何か用事がある時に校舎裏ってのは・・・定番なんだろうか。 ここに来てる頻度、以前より多い気が・・・。
人気がいないのは当然で、木村先輩は立ち止まって話を始めた。 「ごめんね、部活前に・・・」 「・・・いえ・・・」 なんとなく顔を見ることができず、俯いてしまう。
「・・・あのさ・・・頼みがあって・・・」 ・・・頼み? その言葉に顔を上げた。 「・・・文化祭で、俺らのクラス写真館をするんだけど・・・」 相変わらず、さわやかな笑顔だ。 「・・・貸衣装とかもして、いろんな恰好で好きなように写真撮りますっ、て感じでさ。あっ、もし良かったら、友達誘って来てよ。ポラロイドだから、すぐに渡せるし・・・」 ・・・・・・頼みって・・・それ? 「・・・あ・・はい・・・」 「・・・でさ、その見本というか、モデルというか、俺らクラスのやつら、自分の写真撮るんだ。こういう恰好でどう?とか、普通に思い出の一枚、みたいな感覚でさ。それを教室の壁に貼って、来客が参考に見るって感じ・・・」 ・・・なんで・・・催し物の説明を・・・? 疑問に思いながらも話を聞いていた。 「・・・・・・頼みってのは、それなんだけど・・・」 ・・・へっ?・・・今から言うこと? 「・・・その俺の撮る写真、一緒に写って欲しんだ。」 「え・・・・・・えっ!?」 ・・・写真!? 一緒にって・・・・・・えっ!? 「・・・まぁ・・・俺の思い出作りとして・・・協力してほしんだ。」 「・・・あ・・・あのっ――」 「お願いっ!」 あたしが断ろうとする前に、手を合わせてきた。 ・・・うぅっ・・・断りずらい・・・でも・・・ 「・・・一緒に写ったからって、それで期待はしないから。」 「――っ・・・」 「・・・友達と写るくらいに考えてもらって。」 「・・・・・・」 それでも、うん、とは言えず・・・ 「・・・文化祭当日、呼びに行くから。もちろん制服のまんまでいいよ。」 「えっ・・・いや、あのっ――」 「じゃあ、よろしく。」 先輩は満面の笑みを見せたかと思うと、さっさと校舎へと戻って行った。
・・・え・・・え〜・・・どうしよ・・・ ・・・っていうか、なんではっきり断れないの? 最近のあたし・・・なんかはっきりしなくなってない? 肝心なところで、何も言えないなんて・・・。
その場にいつまでもいるわけには行かず、部室へと向かった。 そこでは、待ってましたと言わんばかりに、まどかの攻撃が始まった。
「なに?なに!?なんだって!?」 「え・・いや・・・」 「木村先輩でしょ?さっきの人。知り合いだったの?」 「・・・知り合いというか・・・まぁ知ってはいたけど・・・」 「・・・もしかして・・・告白されたとか!?」 「――っ・・・ちがっ・・うよ・・・」 「いやいや・・・なんかそういう雰囲気っぽかったよ〜、ねぇ!きょんちゃん。」 隣で黙って見守っていたきょんちゃんに話を振った。 「えっ・・・よく・・わかんないってば・・・まどか、ずっとそう言ってるけど・・・」 そう言いながら、きょんちゃんはチラッとあたしを見た。 その視線で、わかった。 以前、木村先輩に告白されたことは黙っててくれたみたいだ。 「・・・とにかくっ・・・そんなんじゃないから。」 あたしはまどかから離れ、着替え始めた。 「じゃあなんなの?なんの呼び出しだったの?」 「なにって・・・その・・・」 「・・・なに?」 ・・・これじゃ、きりがないな・・・ ・・・ふぅ〜・・・ 一息ついて、さっきのことを素直に話した。
「誰にも言わないでよ?・・・たいした事でもないんだし・・・」 念を押し、頼みごとの内容を説明した。
「・・・・・・ってことは・・・やっぱり、告白のようなもんじゃん!」 まどかは手をポンっと叩いた。 「だから・・・そうじゃなくて・・・」 「いいからいいから。で?OKしたんでしょ?」 「・・・引き受けたつもりはなかったけど・・・向こうはそう思ってるみたい。」 「いいじゃんっ!!写るべきだよ!だって、あの木村先輩でしょ!?すごいじゃん、智子っ!」 まどかは自分のことのように喜んでいる。 「そっかそっか〜、きょんちゃんもつきあいだして、智子もだったら、み〜んな幸せ者ばっかだね〜!」 「ちょっと、まどかっ!あたしのは違うってば!」 「まぁまぁ。今はなんとも思ってなくても、これからそういう風に考えればいいんだよ・・・あ・・でも、もうすぐ受験生か・・・まぁ、それもありだね。障害がある方が燃えるっていうし・・・」 「・・・何勝手に話を進めてんの?んもうっ、先行くよっ!」 遅く来たあたしより、準備が終わってないまどかを置いて行った。 「あ・・・あたしもっ。」 きょんちゃんはすでに着替え終えていたので、あたしを追いかけてきた。
「・・・智子・・・」 「ん?なに?」 「・・・写真・・・撮るの?」 「・・・・・・わかんない。」 「・・・そっか・・・・・・話変わるんだけどさ・・・前も、聞いたんだけど・・・」 きょんちゃんの言いたいことが、なんとなく雰囲気でわかった。 「・・・・・・ほんとに、松井君となんでもないの?」 ・・・・・・やっぱり・・・思った通りだ・・・ でもあえて、しらばっくれた。 「・・・なに、急に?・・・なんでそんな話になるの?」 少し半笑いで返す。 「・・・だって・・・全然松井君と話してないじゃん・・・」 「・・・だからっ、前も言ったけど、元々そんな会話という会話してないし・・・用もないのに無理に話す必要ないじゃん。」 「・・・そうかな?」 「え?」 「・・・・・・美樹と松井君は、幼馴染ってのがあるからわかるんだけど・・・智子とは・・・よく話してたと思う・・・廊下とかでも、二人が話してるの何回か見たことあるし・・・かと言って、松井君が他の女の子と話してんのは、あたしが知ってる限りは、見たことないし・・・」 ・・・――っ。 きょんちゃんの言うことに少しうれしく思ってしまう自分がいる。 そんなこと口が裂けても言えないけど・・・ 「・・・きょんちゃんの知ってる限りでしょ?見てないところではわかんないじゃん。っていうか、ほんとなんでもないんだし、変に気にかけないでよ。」 「・・・・・・田口君だってっ・・・心配してたもん・・・」 きょんちゃんの口から田口君の名前が出るのは珍しいことだ。 いつもは恥ずかしがって、のろけ話すらしないのに。 「・・・松井君に聞いても何にも言ってくれないって・・・でも、何にも言わないことが、なんかあったんじゃないかって・・・・・・夏休みの部活の時からだって・・・」 ―――っっ!! 「・・・ねぇ、智子。ほんとにっ――」 「――ないよ・・・なんにも、ないから。」 きょんちゃんが言いかけていたけど、それを遮った。 「・・・・・・」 そこまで言われたら、きょんちゃんは何も言えなくなってしまった。
|
|