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作品名:あの頃へ 作者:こまち

第58回   58
何か用事がある時に校舎裏ってのは・・・定番なんだろうか。
ここに来てる頻度、以前より多い気が・・・。


人気がいないのは当然で、木村先輩は立ち止まって話を始めた。
「ごめんね、部活前に・・・」
「・・・いえ・・・」
なんとなく顔を見ることができず、俯いてしまう。

「・・・あのさ・・・頼みがあって・・・」
・・・頼み?
その言葉に顔を上げた。
「・・・文化祭で、俺らのクラス写真館をするんだけど・・・」
相変わらず、さわやかな笑顔だ。
「・・・貸衣装とかもして、いろんな恰好で好きなように写真撮りますっ、て感じでさ。あっ、もし良かったら、友達誘って来てよ。ポラロイドだから、すぐに渡せるし・・・」
・・・・・・頼みって・・・それ?
「・・・あ・・はい・・・」
「・・・でさ、その見本というか、モデルというか、俺らクラスのやつら、自分の写真撮るんだ。こういう恰好でどう?とか、普通に思い出の一枚、みたいな感覚でさ。それを教室の壁に貼って、来客が参考に見るって感じ・・・」
・・・なんで・・・催し物の説明を・・・?
疑問に思いながらも話を聞いていた。
「・・・・・・頼みってのは、それなんだけど・・・」
・・・へっ?・・・今から言うこと?
「・・・その俺の撮る写真、一緒に写って欲しんだ。」
「え・・・・・・えっ!?」
・・・写真!?
一緒にって・・・・・・えっ!?
「・・・まぁ・・・俺の思い出作りとして・・・協力してほしんだ。」
「・・・あ・・・あのっ――」
「お願いっ!」
あたしが断ろうとする前に、手を合わせてきた。
・・・うぅっ・・・断りずらい・・・でも・・・
「・・・一緒に写ったからって、それで期待はしないから。」
「――っ・・・」
「・・・友達と写るくらいに考えてもらって。」
「・・・・・・」
それでも、うん、とは言えず・・・
「・・・文化祭当日、呼びに行くから。もちろん制服のまんまでいいよ。」
「えっ・・・いや、あのっ――」
「じゃあ、よろしく。」
先輩は満面の笑みを見せたかと思うと、さっさと校舎へと戻って行った。

・・・え・・・え〜・・・どうしよ・・・
・・・っていうか、なんではっきり断れないの?
最近のあたし・・・なんかはっきりしなくなってない?
肝心なところで、何も言えないなんて・・・。


その場にいつまでもいるわけには行かず、部室へと向かった。
そこでは、待ってましたと言わんばかりに、まどかの攻撃が始まった。

「なに?なに!?なんだって!?」
「え・・いや・・・」
「木村先輩でしょ?さっきの人。知り合いだったの?」
「・・・知り合いというか・・・まぁ知ってはいたけど・・・」
「・・・もしかして・・・告白されたとか!?」
「――っ・・・ちがっ・・うよ・・・」
「いやいや・・・なんかそういう雰囲気っぽかったよ〜、ねぇ!きょんちゃん。」
隣で黙って見守っていたきょんちゃんに話を振った。
「えっ・・・よく・・わかんないってば・・・まどか、ずっとそう言ってるけど・・・」
そう言いながら、きょんちゃんはチラッとあたしを見た。
その視線で、わかった。
以前、木村先輩に告白されたことは黙っててくれたみたいだ。
「・・・とにかくっ・・・そんなんじゃないから。」
あたしはまどかから離れ、着替え始めた。
「じゃあなんなの?なんの呼び出しだったの?」
「なにって・・・その・・・」
「・・・なに?」
・・・これじゃ、きりがないな・・・
・・・ふぅ〜・・・
一息ついて、さっきのことを素直に話した。

「誰にも言わないでよ?・・・たいした事でもないんだし・・・」
念を押し、頼みごとの内容を説明した。

「・・・・・・ってことは・・・やっぱり、告白のようなもんじゃん!」
まどかは手をポンっと叩いた。
「だから・・・そうじゃなくて・・・」
「いいからいいから。で?OKしたんでしょ?」
「・・・引き受けたつもりはなかったけど・・・向こうはそう思ってるみたい。」
「いいじゃんっ!!写るべきだよ!だって、あの木村先輩でしょ!?すごいじゃん、智子っ!」
まどかは自分のことのように喜んでいる。
「そっかそっか〜、きょんちゃんもつきあいだして、智子もだったら、み〜んな幸せ者ばっかだね〜!」
「ちょっと、まどかっ!あたしのは違うってば!」
「まぁまぁ。今はなんとも思ってなくても、これからそういう風に考えればいいんだよ・・・あ・・でも、もうすぐ受験生か・・・まぁ、それもありだね。障害がある方が燃えるっていうし・・・」
「・・・何勝手に話を進めてんの?んもうっ、先行くよっ!」
遅く来たあたしより、準備が終わってないまどかを置いて行った。
「あ・・・あたしもっ。」
きょんちゃんはすでに着替え終えていたので、あたしを追いかけてきた。

「・・・智子・・・」
「ん?なに?」
「・・・写真・・・撮るの?」
「・・・・・・わかんない。」
「・・・そっか・・・・・・話変わるんだけどさ・・・前も、聞いたんだけど・・・」
きょんちゃんの言いたいことが、なんとなく雰囲気でわかった。
「・・・・・・ほんとに、松井君となんでもないの?」
・・・・・・やっぱり・・・思った通りだ・・・
でもあえて、しらばっくれた。
「・・・なに、急に?・・・なんでそんな話になるの?」
少し半笑いで返す。
「・・・だって・・・全然松井君と話してないじゃん・・・」
「・・・だからっ、前も言ったけど、元々そんな会話という会話してないし・・・用もないのに無理に話す必要ないじゃん。」
「・・・そうかな?」
「え?」
「・・・・・・美樹と松井君は、幼馴染ってのがあるからわかるんだけど・・・智子とは・・・よく話してたと思う・・・廊下とかでも、二人が話してるの何回か見たことあるし・・・かと言って、松井君が他の女の子と話してんのは、あたしが知ってる限りは、見たことないし・・・」
・・・――っ。
きょんちゃんの言うことに少しうれしく思ってしまう自分がいる。
そんなこと口が裂けても言えないけど・・・
「・・・きょんちゃんの知ってる限りでしょ?見てないところではわかんないじゃん。っていうか、ほんとなんでもないんだし、変に気にかけないでよ。」
「・・・・・・田口君だってっ・・・心配してたもん・・・」
きょんちゃんの口から田口君の名前が出るのは珍しいことだ。
いつもは恥ずかしがって、のろけ話すらしないのに。
「・・・松井君に聞いても何にも言ってくれないって・・・でも、何にも言わないことが、なんかあったんじゃないかって・・・・・・夏休みの部活の時からだって・・・」
―――っっ!!
「・・・ねぇ、智子。ほんとにっ――」
「――ないよ・・・なんにも、ないから。」
きょんちゃんが言いかけていたけど、それを遮った。
「・・・・・・」
そこまで言われたら、きょんちゃんは何も言えなくなってしまった。


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