そして、文化祭当日。 午前中は1、2年生の合唱と劇が体育館で行われ、全校生徒集まった。
順番が進み、あたしたち2年2組の出番だ。 幕の下りている舞台で前の番のクラスと入れ替わる。 「よっしゃー!!円陣組むぞ!!」 練習の時は、まるでやる気を出していなかったケンちゃんが、ここにきて気合い十分のようだ。 勝負事には、ついついのっかってしまうというか・・・。 でも、そんなケンちゃんにクラスのみんなは、同調した。
「2組―っ!、ファイトっ!!」 「「オ――っ!!」」 観客席にも丸聞こえだろう。 たかが合唱で円陣を組んでいることが、場違いのように感じられクスクスと笑い声が聞こえる。 それも計算のうちか、ケンちゃんは満足そうだ。
そして、なんなりと披露し終え、すべてのクラスの演目が終了した。 優勝は1年生のクラスだった。 まぁ、一番上手・・・それが勝因だ。
表彰が終わった後、先生が午後からの3年生の催し物についての説明があり、その後解散となった。 みんなバラバラとなり、出口付近が渋滞になる。 あたしらは、それが収まるのを待って、その場でおしゃべりをしていた。
「はぁ〜・・・終わった終わった。これであたしの役目も無事終了〜。」 「お疲れ、美樹。」 きょんちゃんが肩を揉んできた。 「ねぇねぇ、それより、どこから回る?」 3年生の催し物の事だ。 「そうだな・・・お昼の後だし・・・喫茶店みたいなのあるよね?そこからにしない?デザート食べに。」 「うん、それいいね〜。そうしよそうしよ。」
「・・・山田さん。」 ふと後ろから呼ばれ、振り返る。
――っ!・・・木村先輩だ・・・
同時に美樹ときょんちゃんも振り返り、ピタッと動きが止まった。
「お昼食べた後、いいかな?」 「え・・・あ・・・」 「友達も一緒にどうぞ。」 そういってニコっと笑って、固まっている二人にも声をかけた。 「俺2組だから。教室来てもらっていい?じゃあ後でね。」 「「・・・・・・」」
木村先輩は、言うだけ言って、体育館から出て行った。
「・・・なに?・・・なんのこと?」 美樹には事情を説明していなかったので、事の成り行きがわかる訳がない。
今日だけは、給食を自由な席で食べてよかった為、あたしら3人で食べた。 その時美樹にも、木村先輩からの用件を話した。 「・・・へ〜・・・そっか・・・そうなんだ。」 美樹の反応は、意外にも冷静だった。 「・・・なんか、先輩のあの笑顔見たら、断りずらいね。」 きょんちゃんは、あたしの気持ちを共感してくれたみたい。 「・・・でしょ?・・・どうしよ・・・」 「・・・・・・まぁ・・・写真くらいいいじゃん。」 「え?」 美樹の、これまた意外な発言に、牛乳をストローで飲んでいたのを止めた。 「その写真館さ、田口君も連れて行けば?」 「えっ――//」 美樹の提案に、いつものように赤くなるきょんちゃん。 「だって、あたしらも一緒に来ていいよって言ってくれてたでしょ?だったら田口君ならなおさら大丈夫じゃん。同じサッカー部の後輩だったんだし。ねっ?そこで二人の初のツーショット写真撮れば?」 「え〜っ!!・・・でも・・・」 「恥ずかしいから嫌だ、なんて理由はなしだよ!」 きょんちゃんの言いたい事をお見通しのようだ。 クスクス・・・ん?・・・待てよ・・・ 「・・・ねぇ・・・田口君が一緒にってことは・・・あたしが先輩と写真撮るのバレるじゃん。」 美樹の提案に賛成しそうになったが、それって、やばくない? 「何言ってんの!その写真、教室に飾るんでしょ?じゃあ誰だって見るんじゃない?田口君にバレたくらいどうってことないじゃん。」 ・・・・・・確かに・・・ん? そうだよ!・・・飾るんだ・・・やっぱり、断った方が―― 「さっ、そうとなれば、行くよ!」 美樹は立ち上がって、給食を片付けだした。 「え・・ちょっと待ってよ・・・」 戸惑うあたしと、恥じらうきょんちゃんだったけど、美樹の行動力に押されてしまった。
そして早速、田口君のところへ行き、木村先輩とのことはとりあえず黙っといて、写真館へと誘う。 同じく照れた様子だったけど、当然それを隣で聞いていたケンちゃんが黙ってる訳がない。 「お〜っ!!いいなそれ。行こうぜ。ついでに俺らも写真撮ろうぜ!」 「あ〜、いいね〜。そうしよ〜。」 ノリノリの美樹とケンちゃん。 この二人って、こういうことに関して気が合うよな・・・
あたし達はそろって教室から出た。 そして、1組の教室の前を通り過ぎようとした時だ。
「・・・あ、そうだ。リョーマ君も誘おっか。」 美樹が、1組の教室をのぞきこんだ。 ・・・――ちょっ、待ってよ!――・・・ そう思った時はすでに遅し―― 「・・・おいっ、リョーマ!」 ケンちゃんが代りに大声で松井君を呼んだ。 あたしはとっさに隠れるかのように、教室から見えないよう先へ進んだ。 「まだ食ってんのか〜?」 「・・・なんだよ。」 ・・・・・・久しぶりに、声聞いたかも・・・ ・・・・・・ちょっとドキドキしてしまう・・・ 「食べ終わったら、3年のところ来いよ。えっと〜、何組だっけ?」 隣にいた美樹に聞いた。 「2組だよ。」 「・・・なんで?」 「写真館やってるんだけど、一緒に撮ろうよ。この二人がメインなんだけどね・・・」 美樹はニヤけながら、うしろのカップルを見る。 「〜〜っ、美樹ってば〜・・・」 きょんちゃんが美樹の腕を引っ張る。 「・・・・・・俺まだ食ってるからいいや・・・」 ・・・・・・予想通り断りの返事・・・ 「だからっ、食い終わったらって言ったろ?来いよっ!絶対な!!」 ケンちゃんはいつもよりも強引な感じだ・・・いや、いつもと一緒か・・・ 結局そのまま5人で3年2組の教室へと向かった。 内心ホッとしつつも、何かを期待していた自分がいた。 ・・・・・・調子良すぎか・・・。
元々、あたしら6人がよく一緒にいるようになったのも、きょんちゃんと田口君をくっつけるために、ケンちゃんがやたらと召集掛けていたものだ。 今こうして二人が結ばれたことで、みんなで集まる必要はなくなっていた。 でも、なにかある度に、自然と6人で集まろうとなってしまうのか、ケンちゃんと美樹はさっきのように、クラスの違う松井君にも声をかけることがあった。 でも、最近の松井君は、断ってばかり。 「付き合いの悪さが前よりさらに増した。」なんて、ケンちゃんはボヤいているけど・・・そうさせたのは、あたしなんだ。 だからという訳じゃないけど、あたしも松井君がいる時には、行かないようにしてた。 サッカーの試合だって、ベスト4かけた試合はほぼ全校生徒だったから行ったけど、その前までの試合の応援も美樹やきょんちゃんは行っていた。 あたしも誘われたけど、何かと理由をつけて断っていた。 そういうことが、何回か続いたからか、きょんちゃんは初めて聞いてきたんだ。 松井君と何かあったのか?と・・・ その時はあまり突っ込んでこなかったけど・・・田口君まで、何かを感じてんだな・・・
このままずっと・・・と思うと、もどかしい自分がいる。 でも・・・もう、前みたいには戻れるわけがない。 自分から遠ざけといて、なんて未練がましいんだろう・・・
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