一緒にってことは・・・あたしが先輩と写真撮るのバレるじゃん。」
美樹の提案に賛成しそうになったが、それって、やばくない?
「何言ってんの!その写真、教室に飾るんでしょ?じゃあ誰だって見るんじゃない?田口君にバレたくらいどうってことないじゃん。」
・・・・・・確かに・・・ん?
そうだよ!・・・飾るんだ・・・やっぱり、断った方が――
「さっ、そうとなれば、行くよ!」
美樹は立ち上がって、給食を片付けだした。
「え・・ちょっと待ってよ・・・」
戸惑うあたしと、恥じらうきょんちゃんだったけど、美樹の行動力に押されてしまった。

そして早速、田口君のところへ行き、木村先輩とのことはとりあえず黙っといて、写真館へと誘う。
同じく照れた様子だったけど、当然それを隣で聞いていたケンちゃんが黙ってる訳がない。
「お〜っ!!いいなそれ。行こうぜ。ついでに俺らも写真撮ろうぜ!」
「あ〜、いいね〜。そうしよ〜。」
ノリノリの美樹とケンちゃん。
この二人って、こういうことに関して気が合うよな・・・

あたし達はそろって教室から出た。
そして、1組の教室の前を通り過ぎようとした時だ。

「・・・あ、そうだ。リョーマ君も誘おっか。」
美樹が、1組の教室をのぞきこんだ。
・・・――ちょっ、待ってよ!――・・・
そう思った時はすでに遅し――
「・・・おいっ、リョーマ!」
ケンちゃんが代りに大声で松井君を呼んだ。
あたしはとっさに隠れるかのように、教室から見えないよう先へ進んだ。
「まだ食ってんのか〜?」
「・・・なんだよ。」
・・・・・・久しぶりに、声聞いたかも・・・
・・・・・・ちょっとドキドキしてしまう・・・
「食べ終わったら、3年のところ来いよ。えっと〜、何組だっけ?」
隣にいた美樹に聞いた。
「2組だよ。」
「・・・なんで?」
「写真館やってるんだけど、一緒に撮ろうよ。この二人がメインなんだけどね・・・」
美樹はニヤけながら、うしろのカップルを見る。
「〜〜っ、美樹ってば〜・・・」
きょんちゃんが美樹の腕を引っ張る。
「・・・・・・俺まだ食ってるからいいや・・・」
・・・・・・予想通り断りの返事・・・
「だからっ、食い終わったらって言ったろ?来いよっ!絶対な!!」
ケンちゃんはいつもよりも強引な感じだ・・・いや、いつもと一緒か・・・
結局そのまま5人で3年2組の教室へと向かった。
内心ホッとしつつも、何かを期待していた自分がいた。
・・・・・・調子良すぎか・・・。

元々、あたしら6人がよく一緒にいるようになったのも、きょんちゃんと田口君をくっつけるために、ケンちゃんがやたらと召集掛けていたものだ。
今こうして二人が結ばれたことで、みんなで集まる必要はなくなっていた。
でも、なにかある度に、自然と6人で集まろうとなってしまうのか、ケンちゃんと美樹はさっきのように、クラスの違う松井君にも声をかけることがあった。
でも、最近の松井君は、断ってばかり。
「付き合いの悪さが前よりさらに増した。」なんて、ケンちゃんはボヤいているけど・・・そうさせたのは、あたしなんだ。
だからという訳じゃないけど、あたしも松井君がいる時には、行かないようにしてた。
サッカーの試合だって、ベスト4かけた試合はほぼ全校生徒だったから行ったけど、その前までの試合の応援も美樹やきょんちゃんは行っていた。
あたしも誘われたけど、何かと理由をつけて断っていた。
そういうことが、何回か続いたからか、きょんちゃんは初めて聞いてきたんだ。
松井君と何かあったのか?と・・・
その時はあまり突っ込んでこなかったけど・・・田口君まで、何かを感じてんだな・・・

このままずっと・・・と思うと、もどかしい自分がいる。
でも・・・もう、前みたいには戻れるわけがない。
自分から遠ざけといて、なんて未練がましいんだろう・・・


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